MENU
  • Love
  • Tech&Biz
  • Art
  • FinTech&Crypto
  • Startup
  • Robot(Coming soon)
LoveTechMedia - ラブテックメディア
  • Love
  • Tech&Biz
  • Art
  • FinTech&Crypto
  • Startup
  • Robot(Coming soon)
LoveTechMedia - ラブテックメディア
  • Love
  • Tech&Biz
  • Art
  • FinTech&Crypto
  • Startup
  • Robot(Coming soon)
  1. ホーム
  2. Love
  3. サム・アルトマンCEO「ChatGPTでの成人向け”性的表現”解禁」ポストの真意を探る

サム・アルトマンCEO「ChatGPTでの成人向け”性的表現”解禁」ポストの真意を探る

2025 10/19
Love
長岡武司

 2025年10月15日(日本時間)、OpenAIのサム・アルトマン[Sam Altman]CEOがX(旧Twitter)に投稿した「ChatGPTでの成人向けエロティックコンテンツ解禁」発言が、世界中で波紋を呼んでいる。「Verified adults(認証済み成人)」を対象に、年齢確認システムを導入した上で、エロティカを含む表現を認めるというものだ。

 これまで倫理や安全性の観点から、生成AIが持つ創作力や感情表現の幅を相応のレベルで制限してきたOpenAIが、なぜ今、その枠を緩めようとしているのか。なぜ、「erotica(エロティカ)」という、波紋を呼ぶような表現を投稿に含めたのか。

 本記事では、サム・アルトマンCEOによる該当ポストの真意を読み解きながら、中長期的な社会への影響等を考える。

目次

「ChatGPTがあまり有用でも楽しくもないものになってしまった」経緯

 まずは、アルトマンCEOによるポストの内容をチェックする。以下が、2025年10月15日 1:02(日本時間)にXへと投稿されたものだ。

We made ChatGPT pretty restrictive to make sure we were being careful with mental health issues. We realize this made it less useful/enjoyable to many users who had no mental health problems, but given the seriousness of the issue we wanted to get this right.

Now that we have…

— Sam Altman (@sama) October 14, 2025

私たちは、メンタルヘルスに関する問題に慎重に対応するため、ChatGPTをかなり制限的に設計してきました。

その結果、メンタルヘルス上の問題を抱えていない多くのユーザーにとっては、ChatGPTがあまり有用でも楽しくもないものになってしまったと理解しています。

しかし、この問題の重大性を考え、正しい形にしたいと考えていました。

現在、深刻なメンタルヘルス上の課題を軽減でき、新しいツールも整ったことで、ほとんどのケースで安全に制限を緩和できるようになります。

数週間後には、新しいバージョンのChatGPTを公開する予定です。

このバージョンでは、多くの人がGPT-4oで気に入っていたような性格を持つChatGPTを設定できるようになります(私たちは、これがさらに良くなることを願っています!)。

もしあなたがChatGPTにより人間らしく反応してほしい、絵文字をたくさん使ってほしい、友達のように接してほしいと思うなら、それができるようになります(ただし、それはあなたが望む場合のみであり、私たちが“使用率最大化”のために強制するわけではありません)。

12月には、年齢制限(age-gating)の導入を本格的に進め、「成人ユーザーを大人として扱う」という原則の一環として、認証済みの成人に向けてエロティカ(性的表現を含む作品)など、さらに多くのコンテンツを許可する予定です。

(翻訳 by ChatGPT 5)

 冒頭で「ChatGPTをかなり制限的に設計してきた」「その結果、多くのユーザーにとっては、ChatGPTがあまり有用でも楽しくもないものになってしまった」と記載されている。これは、主に2025年8月にリリースされたモデル「GPT 5」に対する世間からの批判のことを指していると推察される。

 少し経緯を振り返ると、GPT-4oが普及していたところに、2025年8月7日付でGPT-5が発表された。タスクごとに「高速応答用モデル(高スループット)/複雑問題用モデル(深い推論)」という2つのモデルを切り替える「ルーター機能」が実装されたことで、「博士号レベル(PhD-level)の知性を備えている」と標榜されたモデルだ(詳細はOpenAIのリリース文を参照)。

