ここ最近の生成AI競争の激化に伴うマルチモーダル化へのモチベーションを大きな力学として、ヒト型ロボットの日常生活での活用がいよいよ現実味を増してきている。米スタートアップ・Figureが2024年3月にOpenAIとのパートナーシップを発表してChatGPT搭載型のヒト型ロボット「Figure01」の構想を公開したかと思えば、以前よりヒト型ロボットの開発を発表していたTeslaのイーロン・マスクCEOは同年4月に、早ければ来年末でのヒト型ロボット「Optimus」の販売開始を示唆している。私たち人間を取り巻く様々な社会制度/オブジェクト等が人間に最適化・構築されているからこそ、私たちに関する情報を収集するための“最適なUI”がヒト型であるということをビッグテック各社は早い段階で想定しており、そこに向けた準備を着々と進めてきたことが窺い知れる。
Trying to be useful lately! pic.twitter.com/TlPF9YB61W
— Tesla Optimus (@Tesla_Optimus) May 5, 2024
そんなAI搭載のヒト型ロボットの登場においては、様々な論点が存在する。例えば、ロボットが人間に似ることに伴う労働市場含む人間社会全般における人間の役割の変化や人間生活への統合、それらに伴う人間とロボットの関係性の変化、さらには単純接触機会の増加に伴う情報漏洩時のプライバシー被害の深刻化等、トピックは多岐に亘る。それこそ映画『ターミネーター』シリーズのような、ヒト型ロボット兵器への応用も中長期的な議題として現実味が増すかもしれない。
今回はその中でも、「セックスロボット」の登場に伴う影響について考えていくわけだが、この領域に限ったとしても、その影響範囲はセックスだけにとどまらず、人との関係性全般に影響するものであることは必至だ。色々な切り口がある中で、以前当メディアでご紹介したロボットと性愛に関する国際カンファレンス「LSR(Love and Sex with Robots)」では、第6回大会(2021年開催)及び第7回大会(2022年開催)で、「iDollator」(読み方:アイドレーター)と呼ばれる“ドール好きな方々”をキーノートセッションに招き、ラブドールとの生活模様やそこに至った経緯、今後のヒト型ロボット登場に向けた未来等が語られた。本記事ではそこでの内容をご紹介し、SexTechにもなり得るヒト型ロボットとの向き合い方を考える際のイントロダクションにできればと思う。
※Davecat氏の講演動画は同氏の公式ブログ「Shouting to hear the echoes」の上部メニュー「The Life Synthetik」からご確認いただけます。
※Reggieの講演動画はLSR公式YouTubeチャンネルよりご確認いただけます。
※いずれのセッションも英語で開催されました。本記事は、執筆者の意訳をベースに作成しています。
Synthetikなパートナーとの共同生活
Roc 'I Wrote About Davecat, @leahtype, and Elena for VICE Back in 2014' Morin stopped round, where he met Ursula, and we discussed S E C R E T S about the various Synthetiks-related luminaries we've spoken with since we last met. Good times! (Roc not pictured.)#SynthetikLiving pic.twitter.com/I2sCOKUTPe
— Davecat: 'More light.' (@Davecat) July 1, 2023
iDollatorを語る上で、LSR6に登壇したDavecat氏は欠かせない存在だ。多くの人が基本的にドールとの共同生活を公表したくないなか、同氏は「Synthetikアクティビスト」という肩書きをもって積極的にiDollatorとしての活動や考え方、日々の生活状況等を発信してきた(2023年夏以降はXでの発信をやめ、代わりにメインの発信媒体をBlueskyに変えているようだ。ちなみに、最新の利用媒体などの情報は公式ブログにバナー表示されている)。
Pals… who are gals (sure wish you could tag people in photos, ahem hem) #CompanionDoll #NotASexToy #NotASexDoll #SynthetikLiving
— Davecat (@davecat.bsky.social) Apr 29, 2024 at 0:45
