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セックステック(SexTech)の次なるイノベーションの種とは。女性リーダー達が考える課題と希望

2024 9/10
Love Startup
長岡武司

 2024年6月10日・11日に、ロンドンを拠点に活動する「FemTech Lab」主催の年次カンファレンス「Decoding the Future of Women 2024」が開催された。FemTech Labとは、女性の健康やウェルネスをメインセクターとして、アクセラレーター・プログラムを中心に当該領域のスタートアップや起業家等を支援している組織。これまで2万人以上のファウンダーや投資家、企業パートナー、その他官民様々なステークホルダーを巻き込んでおり、アクセラレーター・プログラムとしては70以上のスタートアップを支援してきているという。

開会の挨拶で登壇したKarina Vazirova氏(FemTech Lab Co-Founder and CEO:写真左)とKatia Lang氏(Co-Founder and CMO, serial entrepreneur:写真右)

 会場では2日間に亘って様々なFemTechテーマのブースが出展されており、また並行して、メンタルヘルスやセクソロジー、リプロダクティブ・ヘルス、エイジングケアなど、興味深いテーマのセッションやピッチ大会等が開催。会場は常に熱気に包まれていた。

 本記事では、その中でも「テクノロジーの革新が、性的タブーの崩壊をもたらす」と題されたパネルセッションの様子をお伝えする。テクノロジーがセクシュアル・ウェルネスにおける障壁やタブーをどのように打ち破っているのか。業界のトップランナー等は日々の取り組みの中でどんな工夫を凝らしているのか。

「毎日セックスをする、あるいは自慰をすることは素晴らしく、普通のこと」

「インターネット上で見知らぬ人とセックスや快楽について議論しても、それは時間の無駄」

「セックスは楽しいものであるべきで、その定義は人それぞれ。何であれ、あなた自身が定義するものがセックスなのです」

「年齢に関係なく、人々が自分のセクシュアリティを楽しみ、探求し続けられるような技術/デバイスの開発が求められている」

 こんな感じで、インティマシー・コーディネーターやセクシャル・ウェルネス・ブランドの責任者、セクソロジストなど、各回の第一線で活躍されているメンバーが一堂に会し、ざっくばらんなトークを繰り広げた。

  • Emma Rees(Founder, Chair, Angel Investor)※モデレーター
  • Julia Margo(Co-founder and COO, Hot Octopuss)
  • Samantha Marshall(Head of Brand, Smile Makers)
  • Sophie Cohen(Film Director, Sex Educator)
  • Lauren Cooney(Co-founder, GASM)
  • Emilie Lavinia(Journalist, Consultant and Sexologist)

※本セッションは英語で開催されました。本記事は、執筆者の意訳をベースに作成しています

目次

セックステック領域におけるマーケティングの難しさ

Julia Margo氏(Co-founder and COO, Hot Octopuss、写真右)。2011年にHot Octopussを共同創業し、セックストイ業界における障害者や高齢者など、これまであまり注目されてこなかった市場に焦点を当て、快楽を促進しつつ既存の偏見を乗り越えるような包括的な製品の開発を進めている。また、イギリスの独立系シンクタンク・Demosや消費者団体・Which?、医学研究慈善団体・Genesis Research Trustでの経験を活かし、社会変革やウェルビーイング、消費者問題に関する著書も執筆。現在は同社のCOOとしてマーケティング部門、広報チームを率いている

Emma Rees:最初のトピックは、この領域の「検閲」問題についてです。皆様の体験談を教えてください。

Julia Margo:15年前、性的機能障害等がある人向けのセックストイブランドを立ち上げようとしたとき、銀行口座を作るのに4ヶ月もかかりました。数年前も、米国外の在庫を扱う管理会社から、私たちのやっていることを理由にお断りされました。私たちは、障害のある方でも使えるようにセックストイをデザインしており、また障害があっても性的な存在であることを啓発するための教育活動にも力を入れています。常に高い使命感を持って事業を営んでいるのですが、それこそ以前は、ビジネスパートナーと私とで家を担保に資金を工面していました。今となっては資金的なゆとりができましたが、セックストイ分野のスタートアップ企業にとっては、引き続き参入が難しい状況が続いていると思います。