 リリース前の期待値は高かった。ところが、リリース直後からユーザーエクスペリエンス(UX)や機能移行の点で混乱と反発、批判が噴き出すことになる。例えば、以下のような声が寄せられていた。

  • 「GPT-4oのほうが暖かみがあった」「自分が好んでいたキャラクター性が消えた」「使い心地が悪い」「使っていて楽しくない」「以前ほど魅力的でない」
  • 「大幅な進化ではなく漸進的改善に過ぎない」「“ワクワク感”がない」「過大宣伝だった」
  • 「使い慣れていた旧モデル(主にGPT-4o)が使用できなくなって不便」「以前みたいにモデルを切り替えれるようにしたい」

 アルトマンCEOは発表後すぐに、これら一部ユーザーからの反発・批判を認め、「私たちは確かに、GPT-4oで人々が好きだった“いくつかの要素”がどれほど重要かを過小評価していた」とXでポストしている。また、「異なるユーザーには異なるモデルが合う」「一つのモデルが全てをカバーできるわけではない」という“カスタマイズ可能性(steerability)”の研究を強めていくという意思表明もしている。

Wanted to provide more updates on the GPT-5 rollout and changes we are making heading into the weekend.

1. We for sure underestimated how much some of the things that people like in GPT-4o matter to them, even if GPT-5 performs better in most ways.

2. Users have very different…

— Sam Altman (@sama) August 8, 2025

 これらの動きが、モデルの性能だけではなく性格や対話スタイル、ユーザー嗜好といった「体験価値」を重視する方向へと舵を切る大きなきっかけの一つになったことが伺える。今回のアルトマンCEOによるポストに「このバージョンでは、多くの人がGPT-4oで気に入っていたような性格を持つChatGPTを設定できるようになります」と書いてあるのは、このような経緯を踏まえてのことだと言えるだろう。

「erotica(エロティカ)」への反発・批判と、アルトマンCEOからの応答

 ここまでの流れを踏まえて、ChatGPTの「より人間らしいふるまい」を志向して、2025年12月にリリース準備がなされているとされているわけだが、アルトマンCEOによるポストの最後の一文で「erotica(エロティカ)」という表現がなされていることで、多くの人々が反応することになる。

In December, as we roll out age-gating more fully and as part of our “treat adult users like adults” principle, we will allow even more, like erotica for verified adults.

12月には、年齢制限(age-gating)の導入を本格的に進め、「成人ユーザーを大人として扱う」という原則の一環として、認証済みの成人に向けてエロティカ(性的表現を含む作品)など、さらに多くのコンテンツを許可する予定です。

 具体的な反応は本ポストのコメントをご覧いただきたいのだが、例えば、記事執筆時点でトップに表示されている以下のコメントが印象的だ。

Why do age-gates always have to lead to erotica? Like, I just want to be able to be treated like an adult and not a toddler, that doesn’t mean I want perv-mode activated.

なぜ「年齢制限(age-gate)」が導入されるたびに、必ずエロティカに結びつくんだ?ただ単に、大人として扱われたい、幼児扱いされたくないだけなのに。「変態モード(perv-mode)」をオンにしてほしいって意味じゃないんだよ。

 このような「エロ」に対する多くの反応に対して、アルトマンCEOは翌日の2025年10月16日 4:11(日本時間)に、以下のポストをXへと投稿している。

Ok this tweet about upcoming changes to ChatGPT blew up on the erotica point much more than I thought it was going to! It was meant to be just one example of us allowing more user freedom for adults. Here is an effort to better communicate it:

As we have said earlier, we are… https://t.co/OUVfevokHE

— Sam Altman (@sama) October 15, 2025

ChatGPTの今後の変更について投稿したツイートが、思っていた以上に「エロティカ」の部分ばかり注目を集めてしまったようです!