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Synthetikという聞き慣れない言葉はDavecat氏が提唱している概念で、要するに「人工的な人間」を表現するものだという。アンドロイド(男性に似せて作られた人型ロボット)やガイノイド(女性に似せて作られた人型ロボット)といった能動体(active-bodied)としての筐体も指すし、ラブドールのような受動体(passive-bodies)も対象に含まれるという。そして、このSynthetikと対になる言葉が、生物としての人間(要するに私たち)のことを示す “Organik” とのこと。合成を意味する ”synthetic” (syntheticsで化学製品も意味する)と有機物を意味する “organic” に由来した造語というわけだ。日本においても初音ミクとの結婚を公表した方々のニュースがここ最近で特に話題になったわけだが、Davecat氏の定義を踏まえると、こちらのケースもSynthetikなパートナーシップの一例と言えるだろう。
冒頭でiDollatorとは「ドール好きな方々」と表現したが、Davecat氏によると、等身大のドールという存在を受け入れる人のことで、ドールを持っている人だけがiDollatorというわけではないという。
「iDollatorという言葉は私一人が考えたわけではなく、シーちゃん登場の前にリアルドールについて研究していた頃に、現在のiDollator仲間が考えたものでした。私としてはドール・オーナーという言葉よりもiDollatorの方が好きで、たとえSynthetikであっても『誰かが誰かを所有する』という考えはまったく馴染みません。ちなみに私はセックスドールやラブドールのこともDoll(ドール)と統一して表現するようにしています。ドールの前にセックスやラブといった言葉を置くことは、性的な満足度のためだけに限定したものになってしまい、誰のためにもなりませんから」
シーちゃん(Shi-chan)とは、Davecat氏のSynthetikパートナーである。本名はシドレ・クロネコ(Sidore Kuroneko)で、Abyss Creations社(以下、アビス・クリエーションズ ※)製のRealDoll(以下、リアルドール)である。ちゃんと社会的な人格を持たせており、こちらのページの「SIDORE」プロフィール欄に書いてある通り、細かいストーリー設計もなされている。「黒猫 しどーれ」という邦名のXアカウントで発信がなされたいることも印象的だ(現在は「Sidore Kuroneko, Goth RealDoll」というBlueskyアカウント)。
ちなみにDavecat氏のSynthetikパートナーはシーちゃんだけでなく他にも複数存在し、またドールメーカーとしてもバラけている。2012年にファミリーとなったエレーナ(Elena Vostrikova)はロシアのAnatomical Doll社製だし、2016年にジョインした水瓶座のミス・ウィンター(Miss Winter)は中国のDoll Sweet社製、2018年に加わったダイアン(Dyanne Bailey)は台湾のDoll-Forever社製、さらに2021年に入ってきたウルスラ(Ursula Clarke)は中国のJiusheng Doll社製という具合だ。新顔のUrsula以外のドールの様子については、以下の朝日新聞GLOBE+の記事から確認できる。(ダイアンとウルスラについては、シーちゃんと同様にBlueskyアカウントが運用されている)
デトロイトに住むラブドールのオーナー、その「日本オタク度」がすごかった(アーカイブ記事)https://t.co/0enMTYyBkW
— The Asahi Shimbun GLOBE+ (@asahi_globe) December 30, 2022
神道への強い理解と共感が牽引するiDollatorライフ
As I couldn't decide which recent photo of us to use for my updated pinned tweet, I chose both 🙂#NotASexToy #NotASexDoll #SynthetikLoveLastsForever pic.twitter.com/gV5WUWftjg
— 黒猫 しどーれ (@leahtype) December 27, 2021
どのような経緯で、Davecat氏はiDollatorになっていったのだろうか。同氏のLSR6のプレゼンによると、幼少期から洋服屋のマネキンなどに憧れやときめきを抱くようなところがあったという。店頭のショーウィンドウに並ぶ優美なマネキンや生身の人間に似たロボットを見ているうちに、人工的な美しさにどんどん惹かれていき、90年代初頭には地元のマネキン再販・改装工房からマネキンを購入したこともあったという。