あと、マーケティングは今でも本当に難しいです。GoogleやFacebook、Instagramでセックストイを宣伝することはできません。ソーシャルコンテンツに頼らざるを得ないんです。以前に比べればびっくりするくらい、多くのビジネスコラボができるようになってきたと思いますが、それでも金融機関や一部の業界では、まだまだ世間一般の認識に仕組み等が追いつけていない印象です。

Lauren Cooney氏(Co-founder, GASM、写真右)。男性の性生活向上を支援するセクシャルウェルビーイングアプリ「GASM」を共同創業し、実践的なアドバイスやデートナイト、ゲーム、エクササイズ等を通じて、男性のセックスライフの質を高めることを目指している。起業家になる前は俳優や映画製作者として活動し、BAFTAや米アカデミー賞の候補となる映画祭でプレミア上映された短編映画の制作経験を有する。また心理性的コーチとしての訓練も受けており、シャーマニックな実践者でもある

Lauren Cooney:GASMの場合、Instagramのアカウントがシャドーバンされてしまいました。性教育や不妊治療、あとはLGBT関係で働く人たちにはよく起こっています。GASMは男性ユーザーをターゲットにした性的ウェルビーイング・アプリで、男性が自分のセクシュアリティについてもっと探求し、自分自身について学び、もっと楽しむための様々な学びと遊びの体験のためのコンテンツ群を提供しています。iOSに関しては、申請して24時間後に登録完了のメールが届きました。一方でAndroidはなかなか上手くいっていません。もう6週間も何度もやり取りしていて、一向に前に進まないんです。

結局のところ、すべてを一律に検閲してしまうのが問題だと感じます。性的快楽の話であろうと、健康の話であろうと、不妊の話であろうと、人権の話であろうと、何であろうとです。もちろん、悪質業者が入り込むのを防ぐのが本来の目的であることは理解しているので、私たち自身でこの問題を解決に導いていく必要があると思っています。

Emma Rees:エミリーさんは、ジャーナリストとして、こういった検閲問題を感じることはありますか?

Emilie Lavinia氏(Journalist, Consultant and Sexologist、写真右)。10年以上のジャーナリストおよび編集者としての経験を活かして、Stylist、The Guardian、Red、Women’s Health、Glamour、Grazia、The Independent、Woman & Home、Viceなど多数の著名メディアに寄稿しつつ、ドキュメンタリープロジェクトやポッドキャスト、ラジオ等においてコンサルタントや放送者として活躍している。いずれの活動も「女性の経験」を中心に据え、現代社会における人間関係や健康最適化の方法、アイデンティティの定義等を探求している

Emilie Lavinia:この問題は本当に広範囲に及んでいると思いますが、少なくとも出版業界では大きな進歩がありました。以前は、編集者たちはセックスや自慰行為、セックストイの話題に全く触れようとしませんでしたが、今では同じ編集者たちが、これらの話題をどうやって戦略に組み込むか、いかにして情報を届けるかについて、日々考えるようになったと感じています。

一方で、まだまだMeta社の禁止ワードリストとの戦いは続いています。「外陰部」や「乳首」といった言葉はまだ広告で使えません。また私自身、このセクターで素晴らしい機会を得てきたにもかかわらず、セックスに関連していることで仕事や関係性を失ったことがあります。某有名ブランドの編集者から「あなたは私たちには刺激が強すぎる」と言われ、仕事を断られたこともあります。こういったことは、この分野のコンテンツクリエイター、ジャーナリスト、起業家が何度も直面する問題だと思います。

Sophie Cohen(Film Director, Sex Educator、写真右)。18歳でロンドンに移住してストリッパーとして活躍した後、ストーリーテラーへと転身し、エロティックなイベントや教育機会を提供する団体及びプラットフォーム「House of Vixens」を創設。また、5つ星ホテルのMandrake Hotel GroupにおいてもHouse of Vixensとの連携を通じて、Mandrake Salonと呼ばれる専門サロンをプロデュースしており、自身もKink Concierge(変態コンシェルジュ)を拝命している。その他、インティマシー・コーディネーターや監督として映画製作にも携わるなど、セクシュアリティ、アート、インティマシー領域に新しい視点をもたらし続けている