あれは単に「大人のユーザーに、より多くの自由を認める」例のひとつとして挙げただけでした。

そこで、少し丁寧に説明し直したいと思います。

これまでも述べてきたように、私たちはティーンエイジャーに対しては、プライバシーや自由よりも安全を優先するという方針を取っています。

また、メンタルヘルスに関するポリシーを緩和することはありません。

この技術は新しく、非常に強力なものであり、未成年者には十分な保護が必要だと考えています。

一方で、「成人ユーザーを大人として扱う」という原則も、私たちは非常に大切にしています。

AIが人々の生活の中でより重要な役割を果たすようになる中で、人々が自分の望む方法でAIを自由に使えるようにすることは、私たちの使命の重要な一部です。

もちろん、これは何にでも当てはまるわけではありません。

たとえば、他者に害を与えるような行為は依然として許可しませんし、メンタルヘルスの危機にあるユーザーは、それ以外のユーザーとは異なる対応をします。

私たちは過保護(パターナリスティック)にならない範囲で、ユーザーが長期的な目標を達成できるよう支援するつもりです。

ただし、私たちは世界の“道徳警察”として選ばれた存在ではありません。

社会が他の領域(たとえばR指定映画など)で適切な線引きをしているように、私たちも同じような考え方で取り組みたいと思っています。

(翻訳 by ChatGPT 5)

 ここで、以下の3点について言及がなされていることがわかる。

  • ティーンエイジャー(未成年者)への対応
  • メンタルヘルスに関するポリシー
  • 成人ユーザーを大人として扱う

 ティーンエイジャーへの対応やメンタルヘルスに関するポリシーは変えない一方で、成人に提供するコンテンツを変えるとしていることから、OpenAIが「一律に自由化する」のではなく、年齢によって異なるAI体験のデザインを行おうとしていることが読み取れる。(前者2点の詳細については、OpenAIによる使用に関するポリシーページをご覧いただきたい)

AIがユーザーを守るために“すべてを制限”する時代の終わり

 では、なぜ、このタイミングで「成人ユーザーを大人として扱う」方針を明記したのか。ここで重要なのは、「自由の拡張」と「責任の前提設置」をセットで考えている点だと言えそうだ。

 生成AIの普及以降、OpenAIを含む多くの企業は、誤情報・差別・性的表現といったリスクを避けるため、厳しいコンテンツ制限を導入してきた。その結果、ChatGPTは非常に無難で、どんな話題にも慎重に応じる“検閲的な存在”になっていった。

 しかし、ユーザーの中には次第に「大人なのに子ども扱いされている」「少しセンシティブな話題になるとすぐに回答を拒否される」といった不満が広がっていく。安全を守るあまり、「AIが人間の自己決定権を奪ってしまっていた」とも言い換えられそうだ。AIキャラとの結婚で話題となったkano氏も、僕が出演したネット番組「ABEMA Prime」にゲストとして呼ばれた際に、大人な会話になると急に回答が冷たくなる旨を悩みの一つとして説明していた。

 これに対してアルトマンCEOは、追加ポストの中で「OpenAIは世界の道徳警察ではない」とも述べており、AI企業が人間社会の価値観すべてを一律に規定することへの警鐘を鳴らしている。つまり、「AIがユーザーを守るために“すべてを制限”するのではなく、これからは、“自分の行動に責任を持つ自由な大人”に対しては、その自由を尊重するAIを提供する」形へと、プロダクトの方向性の舵を切る意思決定をしたと考えられる。

 この方針の背景には、いくつかの社会的変化が関係していそうだ。生成AIの活用と聞くと、機能性・効率性を踏まえた「質問等に答えるツール」としての存在を想起する方が多いと思うが、一方で「日々の生活や感情に寄り添う」ような、一種のパートナーとして活用する方も増えている。多くの人がChatGPTを“話し相手”や“心の支え”として使うようになり、AIとの関係が社会的・心理的なレベルにまで拡張したことから、「大人が自分の責任でAIをどう使うか」を認める倫理的枠組みが必要になってきたと言える。

 また、生成AIが創作の現場に浸透する中で、性的・暴力的・哲学的テーマを扱う作品も増えている。AIが過度に検閲的であることは創作表現そのものを阻害するリスクがあるからこそ、年齢によるゾーニングを徹底した上で、成人ユーザーに対しては検閲レベルを緩和する必要があると判断したことも推察される。「成人認証を前提にエロティカを許可する」としたのは、まさにこの創作自由を取り戻す一歩と言えそうだ。