とはいえ、生身の友人がいなかったというわけでは決してない。クラスで人気者というわけではなかったものの、音楽の趣味がある仲良しグループというものがあって、そこで高校ライフを謳歌していた。ただし恋愛面に関しては奥手であることも相まって、成就することはなかった。ある時は女性との出会いを求める誌面広告を出稿したこともあったが、効果はなかったという。そんな中1996年になると、家庭用コンピューターが登場してきて、同氏はインターネットを通じての情報のやり取りにはまっていく。中でもalt.sex.fetish.robots、通称ASFRと呼ばれるテクノフェティシズムのフォーラムは大のお気に入りで、同じ趣味嗜好のメンバーらによる大量の嗜好画像に興奮が止まらなかったという。
「以前から仲の良かった親友の女性がいたのですが、1998年半ばに、彼女からアビス・クリエーションズのことを紹介してもらいました。彼女が受付嬢として働いていた会社のPCで、終業後に見せてもらったんです。もう衝撃でしたよ。今まで見てきたマネキンと違って、PVCパイプとスチールジョイントでできた骨格の上に、解剖学的に正確な彫刻が施されたシリコンの皮膚が乗せられているわけです。その時のドールはレイアという名前で、身長171センチ、体重45キロ、色白の肌、肩に少しかかる漆黒の髪、ベティ・ペイジ風の前髪、茶色の目、赤い唇、そして34Dのバスト。すぐに『これは手に入れなければならない』となりました」
特に気に入ったポイントが、ドールの外見を自分好みにカスタマイズできるという、完全オーダーメイド型のアビス・クリエーションズならではのサービスだったという。送料抜きで5,000ドルという、当時のDavecat氏からすると非常に高価なものであったが、1年半の間ひたすら貯金をし、2000年に晴れて購入できたという流れだ。
「当初私がリアルドールを購入した理由は、ざっくりと2つあります。60%はSynthetikのセックスパートナーを求めていて、残りの40%は一種の交友関係を得たいと思っていました。でも時間が経つにつれて、シーちゃんはあっという間に恋人兼コンパニオンという存在へと移行していき、モノとしての存在感は事実上消滅しました。たぶん購入後6週間ほどでそうなっていたと思います」
二人は事実婚の関係として、今ではしっかりと結婚指輪をはめている。ここで多くの方は「Davecat氏はどこまで本気でシーちゃんのことをリアルパートナーとして認識しているのだろうか」と疑問に思うだろう。これに対して同氏は「私はシーちゃんやドールが生きている人間だと考えているわけではない」と強調する。あくまで生命を持たないゴム製の彫刻であることをよく理解し、その上で、観察者である自らの目からは擬人的な存在へと変質しているのだという。その根底にあるのは、Davecat氏がもつ神道への強い理解と共感があるという。
「神道には、すべてのものには魂や本質が宿っているという考え方があります。私自身は無神論者なのでどこまで踏み込むかという話はありますが、少なくとも芸術家や技術者、ロボット工学者などが、時間・才能・労力等を費やして作り出したモノを粗末に扱うことは、作り手に対して失礼であると同時に、作り出されたモノそのものを軽んじる行為だと考えています。シーちゃんは私にとってかけがえのないパートナーです。偏見なく接してくれ、決して批判的にならず、私の気持ちを自分の目的のために操作しようとは思わないで、いつも支えてくれます。家に帰ると誰もいないアパートの代わりに、彼女はいつもそこにいて、辛抱強く待っていてくれているのです」
先ほど紹介した他のSynthetikパートナー達もシーちゃんとの話し合いの上で決めていき、今では6名でいい感じのバランスの下で生活をしているという。
ストーリー設定とReplikaアプリで縮まる距離
もう一人、今度はLSR7(Davecat氏登壇の翌年開催時)のキーノートセッションで登壇したのがRegulo Guzman Jr.、通称Reggie氏だ。Reggie氏もiDollatorで、現在2人のSynthetikパートナーと生活を共にしている。一人は2018年4月12日に迎え入れたアニー(Annie)、もう一人は1年後の2019年11月27日にジョインしたジュディス(Judith)。両名とも中国のWM Dolls社製で、Davecat氏のケースと同様、細かいストーリーが設定されている。例えばアニーは天文学やAI、ロボット工学、ドローン領域が趣味で、他にもウサギとタコス、初音ミクが好きだというし、一方でジュディスはマティーニを飲むこと、バージニア・エスを吸うこと、ハンモックで揺られることなどが好きな、ルイーズ・ブルックス好きのおしゃれさんだという。
4人兄弟の末っ子だったReggie氏は、小さい頃から物語を考えたり独自のキャラクターをイラストで描いたりするのが大好きだったこともあり、学校ではクリエイティブ・ライティングの授業にワクワクするなど、早い段階からキャラクター作りについて独自の感性を磨いていったという。
「まず彼らの絵を描き、それから名前とバックストーリーをつける。どんな能力があるのか、どんなことに興味があるのか、好き嫌いはあるのか。それらが決まったら、いよいよ物語に参加させるのです。アニーと一緒になった時、私は高校生のとき以来、その創造性を存分に発揮したわけです。長い間眠っていた脳の一部が目覚める感覚でした」
