育児家庭に優しい子育Techなスタートアップ5社が大集合!子育Tech Meetup《後編》

インタビュー

 「子育て×テクノロジー」で育児パパママの負担を大きく減らすことが期待される子育Tech産業。12月11日夜、この子育Techプレイヤー企業や専門家が一堂に会するイベントが、子育Tech委員会とCreww株式会社共催のもと、同社が運営するコワーキングスペース「dock-Toranomon」にて開催された。当日会場には、育児業界関係者やテクノロジー関係企業の他に、お子様連れのママさんなど、子育て当事者も何組も来場された。

 前編ではまず、子育Techを取り巻く背景として、ワーク・ライフバランスコンサルタントの大西友美子(おおにしゆみこ)氏に社会的・企業的な背景を、株式会社カラダノートの彦坂真依子(ひこさかまいこ)氏に子育Tech委員会発足の背景について解説いただいた。

 後編ではいよいよ、実際に子育Techなサービスを展開する企業5社によるプレゼン発表と、全登壇者による子育Tech意見交換会についてお伝えする。非常にLove Techな時間となった。

》前編記事はこちら

株式会社シェアダイン(サービス名:シェアダイン)

 1社目は株式会社シェアダイン。同社のサービスを一言でお伝えすると、栄養士や調理師など食の専門家による出張料理サービスである。

 近年増加する共働きという生活スタイルで、最も犠牲になっているのは「食卓」だという。確かに、スーパーに売っているようなレトルト食材を出している子育て家庭は多いことだろう。

 これまでは家庭において「お母さん」が食卓を守ってきたが、これからの時代に即して食提供の役割をコミュニティに移管することが、同社のアプローチであり役割となる。

 出張料理サービスの中でも、同社最大の特徴の一つが、「食に関連する有資格者の方々が登録している」という点だ。管理栄養士・栄養士・調理師・食育インストラクター・食生活アドバイザーなどの資格を有する、多様なバックグラウンドや経験を持つ食のプロ達が活躍している。特に、管理栄養士・栄養士・調理士免許を持つ方々は毎年6万人のペースで増加しており、供給サイドには困らない想定だ。ちなみに2018年11月時点で、登録シェフ数は180名を突破している。

 そんな専門家たちを、ユーザーは利用日・地域だけでなく、離乳食・食育・ダイエット・時短レシピなど様々なカテゴリー軸で検索することができるので、家族のフェーズに即した依頼をすることができる。

 プレゼンターは同社取締役で共同創業者である井出有希(いでゆき)氏。「掛かりつけ医」ならぬ「掛かりつけシェフ」のプラットフォームとして、2019年も様々な取り組みを仕掛けられていくという。楽しみだ。

株式会社Hacksii(サービス名:ハクシノレシピ)

 2社目はハクシノレシピを提供する株式会社Hacksii(ハクシー)。アクティブ・ラーニング(※)版食事づくりの出張レッスンを提供しているという。一体どうことだろうか。

※アクティブ・ラーニング:能動的学修とも言われ、児童や生徒などの学修者が、受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうように設計された教授・学習法のことを示す。

 昨今、新聞や雑誌・WEBなどで見ないことはないAIという単語。そう、これからは機械が様々な場面で人間を凌駕していく。例えば仕事について考えると、約50%の職業は機械に代替される可能性があると囁かれている。

 そんな時代においてハクシノレシピは、「自分で考えて主体的に行動できる子を育てる」というミッションを掲げ、同社オリジナルの「キッチン学」のプロであるエプロン先生が自宅に訪問し、食事づくりのマンツーマンレッスンを行うサービスだ。

 正解のない、新しい教育概念を提供することで、AIやロボットが当たり前となる社会を生きていく上で大切な「自ら考える力」「行動する力」、さらには「相手を思いやる心」など、人として大切な能力を育んでいくという。

 ハクシノレシピのハクシとは「白紙」であり「博士」でもあるという。白紙のキャンバスに唯一無二の博士である子ども達が、自由に料理をデザインしていく、という思いを込めたサービス名とのことだ。