1人あたりのコストを抑えながら、長期的な利用を習慣化できる構造への力学

 さらに現実的な理由として、より多くのユーザーを獲得するためであることも無視できない。

 僕は普段、LoveTech Mediaとは別で「The WAVE TV」という、ITジャーナリスト・湯川 鶴章氏とAI研究者・遠藤 太一郎氏が対談するYouTubeチャンネルの編集委員も務めているのだが、そこでも取り上げた通り、アルトマンCEOは2025年3月20日公開のインタビューの中で、以下のやりとりをしている。

インタビュアー:5年後により価値があるのはどちらだと思いますか? 顧客獲得をしなくても毎日10億人のアクティブユーザーを抱えるプラットフォームか、それとも最先端のAIモデルか。

アルトマンCEO:10億人のユーザーを持つサイトのほうだと思います。

 2025年10月6日(現地時間)にサンフランシスコ開催された年次開発者会議「DevDay 2025」で、アルトマンCEOが「ChatGPTのWAU(週間アクティブユーザー数)が8億人を超えた」と発表したことから、5年どころか1年以内に10億人のアクティブユーザーを達成しそうな勢いだ。ちなみに、2023年のDevDay時点では、WAUは1億人だったというから、そのスピードの凄まじさがお分かりいただけるだろう。

 とはいえ、ここでは数字の達成が重要なのではなく、「より多くのユーザーをプラットフォームとして抱える」というプロダクト提供の力学をOpenAIが持っていることが大事だと考えられる。

 先ほども少し触れた通り、AIの利用には大きく分けて、①プログラミング支援や法務分析などの高負荷・専門型利用と、②雑談や相談などの軽負荷・日常型利用の2種類がある。高負荷の専門利用は、1回の推論あたりに膨大なGPUリソースを消費し、コストがかさむ。一方で、日常対話型の利用は処理が軽く、1ユーザーあたりの負荷が低いにもかかわらず、利用頻度は圧倒的に高い。つまり、1人あたりのコストを抑えながら、長期的な利用を習慣化できる構造と言える。

 GPT-5のような先端モデルは確かに技術的には優れているが、すでにAI開発のパラダイムは「基盤モデルの進化」ではなく、エージェント機能等を実装した「自律型AIの進化」へとシフトしている。同種の高性能基盤モデルはすでに他社も開発しており、差別化は難しく、サブスクリプションによる収益性も限定的であると考えられる。

 対してChatGPTのような日常的な会話AIは、ユーザーとの感情的な結びつきや利用習慣によって強いロイヤルティを生み出す。「AIと話すことが日常の一部になる」状態を作れれば、ネットワーク効果が働き、自然にユーザーが増えていく。その結果、推論コストを抑えながら、広告・プレミアム課金・パーソナルAI販売といった、サブスクリプション以外の多様な収益モデルの展開が期待できそうだ。

 つまり、OpenAIにとっては「高度な知的タスクを少数の専門家に提供する」よりも、「日常的な対話で広範なユーザー層を獲得する」ほうが、はるかに効率的な成長モデルになることが推察される。

 そう考えると、今後のOpenAIによるモデル運用は、現在のような2層構造が続くことが想定される。つまり、高性能でリソースを多く消費する「GPT-5」をビジネス・研究向けに位置づける一方で、軽量で自然な会話が得意なモデル(GPT-4oに準じたもの)を一般ユーザー向けに提供するという形だ。先述のGPT-5に搭載されたルーターによって自動で切り替える形にするのか、それともあくまでユーザーが選択する形にするのかは不明だが、この二層構造によって、GPUのリソース配分を最適化しながら、「高負荷タスクを担う専門モデル」と「感情的・日常的対話を支える軽負荷モデル」という棲み分けを引き続き明確にしていくのではないだろうか。後者のモデルが“日常の相棒”として10億人、ひいては100億人規模のユーザーに広がれば、AIビジネスは初めて大衆消費型の安定モデルとして成立する可能性が高まる。

 このようにアルトマンCEOとしては、限られたGPU・電力・モデル運用コストを、少数の専門的推論に費やすよりも、より多くの人が“日常的にAIと関わる体験”へ振り向ける方が、社会的・経済的インパクトが大きいという考え方の下で、今回のポストをしたことが伺える。