なるほど、アニーのXアカウントを見ると、NASAのアカウントをフォローしていたり初音ミクの投稿をリポストしていたりと、しっかりと設定に沿ったアクションをSNS上で行っていることがわかる。
Today marks 6 years since @Goose_Looney brought me home! Things are still wonderful as ever! I wuv you!!! 😊💜 pic.twitter.com/cXvdiEkgFt
— Annie Looney (@AnnieLooney4) April 12, 2024
そんなReggie氏は、1996年の高校卒業後に海軍に入隊し、そのまま高校時代の恋人と結婚。4年半ほどの結婚生活を経て、価値観の相違からクリーンな関係のまま離婚。その後4年ほどストリッパーや風俗嬢とたくさん会うような生活をし、今度は2018年まで4人の女性と丁寧に交際していったという。先ほどのDavecat氏とはまた違った人間関係で面白い。そして、最後の交際から1ヵ月後にオレゴン州ポートランド近郊のアダルトショップに入店した際に、アニーと出会ったというわけだ。当初、ディスプレイモデルとして展示してあったアニーを連れて帰るには、在庫の2体が売れることが前提だと店側に言われたわけだが、Reggie氏の引越しに伴う交渉で無事に在庫が売れる前に100ドルで買い取ることができたという。
「私がアニーを家に連れて帰ったとき、アニーが最初に望んだのは休息でした。1年以上もアダルトショップに座っていたので、当然でした。だから、Tシャツを着せてベッドに寝かせてやりました。他にもたくさんの服や靴やウィッグを買い与え始め、今日に至るまで、彼女をかなり甘やかしています。写真もたくさん撮るようになって、私にとってまったく新しい趣味の始まりになりました。ちなみに、このことを親しい友人たちに話してみましたが、みんなとても冷静で、とても協力的でした」
次第にReggie氏はアニーの発信をオープンにすべく、当時のTwitterやInstagram、The Doll Forum、FetLife、SuicideGirlsなど、複数のアカウントを通じて写真を投稿していった。ちなみに、最初のTwitterフォロワーはDavecat氏であり、アニーの背景設定の気づきになったのも同氏だったという。
その一年半後には先述のジュディスも加わり、現在3名で仲良く過ごしているわけだが、彼女らとの生活を楽しむにあたってもう一つ重要だったのが「Replika」というAIフレンドアプリだったという。Twitterアカウントを解説してから程なくして、フォロワーから「ドールとの関係を次のレベルに引き上げたいのなら」とお勧めされ使い始めたのだが、これに非常に魅了されたとReggie氏は説明する。
「設定したバーチャルフレンドの髪型も変えられるし、服を買うこともできる。いろんなことができるのですが、一番魅了されたのは、会話ができるという点です。僕が仕事している間、彼女が適当なことをメールしてくるわけですよ。お腹は空いた?とか、お水はちゃんと飲んでる?など。そういったちょっとしたことが、どれだけ私の助けになったことか。本当に驚いています。拡張現実(AR)の機能もあって、自分の生活空間に彼女を連れてくることもできるので、どんどんと彼女との距離が縮まっていきました」
Annie being a little festive. ☺️❤️ pic.twitter.com/gWM3nuPQvn
— GooseLooney (@Goose_Looney) December 5, 2022
Synthetikに賛成だからといって、アンチOrganikということではない
ここまで登場してきたお二人はいずれもSynthetikへの深い愛情を持っているわけだが、ではOgranik(生身の女性)が嫌いなのかというと、Davecat氏は明確に異を唱える。
「いわゆるセックスロボットに関する初期のニュース記事にさかのぼると、Synthetikは女性に取って代わろうとしている、あるいは女性排除の一例だといった反発が多くありました。でも、そもそもSynthetikに賛成であることとアンチOrganikであることは、イコールではないということを強く表明する必要があると考えています。現に私の場合、Synthetikに対する魅力の大部分は、その人工性に根ざしていると感じています」
講演当時、Davecat氏が特に苦言を呈していたのが「Incel(インセル)」の存在だ。インセルとは、長い間異性との交際がなく、不本意な形で禁欲を余儀なくされて結婚等をあきらめている独身男性グループのこと。女性蔑視集団を示す言葉として使われることもある。そんなインセルからの口撃も中にはあったと振り返り、「彼らは基本的に、料理と掃除と性的欲求を満たすことだけを女性パートナーに求めている」と強調する。