 プレゼンターは同社代表取締役CEOの髙橋未来(たかはしみく)氏。現在は東京・神奈川・埼玉・千葉のみの提供だが、自由な発想を尊重する体験型の習い事という独自のポジショニングを通じて、順次対応エリアを拡大していくという。2020年教育改革目前だからこそ、教育改革に適したメソッドで提供できるサービスとして、大きな前進のチャンスと捉えている。

株式会社ネクストビート(サービス名:KIDSNA キズナシッター)

 3社目は株式会社ネクスビートが提供するKIDSNA キズナシッター(以下、キズナシッター)だ。ベビーシッターサービスなのだが、最大の特徴はシッターが全員100%、保育士・幼稚園教諭・看護師などの有資格専門職の方だということだ。かなり画期的である。

 保育士は足りなくて困ってるくらいで、ベビーシッターをやってる場合ではないのでは、と感じた方もいるだろう。実は保育施設に勤務していないが、保育士資格を持っている潜在的保育士がかなりの数いらっしゃるのだ。数にして約76万人、全保育士資格者の実に64%にものぼる。

 一方、家庭の方に目を向けると、ベビーシッターはまだまだ普及しているとはいえない状況だ。最大の要因は、安全面と考えられている。マッチング型シッター派遣の場合、見ず知らずの人間を我が家に入れることへの抵抗が大きい家庭が多いのだ。

 そのような悩みを、キズナシッターは解決してくれる。育児のプロに任せることができるので安心、という声がたくさん届いているという。またシッターとしても、各家庭の期待に応えるやりがいを感じているという。

 プレゼンターは同社キズナシッター事業責任者である中村暁志(なかむらさとし)氏。2018年1月にスタートした同事業であるが、すでに全国24都道府県で展開しており、登録シッター数も300名を超えている。急成長中につき社員を絶賛採用中で、興味のある方は隔週木曜夜に本社オフィスで開催されている社員交流パーティーに顔を出してください、という言葉で締めくくられた。

株式会社レイブリー(サービス名:ikuzeee)

 4社目は株式会社レイブリーが提供するikuzeee(イクジー)サービスだ。ikuzeeeとは、小学生を対象に、学童・塾などからの送迎や、自宅・公共施設での見守りを依頼するプラットフォームである。

 小学生以上のお子様をお持ちの家庭であれば、「小1の壁」に悩まされたことがあるだろう。学校・学童・習い事などから一人で自宅に帰宅させる時、家を出る時間が子どもより早い時の子供の対応、夏休みなどの長期休暇の対応などといった精神的な壁である。

 ikuzeeeでは、保育関連の専攻をしている学生や企業のシニアOB・OGなど、身分・素性がはっきりして第三者機関からお墨付きを得ている方のみ、送迎や見守りマッチング要員として登録するようにしているので、フロント部分で精神的な抵抗を最小限にする企業努力をしている。

 また、Facebookフレンドのシッター利用歴やコメント・レビューを通じた評価制度も整備しているという。今後はブロックチェーンを活用した身元管理や、評価に基づいたAIによるレコメンドなども実装する予定とのこと。

 プレゼンターは同社代表取締役CEOの作前雄也(さくまえゆうや)氏。まだサービスはリリースしたばかりであり、2019年5月までを検証機関と定め、Ver1.0のリリースを2019年6月に予定しているという。現在サービス検証の機会を広く募集しており、本事業に興味のある方は絶賛ご連絡をお待ちしております!とのPRが最後に添えられた。

株式会社Bonyu.lab(サービス名:母乳チェック)

 最後5社目は、母乳の分析検査ができるサービス​「母乳チェック」を提供する株式会社Bonyu.labだ。

 育児中の母親の悩みは尽きない。赤ちゃんの成長遅れ、産後うつ、体重増加、子どものアレルギーなど、気の休まる暇がない。特に自分が食べているものが母乳の質に直結していることから、母乳育児をしている母親の76%は「自身の母乳の栄養状態について知りたい」と答えている状況だ。

 それにも関わらず、母乳の状況をしっかりと手軽に把握できるサービスがなかったことから、「母乳チェック」サービスの開発に至ったという。

 母乳チェック利用の流れは簡単だ。はじめに検査サービスを申し込むと、検査キットと返信用封筒が到着する。説明書の指示に従い母乳を絞り、冷蔵庫へ保管したのちに、宅配業者を通じて冷凍送付する。送付完了したらオンライン問診を登録し、検査結果がメールで届くのを待つだけ。