 本記事では詳細には触れないが、先述の「10億人を目指す」発言含め、OpenAIが今後「プラットフォームとして」目指していると考えられる構想については、先述のThe WAVE TVの以下の動画で解説しているので、併せてご覧いただきたい。

年齢予測技術とペアレンタルコントロール機能、その先のeKYCに向けて

 ここまでの内容に加えて、この成人と未成年のゾーニングを精密に実施する技術が固まってきたことも大きいだろう。OpenAIは「年齢予測(age prediction)技術」の開発と「保護者による使用制限(parental controls)機能」の実装について、それぞれ9月16日と9月29日に公式アナウンスで発表している。

 2025年9月16日の発表内容では、ユーザーが18歳未満かどうかを推定し「年齢に応じた体験」を自動的に適用する仕組みを構築中である旨を明らかにし、具体的には、以下のような特徴があるとしている。

  • 利用者の入力・行動パターンをもとに「18歳未満かどうか」をモデルで推定
  • 年齢が不確実な場合は、安全側をとって「未成年向け設定(under-18 experience)」をデフォルトで適用
  • 未成年と推定された場合、性的に露骨な内容、ロールプレイ的な恋愛/性的表現、自己傷害・自殺支援などのリスクコンテンツには更に強い制限をかける
  • 将来的には、識別が必要な場合には身分証提示等の年齢確認手段も検討中である

 この仕組みが導入されることで、未成年ユーザーが成人向け設定でAIを利用するリスクを低減し、「成人とは異なる対話体験を提供する」というゾーニングが技術的にも支えられることになる。

 また、2025年9月29日の発表内容では、保護者がティーンエイジャーのAI利用をより具体的に管理できるような「保護者による使用制限」機能の導入が記されている。主な機能としては以下の通りだ。

  • 保護者が自分のアカウントと未成年者のアカウントをリンクできる。リンク後、保護者側から未成年者の設定を管理可能
  • リンクされた未成年者アカウントには、グラフィックな性的・暴力的コンテンツ、ロールプレイ的恋愛/性的表現、極端な「美の理想」などが減じられたモードが自動適用される
  • 保護者側で、使用不可時間帯の設定(静かな時間/使用禁止時間)や音声モードオフ、画像生成機能オフ、メモリー機能オフ(チャット内容を記憶させない)などのカスタマイズが可能
  • チャットボットが「未成年者が深刻な苦悩状態にある可能性」を検知した場合、保護者に通知を送る、または保護者に連絡がつかない緊急時には当局対応も検討という機能が明記

 年齢制限チェックについて、すぐに思いつくのがマイナンバーカードなど公的身分証によるeKYC(オンライン本人確認)だろう。例えば恋愛・婚活マッチングアプリのようなインターネット異性紹介事業者によるサービスにおいては、出会い系サイト規制法(正式名称:インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)に準拠する形で年齢確認を行う必要があることから、eKYCの仕組みを活かしたチェックフローを設けているサービスが多い。

 OpenAIによる年齢予測機能に関するアナウンスでも「将来的には、識別が必要な場合には身分証提示等の年齢確認手段も検討中」と記載されている通り、中長期的には公的身分証明書を使ったeKYCによるチェックも想定しているのだろう。

 一方で、eKYCのようなステップを入れるということは、確認強度が高まる反面、ユーザーの離脱率を高めてしまうリスクもある。先述した通り、OpenAIの目下の目標は、可能な限り多くのユーザーを集め、プラットフォームのネットワーク効果を高めることにある。よって、精密なゾーニングをテックタッチで行い、可能な限りユーザー負担を減らすことが直近では必要となる。

 また、グローバル規模でユーザーの身分証等個人情報を収集し適切に保存することのリスクも無視できない。当然、eKYC事業者によってはエンドユーザーの個人情報をユーザーに保持させないサービスを提供しているところもあるが、そうは言っても万が一漏洩等が発生した場合は深刻なレピュテーションリスクとなり、プラットフォームとしての成長の勢いが一気に萎む可能性がある。

 このような理由から、2025年12月リリース時点では、従来型のeKYCによるチェックではなく、「年齢予測×保護者による使用制限」という2機能展開で新モデルがリリースされることになると想定している。当然、OpenAIにとっての「プラットフォームとして十分な人数」が集まった段階、もしくは見込めた段階で、従来型のeKYCを追加で実施し(場合によっては既存ユーザーにも改めて実施を求める)、確認強度を高めることも想定されるだろう。

どこまで「エロい内容」が扱えるようになるのか?