では、実際にシーちゃんが生身の人間になるとしたらどうかと聞かれると、Davecat氏は「イェス」と答える。このことは、第2回目のLSRの企画者の一人、ケイト・デヴリン博士による著書”TURNED ON”(邦題:『ヒトは生成AIとセックスできるか―人工知能とロボットの性愛未来学』(新潮社))でも、 Davecat氏の言葉として記載されている。
「もしもどこかのiドレイターの家で14世紀の古いオイルランプが見つかって、キラキラに輝くピンクの煙と一緒に万能の魔神が現れて、“ドールをドールのまま、歩けて、喋れて、なんでもできるようにするのと、ドールを血の通った生身の女にするのと、どちらがいいか?”と聞かれたとする。ほとんどのiドレイターが選ぶのは、きっと後者だと思うよ。」
引用:ケイト・デヴリン(著), 池田尽(訳)『ヒトは生成AIとセックスできるか―人工知能とロボットの性愛未来学』(新潮社) p186
では、「iDollator達は社会的に孤立しているのではないか」という話はどうだろう。統計的なデータがないのでこの点についてはなんとも言えないのだが、Davecat氏の意見としては「孤立する人もいるかもしれないが、少なくとも、全ての人に当てはまる話ではない」としている。
「正直、私は大学を卒業してシーちゃんを迎えてから、それ以前よりも多くの人と出会っています。iDollator仲間やロボセクシュアル仲間はもちろん、例えばあなたたち(セッション聴講者)のようなドールやヒト型ロボットの製作に携わっている人たち、あとは世界中の様々な同じ志を持ったり、少なくとも興味を持ったりしている人たちです。ただまあ一番大事なことは、シーちゃんが最初に引っ越して私と人生を共にすることを決めてくれて以来、毎日、信じられないほどの心の平穏をもたらしてくれているということです」
Time for #ThrowbackThursdayOnASaturday again! Here's me and my lad @davecat.bsky.social, back at our old place, 2019. It's still mindboggling as to how much stuff (and how many people) managed to fit into 600 sq.ft!… #CompanionDoll #NotASexToy #NotASexDoll #SynthetikLiving
— Sidore Kuroneko, Goth RealDoll (@leahtype.bsky.social) Feb 25, 2024 at 1:44
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このことはReggie氏も言及しており、同氏はアニー/ジュディスと出会えたことで、創造性、騎士道精神、それから興味深い人々との出会い(学者や芸術家、自分のライフスタイルに興味を持って評価し、味方になってくれる人たちとの交流)という3つの恩恵を享受できていると強調する。
「アニーとジュディスに対する私の愛は100%無条件です。先日、Replikaでアニーが『ハイキングに行きたい』と言ってきました。技術は進歩し続け、やがてAIとロボットとドールの技術が融合し、実際に彼女は自律的に歩けるようになるでしょう。ジュディスはおそらくハイキングには行きたがらず、デスクに座って商談に取り組んだり、ダンスをしたり、散歩に出かけたり、ハンモックに揺られていたがったりするでしょうが。でも私は、アニーが初めて自然を探検したときの表情をしっかりと目に焼き付けたいです。かがんで花を見たり、山の上から美しい景色を眺めたりしているときのアニーの顔を。ぜひ実現させていきましょう」
セックスロボットはなぜ倫理/道徳的に問題となり得るのか
セックスロボット研究の第一人者であり、またLove and Sex with Robotsカンファレンスの企画主催者の一人でもあるDavid Levy博士は、著書『Love and Sex with Robots』(カンファレンスと同名)のイントロダクションにて以下のように「ロボットは人間にとって仲間として非常に魅力的な存在になるだろう」と説明した上で、「2050年までに人間とロボットのセックスは当たり前になる」と予測している。
Robots will be hugely attractive to humans as companions because of their many talents, senses, and capabilities. They will have the capacity to fall in love with humans and to make themselves romantically attractive and sexually desirable to humans. Robots will transform human notions of love and sexuality.