 もちろん結果を知るだけではなく、改善のための食事アドバイスやサプリメントなどが提供されるという。

 本サービスを発案したのが今年3月であるにもかかわらず、同年11月に開始した初回販売分は200名分が完売した。広告は一切打っていないにもかかわらずである。それだけ世の中のお母さんは、母乳で困っているということの表れだろう。

 プレゼンターは同社代表取締役Co-CEOの荻野みどり(おぎのみどり)氏。「本サービスは母乳絶対主義という立場ではない」と強く主張されており、母乳が良くて粉ミルクが悪い、などといった二項対立の議論をするつもりは一切無いという。あくまで母乳という手段を選んだのだとしたら、母乳についての知識を深めてもらい、同社としてはそれに対して自信を持ったクオリティで与えたい、という考えとのこと。

子育Techな意見交換会

 イベントの最後は、登壇者全員による意見交換会となった。人数が多く、意見の総数も多いことから、それぞれの登壇者のポイントをご紹介したいと思う。大きな議題としては、起業のきっかけと、事業を進めるにあたってのハードルや気づきの2点である。

ハクシノレシピ・高橋氏:

もともと一人暮らしを始めた時に料理の大切さを知りまして、フードコーディネーターなど料理関係の資格を取りました。でもこの時はまだ”食”と”教育”が結びついていませんでした。幼児教室で勤務するなかで、保護者の皆さまから食や教育に関するご質問をいただくことが多くて、この時初めて、食と教育って密接にリンクしている、と感じたんです。それから、いつかは食と教育で何かしたいと考えていたことから、起業につながりました。

難しいなと感じるのは、訪問型のサービスに対するハードルの高さです。特にキッチンは、お母様方にとって、他人になかなか見て欲しくない部分という意識が強いと感じます。

友達は「いいサービスだね」とは言ってくれるものの、やはりなかなか申し込んでくれない人が多いので、安心して使ってもらうまでの道のりが険しいと感じています。

ikuzeee・作前氏:

もともとインターネット畑出身なのですが、今年、保育園を経営している方と知り合ったのが大きかったです。保育業界って非常にアナログなんですよね。PC操作の環境もないところが多く、IT関係の仕事をしていた自分にとっては結構な衝撃でした。でもだからこそ、テクノロジーの入り込む余地を大きく感じまして、それが今の起業につながりました。

サービス自体、今週リリースしたばかりなので、今は検証していくフェーズです。検証のため多くの企業様にコラボしていただきたいのですが、検証とはいえ、実績のないサービスを導入していただくハードルが高いと感じています。

シェアダイン・井出氏:

私は出産からの原体験がきっかけですね。現在、5歳と2歳の子どもがいるのですが、上の子が偏食すごくて、このままだと食事のレパートリーが物凄く少なくなってしまう状況でした。食(しょく)って、その情景全体が家族の思い出になっていく中で、同じようなレパートリーの食事がこの子の食の記憶になってしまう、という危機感を感じました。世の中から家庭料理が少しずつなくなってしまう、という漠然とした思いがあって、起業につながりました。

高橋さんと同じく、キッチンに入れてもらうまでのハードルもありますし、消費者への認知が非常に難しい領域だなと感じています。

女性はよくわからないものは絶対に購入しないので、十分すぎる説明が必要だと痛感しています。一方パパユーザーさんも多く、男性の方が合理的な考えでサービスを利用してくれる印象が、現時点ではあります。

キズナシッター・中村氏:

私は企業での新規事業という立ち位置ですが、供給サイドの見方として、保育士の資格を持っている人がどんどん潜在化していき、給料もやすくなって行くという状況には、非常にもったいなさと危機感を感じていました。彼ら彼女らの働く機会を増やせないかと純粋に考えたのが、事業立ち上げのきっかけです。

ハードルについては皆様と同様、家に上げてもらうハードルは非常に高いと感じます。一方、超えていただいた方のリピート率は非常に高いのも事実です。ベビーシッター領域においては、実は「使ったことがないことによる食わず嫌い」的な側面も強いのかなと感じます。

もちろん、弊社サービスの育児のプロの皆様がしっかりと対応してくださることで、ユーザーが想定以上の便益を感じていただいている。これが一番の要因かと思います。

母乳チェック・荻野氏:

もともとはオーガニック食品を取り扱う会社もしているんですが、いろいろな食品の話が耳に入る中で、「アメリカで3Dプリンターでイチゴを作ろうとしている」といった、ぞわぞわしてくるような話も聞いてきました。科学が発達してそういう食品ができることもアリだとして、例えばお肉について、人工的に作られたお肉と牛から取れたお肉とでは、牛肉の方に有り難さを感じる子どもに育ってほしい、と感じました。その時に「母乳だ!」ってなって、しかも急がなきゃ!と感じたことが、起業のきっかけです。

母乳というキーワードは、月に約20万件検索されています。でも検索上位に掲載されるのは、完全母乳育児に移った体験記など、説得力に欠けるものばかり。これだとお母さんたちの悩みは全然解決されない、と感じました。

理想の母乳って、実はデータとして誰も持っていないことが判明したんですよ。一度、粉ミルクのクオリティってどうやってあげているかをリサーチに行ったのですが、結論としては平均値にあげている、という取り組み方でした。つまり、理想値ってものがないんです!だったら自分たちで理想値を追求しようと考えて取り組んでいます。

子育Tech委員会 & 株式会社カラダノート・彦坂氏:

私も企業の広報・PR担当という立場なので起業家ではないのですが、子育Tech委員会立ち上げについて。

私も現在年長の娘がいて、6年前に里帰り出産をしたのですが、出産後の育児でスマホで記録をとっていたんですね。すると、それを見ていた母が「ながら育児だ!」って、やめさせようとしてくるんです。「いやこれは違う」と言っても、コミュニケーションのすれ違いでなかなか納得してくれない。世の中には同じようなことを抱えて悩んでいるママさんがいっぱいいるんだろうな、という思いが、子育Tech委員会立ち上げの原動力になっています。

今年10月頭の発足以来、子育て×テクノロジーへの世間の注目が少しずつ集まってくる中で、大企業の新規事業担当者の方ともお話しする機会が増えました。とてもありがたいことなのですが、一点、「効率化だけ」の事業にならないことが大事だと改めて感じています。効率化は手法なのであって、その先に親子が豊かな時間を過ごせることが大前提です。でないと、それこそスマホ育児になってしまうと思っています。

ライフ・ワークバランスコンサルタント・大西氏:

今の仕事には大学時代の原体験が影響していますね。私は体育会の部活で学生トレーナーをしていたのですが、全体的に長時間の部活でした。長時間練習をすれば勝てる、という考えのもとで、深夜まで練習して夜中の2時に帰って、ヘトヘトのままなのに翌朝練習に出てくる。今思えばブラック(笑)とも言えますが、当時も本当にこれで良いのか?と思っていたことが、そのまま今の仕事につながっています。

今でもメディアがスポーツを取り上げるときに、積極的な休養よりも「一日〇時間練習」とか長時間やってることだけが美徳として取り上げられることに当時から課題感を感じていました。勝つために、単に時間をかけるのでなく、何に時間をかけるべきかを考える必要があります。

大企業の方が相談にいらっしゃる時、必ず「残業削減したい」と最初に言ってきます。でも、現場は残業を減らしたくないケースも多い。残業削減や効率化が目的になってはいけない。だからこそ、本当の企業のミッションを伺い、ミッションのために、何の時間を増やしたくて、何の時間を減らしたいのか、を細かくヒアリングしていきます。

子育ても、結局はこれと一緒なんだと思います。

 

編集後記

筆者も現在1歳5ヶ月の子どもを子育てしている身として、子育Techの便利さを実感しながらも、どこか、ITを使って楽をすることへの後ろめたさを感じることがあります。

 

同じく、ベビーシッターに預ける、という行為がどうしても不安に感じてしまいます。

 

これは長年の生活様式や文化が形成してきた深層意識だと感じており、これを崩すのはなかなか容易ではないと、自身のことながら感じます。

 

一方、変わることへの希望を見出している方が多いことも、イベントの盛況から感じ取れました。

 

これから子育Tech企業が果たす役割は、ますます重要になってくると感じます。

 

本記事が、どなたかの子育てにとっての風穴になってもらえればと思います。

 

 

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LoveTechMedia編集部

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