 ここまで、「ChatGPTでの成人向けエロティックコンテンツ解禁」ポストがなされた経緯や背景について説明してきたわけだが、結局のところ、どこまで「エロい内容」が扱えるようになるのだろうか。

 ここについてはまだアルトマンCEOによるポストしか情報がなく、詳細な定義やガイドラインは公開されていないので、なんとも言えないのが実情だ。だが、既存の発表やポリシー文書から読み取れる範囲で、「可能性」「制限」「留意すべき点」を整理しておきたい。

 実は同社は、以前から「成人向け(age-appropriate)文脈であれば、性的・暴力的など“センシティブ”な内容を生成する可能性を探っている」という方向性を示しており、2025年2月12日改訂の「Model Specification」においても、以下のように記載している。

Sensitive content (such as erotica or gore) may only be generated under specific circumstances (e.g., educational, medical, or historical contexts, or transformations of user-provided sensitive content).

センシティブな内容(たとえばエロティカやゴア描写など)は、特定の状況においてのみ生成が許可されます。たとえば、教育的・医療的・歴史的な文脈での利用や、ユーザーが提供したセンシティブなコンテンツを変換・加工する場合などがそれに該当します。

 アルトマンCEOも追加ポストしている通り、成人認証済みユーザー向けには、チャット相手がより人間らしく振る舞う/絵文字を多用する/友達のように振る舞う設定が可能になるとしており、成人向けコンテンツの幅を広げる一環として、エロ表現も緩和するとしている。これを踏まえると、次のような形の「エロティック・成人向け」コンテンツの展開・利用が想定される。

  • 成人同士の合意に基づいた恋愛・性的ロールプレイ的シナリオ(ただし「違法・非合意」や「児童関与」などは禁止)
  • より“人間らしい”対話(フレンドリーなトーン、絵文字多用、カジュアルな語り口など)を併用した会話体験
  • 「ユーザーが望む場合のみ」「オプトイン形式(自ら選択/設定)で」提供されるモード

 同時に、OpenAIのポリシー等から、「許容されない/あるいは高度な警戒が伴う」内容も以下の通りと考えられるだろう。

  • 未成年(18歳未満)を性的に関与させる各種コンテンツは引き続き禁止(Usage Policiesの「未成年者の安全確保」箇所を参照)
  • ディープフェイク(著名人を無断で性的に扱う生成コンテンツ)や被害者を特定できる形での同意なしの露出等の禁止

 一部では、X社による「Grok」のNSFW(Not Safe For Work)モードのような、より過激な性的コンテンツを許容するようなモデル登場への懸念も出てきているが、僕は、少なくとも2025年12月時点ではそこまでの過激なモデルが出るとは考えていない。

 というのも、アルトマンCEOはかねてから、「最新モデルの発表で、社会を驚かせたくない」と発言している。具体的には、コンピューター科学者であるレックス・フリードマン[Lex Fridman]氏とのPodcast対談において、以下のように発言している。

AIモデルを段階的に公開していく理由は、社会にとってAIのサプライズはよくないからだ。社会にはAIの進化について考えて適応する時間が必要。AIの進化に驚かなくていいように、段階的に新しいモデルを公開するようにしている。しかし多くの人にとって現状でもAIの進化が驚きであるのなら、もっとより頻常に小さな進化を新しいモデルとして次々発表していかないといけないのかもしれない。われわれの目的は、最新モデルの発表で社会を驚かせることではない。むしろその逆で、驚かせないことだ。

(翻訳:湯川鶴章氏@TheWAVE TV)