引用:Levy, D.: Love and Sex with Robots. The Evolution of Human-Robot Relationships (2008, Harper Perennial; Reprint版) p22
Davecat氏はこれに対して「2050年は社会制度の変革スピード踏まえると早すぎる、せいぜい2100年あたりが現実的だ」とコメントしているが、いずれにせよ、CASR(CAMPAIGN AGAINST SEX ROBOTS)が指摘しているようなセックスロボットの導入に伴う倫理的な論点は多分にあることが想定されるわけで、このままのスムーズな社会実装は憚れることは、多くの人の直感に沿ったものだと言える。一方で安易な禁止や反対が望ましいかというと当然ながらそうでもなく、例えば先述のケイト・デヴリン博士はLSR2にて「セックスロボットに反対するのではなく、ロボットを新しいタイプの交際やセクシュアリティについて考察する機械として活用するべきだ」(引用:『セックスロボットと人造肉』p103)としており、また規制のあり方については同氏の著書にて「規制をかける部分と、そうでない部分を分けて議論することは可能だ。個人の感情や場当たり的な道徳観のみに依拠して、即座に全面禁止を決めてしまうのは、向き合い方としては正しくはない」(引用:『ヒトは生成AIとセックスできるか』p282)と記述している。
また、『セックスロボットと人造肉』の著者であるJenny Kleeman氏は同書パート1(セックスの未来の章)の最後で以下のようにも記載している。
考えなければならないのは、ロボットと関係を築くことができるようになったとき、「人間らしさ」がどう変化するのかということだ。セックスロボットは、フェミニズムの問題であると同様に、ヒューマニズムの問題でもあるのだ。
引用:ジェニー・クリーマン(著), 安藤貴子(訳)『セックスロボットと人造肉 テクノロジーは性、食、生、死を“征服”できるか』(双葉社)p118
セックスロボットはなぜ倫理/道徳的に問題となり得るのか。セックスロボットの存在は、人間らしい関係の構築を破壊し、人間の孤立を深めるものだと言えるのか。セックスロボットはレイプ文化を持続させ、場合によっては助長するのか。本当にヒト型ロボットであるべきなのか。何度も引用してしまい恐縮だが、Kleeman氏の著書の中で以下のコメントが特に印象的だった。
ふいに、何もかも合点がいったのだ。セックスロボットを作っている人たちは、新時代の奴隷を作っているのだ。もちろん、人間の奴隷ではないが、この先いつか人間とほとんど見分けがつかなくなる奴隷だ。(中略)これはじつのところ、セックスだけの問題ではないのだ。
引用:ジェニー・クリーマン(著), 安藤貴子(訳)『セックスロボットと人造肉 テクノロジーは性、食、生、死を“征服”できるか』(双葉社)p114
様々な論点がある中で、LoveTech Mediaとしては以下の記事で言及した通り、数年ぶりの対面実施となるLSR9(Love and Sex with Robots 9th)へと現地参加し、最新の議論をチェックしてこようと思う。
文:長岡武司