記事の要点
・国際電気標準会議(IEC)において、日本から提案した「災害時の都市サービスの継続性に資する電気継続の仕組み」に関する国際規格が承認、発行された。
・今回発行された国際規格では、災害時に、医療機関などの重要性の高い都市サービス提供事業者が必要最低限の電気を確保できるよう、都市サービス運用者に対し、BCPに基づいて通常時・災害時、それぞれの電気継続計画(ECP)を定めること、及び、ECPを実行するための電気継続システム(ECS)の機器要求仕様を定めることを求めている。
・日本の設備・システム仕様に親和性の高い規格となっていることから、世界各地での都市開発でガイドラインに同規格の採用・引用が進むことで、防災産業が有力な輸出産業にもなることが期待される。
LoveTechポイント
大規模な災害時等に電力供給が停止する非常事態に陥った場合でも、その影響を最小限に抑え、重要性の高い都市サービスを継続する仕組みを構築することは、災害復旧活動を迅速かつ円滑に進めるためにも不可欠です。
東日本大震災など未曾有の災害を経験したからこその復旧・復興のノウハウを活かし、国内外の安心な都市づくりに寄与することはLoveTechであり、日本の設備・システム仕様に親和性の高い規格が世界に広まることで産業面での成長も期待されます。
編集部コメント
国際電気標準会議(IEC)において、日本から提案した「災害時の都市サービスの継続性に資する電気継続の仕組み」に関する国際規格が承認、発行されたことが、9月23日に経済産業省より発表された。
今回発行された国際規格は「IEC 63152:2020」。
災害時の電力供給停止がもたらす影響を最小限にするべく、地震・洪水・サイバーテロ等が発生した際に、事業継続計画(BCP)の観点から、医療機関や公共交通機関、物流事業者といった重要性の高い都市サービス提供事業者が必要最低限の電気を確保できることを目指したものだ。
具体的には、企業の施設管理部門や商業施設等の管理会社、自治体の公共施設管理部門などの都市サービス運用者に対して、BCPに基づいて通常時・災害時、それぞれの「電気継続計画(ECP) 」を定めること、及び、ECPを実行するための「電気継続システム(ECS)」の機器要求仕様を定めることを求めている。
また、災害フェーズ毎にECSのマネジメントや各エリアで交換すべき情報の種類(例:電力系統との接続情報、停電時間、予備電源の動作・残存状況)などの基本事項を、ガイドラインとして提示している。
例えばこちらは、複数の電気継続システム(ECS)を連携させることにより、広域でのBCP達成を目指すモデルだ。様々な都市の各種脅威に汎用的に活用出来るよう、以下3タイプのECS連携を規定している。
- タイプ1:災害情報をトリガーとして、1つのECSが独立に対応
- タイプ2:各ECS間で電源使用状況を共有し、必要に応じて、自家発電の燃料の融通等を実施
- タイプ3:自家発電の使用状況を基にして各ECSを通じて、各都市サービス分野間で電力融通を実施
本国際規格が、例えば国内外のBCPガイドラインに引用されたり、リスクファイナンスを背景とした金融機関による融資条件に採用されたりすること等により、自治体または企業に対して、BCPに従ったインフラ設備やシステムへの投資を促し、今後各地で開発される都市・まちの防災力が強化されることが期待されている。
また本規格は、2016年に日本が主導して設立したIECスマートシティシステム委員会(IEC SyC Smart Cities)が制定した初の国際規格であり、2017年9月以降、IECにおいて関係国と審議を重ねていった結果、今年7月に正式に国際規格として承認・発行された流れとなる。
ゆえに、日本の設備・システム仕様に親和性の高い規格となっていることから、世界各地での都市開発等で同規格の採用・引用が進むことで、防災産業が有力な輸出産業にもなることも期待されるわけだ。
2011年に東日本大震災を経験した国として、日本はこれまで、2015年国連採択の「仙台防災枠組み」を提唱するなど、様々な場面で防災の重要性の啓発を進めてきた。今回は標準化分野においても、過去の教訓を活かした形となる。
昨今のコロナ禍をはじめ、様々な想定外のリスクが発生しうるVUCA時代だからこそ、災害が人々の生活に与える影響を最小限に抑える仕組みの国際規格化は、より一層重要な位置付けとなっていくだろう。
以下、リリース内容となります。