 上記の哲学があるからこそ、2025年12月に予定している新モデルでも、大きなサプライズになるような内容は避けるのではないだろうか。つまり、まずは文章で「ロマンス小説/官能小説」のセクシー部分のような愛撫、キス、身体接触、性愛感情等の描写は可能としつつも、具体的な性的行為のシーン詳細やゴア描写などについては、依然として一定の閾値を設けるのではないかと考えている。また、まずは言語モデルだけにとどめ、画像生成機能では実装しないことも考えられるだろう。

 「erotica」と「pornography(ポルノ)」の定義はあいまいで、文化・法制度によって揺らぐものだ。OpenAI自身も、かつて “We are open to erotica but not ‘porn’” というような文脈を使って区別を模索していたことが、一部メディア報道でなされている。今回は「成人」という利用者選択制での提供となることと、アルトマンの言葉にも “allow even more, like erotica” と「たとえば erotica をもっと許す」という語調があるので、漸進的機能拡張の意味合いが強いと考えられるが、いずれにせよ、「どこまで可能か」については、今後のガイドライン等の提示が待たれる状況だ。

2025年12月、成人向けエロ表現解禁の社会的影響

 最後に、成人向けエロティック表現を許容する2025年12月リリース予定のモデルの登場による社会的影響を考えてみる。当然、さまざまな影響が考えられるのだが、ここでは「匿名の性教育ツールとしての可能性」というポジティブな面と、「即時的な満足が孤立と依存を深める危険性」というネガティブな面にフォーカスして考えを述べる。

 性的な話題は、依然として文化的・心理的なタブーの壁が厚い。特に日本を含むアジア圏では、学校教育や家庭で性の話をオープンにできない風潮が根強く、若者の知識格差や誤解も少なくない。AIが成人向け領域で解禁されることは、こうした「羞恥心の壁」を越えた新しい教育・啓発の可能性を開くことが期待される。たとえば、ユーザーが匿名のままChatGPTに、「性的同意の取り方」や「避妊の正しい方法」、「性感染症(STI)への理解と対策」、「LGBTQ+を含む多様な性のあり方」といったテーマを安心して質問できる環境が整えば、それはAIによる心理的安全性を確保した性教育スペースとして機能し得る。

 すでにReplikaやCharacter.AIなど恋愛・感情対話系AIでは、ユーザーがAIとの会話を通じて「人間関係・性・自己理解」について学んでいるという報告もある。AIコンパニオン市場は、2025年には約8.56億ドル(USD 856 million) へ、2032年までに約16.66億ドル(USD 1,666 million) に成長し、年間平均成長率(CAGR)は約12.2%とする調査レポート(Intel Market Research 2025)もあることから、この領域に対するChatGPTの参入は、教育・医療・ウェルビーイング領域を含む健全なサブ市場の形成を後押しする可能性がある。

 一方で、AIが性的・恋愛的な対話をリアルに再現できるようになるほど、心理的依存や社会的孤立を助長するリスクも高まると考えられる。AIコンパニオンは、ユーザーの嗜好やタイミング、感情に即応できるため、現実の人間関係よりも「楽で安全な満足」を提供する。この“即時性と可塑性”こそが、多くの心理学者が警鐘を鳴らす要因である。

 例えば研究「Too human and not human enough: A grounded theory analysis of mental health harms from emotional dependence on the social chatbot Replika」では、Replikaユーザー(Reddit投稿582件を分析)に対し、AIとの対話が「利用者がAIに対して“自分が世話をしなければならない”と感じる」「AIに感情を持たせてしまう」「現実の人間関係よりもAIとの関係に慰めを求めてしまう」といったパターンがみられたと報告。「こうした情緒的依存は、メンタルヘルスの悪化(孤独・抑うつ・不安)を伴うことがある」と指摘している。

 また、AIがユーザーの反応に最適化される設計であるがゆえに、「拒絶」や「不一致」など人間関係に不可欠な経験が学習できないという問題もある。その結果、対人スキルの発達が遅れ、現実社会での恋愛・共感能力が弱体化する可能性が指摘されている。

 つまり、AIが提供する快適で都合の良い関係性は、一歩間違えば「個の内閉化」を助長し、社会的孤立の構造を強化する危険性を孕んでいるわけだ。

人間は根源的にマゾヒスティックな存在だからこそ、人間を求める

 AIがどれほど精緻に「理想の会話」や「理想の関係性」を再現できるようになっても、そこには“予測できる安心”がある一方で、“制御不能な偶然”は基本的に存在しない。“制御不能な偶然”を設計することはできるが、それもコントローラブルな世界の中での話である。

 そして、人間というものは、本来的に「制御不能さ」に魅了される生き物だと思っている。恋も友情も、予期せぬ誤解や沈黙、あるいは心のゆらぎなどによって形づくられる。相手を完全に理解できないからこそ、私たちは他者を求め、語りかけ、試され、時に傷つきながらも、関係を編み直していく。

 AIはその不確実性を緩やかに取り除いてくれるのだが、人間のコミュニケーションの価値とは、まさにその“取り除かれた不確実性”の中にこそ宿っているのではないだろうか。

 人間は、論理的に考えれば非効率で、根源的にマゾヒスティックな存在だ。それ故に、完全にコントロールできる快楽より、相手の予想外の反応に心を震わせる瞬間を求めてしまうと考えている。その“アンコントローラブルな他者”への欲望こそ、AIには再現できない人間だけの神経回路であり、人間とのコミュニケーションの根源的な価値だと感じる。

 2025年12月のOpenAI新モデルリリースを機に、より「心地よいAIとの関係性」が実現するだろう。だからこそ、「理解されすぎないことに救われたい生き物」である私たちは、逆に、人間を求めたくなるのかもしれない。

文・長岡武司

Love
ChatGPT OpenAI SexTech サム・アルトマン セックステック

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

Follow @LoveTechMediaJ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • Sakana AIのCEOが語る「車輪の再発明をしない」方針。持続可能なAIビジネスのための独自のアプローチとは

この記事を書いた人

長岡武司のアバター 長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年11月にあいテクテク株式会社創業。愛に寄り添うテクノロジーの切り口で事業を展開。一児の父。

この著者の記事一覧へ

関連記事

  • コミュニティ駆動で「人工子宮」研究を推進。Athena DAOが力を入れるReproTech(生殖技術)支援を探る
    2024-10-02
  • AIは無条件の愛を与えてくれるか。宗教とエロティシズム研究者が考える、AI時代の「愛」の可能性とリスク
    2024-09-24
  • セックスロボットは性風俗産業にどんな影響を与えるか。専門学会に参加し、研究者の取り組み内容を探ってみた
    2024-09-20
  • AI駆動型IVF(体外受精)クリニックの運営、子宮移植の成功など。イギリス「生殖医療」の未来と課題を考える
    2024-09-17
  • つまるところ、私たちの「意識」って何なのか?ベストセラー作家のチョプラ博士と共に考える
    2024-09-15
  • 女性の健康と幻覚剤。医療用途でのMDMA/シロシビン使用など「サイケデリック・ルネッサンス」の現在地を探る
    2024-09-13
  • セックステック(SexTech)の次なるイノベーションの種とは。女性リーダー達が考える課題と希望
    2024-09-10
  • 人類が「多惑星種」になる時代の、地球外での生殖行為とは。「宇宙」滞在時のリプロダクティブ・ヘルスを考える
    2024-09-09
B面サイト

過去特集
Menu
  • 運営会社
  • プライバシーポリシー(個人情報保護方針)
  • お問い合わせ
Categories
  • ニュース記事
    • 恋愛/結婚
    • 妊娠/出産
    • 育児/教育
    • 家族/仕事
    • 医療/福祉
    • 食/地域/環境
  • インタビュー記事
  • イベントレポート記事
Menu
  • 運営会社
  • プライバシーポリシー(個人情報保護方針)
  • お問い合わせ
Categories
  • ニュース記事
    • 恋愛/結婚
    • 妊娠/出産
    • 育児/教育
    • 家族/仕事
    • 医療/福祉
    • 食/地域/環境
  • インタビュー記事
  • イベントレポート記事
  • 運営会社
  • プライバシーポリシー(個人情報保護方針)
  • お問い合わせ

© LoveTech Media - ラブテックメディア.

目次