Sophie Cohen:アーティストとして私は常に検閲と戦ってきました。この問題の根底には、セックスワーカーの権利が大きく関わっていると思います。FOSTA-SESTAという法律が制定されたとき、セックスワーカーたちは「この法律が通れば、皆さんにも影響が及びますよ」と警告しました。そして今、その予言が的中しています。この法律が施行されたことで、性に関する表現をする人々が、人身売買や小児性愛といった重大犯罪に巻き込まれるのではないかと恐れるようになったからです。もちろん、これらは深刻な問題ですが、私たちが行っている仕事とは全く関係ありません。でも、すべての性的な表現が一緒くたにされ、危険視されてしまっています。

さらに悪いことに、性について何も知らなかった人たちが、突然資金力を持つようになり、みんなの性的表現をコントロールするようになりました。これは主に、大手テクノロジー企業のことを指しています。彼らが過度に保守的な方針を取ることで、私たちの表現の自由が制限されているのです。要するに、良い状況ではありません。私たち全員がこの問題に取り組む責任があるわけで、性に関する健全な議論や表現の自由を守るため、私たち一人ひとりが声を上げて行動を起こす必要があるでしょう。

Emma Rees:様々な検閲がある中で、Smile Makersはとてもいい仕事をしていると思います。セフォラ(仏LVMH傘下の化粧品小売)に商品を置いてもらうのは非常に画期的なことだと思うのですが、どうやってそこに入り込んだのですか?

Samantha Marshall(Head of Brand, Smile Makers、写真右)。性的ウェルネスブランド「Smile Makers」のブランド責任者として、マーケティング、コミュニケーション、イノベーション、小売パートナーシップを統括。対話を基盤としたアプローチを続けていき、世界初のセフォラで販売されたバイブレーターブランドとして、女性の快楽に関するタブーを打ち破る。また性教育にも重きを置いており、Smile Makersの無料で快楽肯定的な性教育プログラム「Vulva Talks」も主導している

Samantha Marshall:おっしゃる通り、セフォラでのバイブレーター販売は簡単に決まったわけではありません。最初のアプローチから実際の販売まで10年近くかかりました。今でこそ、セフォラ・フランス、セフォラ・ヨーロッパで初めてバイブレーターブランドとして取り扱われ、オーストラリア、ニュージーランド、セフォラUSと次々に展開してきましたが、最初は「リップスティックの隣にバイブレーター?ありえない」と一蹴されていました。

一つ強調したいこととして、私たちは常に、アダルトショップでは販売しないという方針を持っています。すべての人に適しているわけではないからです。私たちの調査によると、多くの人々がより日常的な場所で、他のウェルネス製品と一緒にバイブレーターを購入したいと考えています。そのため、書店やスーパーマーケットなどといった“意外な”場所で製品を販売するようにしています。

これを実現するために注力したことは2つ。まずは教育です。Smile Makersのすべての活動の核心にあるのが教育です。特に女性のセクシュアリティと快楽に関する性教育が不十分だと考えているので、匿名のクイズを導入し、人々が自分の望む快楽について考え学ぶ時間を提供しています。そしてもう1つは、アプローチ方法です。私たちは、セックスから「セクシーさ」を取り除き、フレンドリーで親しみやすいアプローチを心がけています。一見矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、セックスを「日常的で普通のこと」にするのが私たちの役割だと考えています。もちろん、このアプローチは一般消費者だけでなく、バイヤーやコミュニケーションチーム、ソーシャルチーム、マーケティングチームなど、関わるすべての人々に性教育ワークショップを提供し、製品に触れ、笑い、楽しんでもらう機会を設けています。

業界が一丸となってタブーや偏見の解消に挑戦することが大事

Emma Rees:せっかくなので本日、参加者の皆さんと分かち合いたいこと、アドバイスしたいことなどを教えてください。エミリーさんからお願いします。

Emilie Lavinia:私からは、長年の試行錯誤を通じて学んだことを皆さんと共有したいと思います。インターネット上で見知らぬ人とセックスや快楽について議論しても、それは時間の無駄です。そのエネルギーを、もっと有益な方法で使うべきです。バーナード・ショーの言葉を借りれば、「豚と格闘するな。両者とも泥だらけになるが、豚はそれを楽しんでいる(Never Wrestle with a Pig. You Both Get Dirty and the Pig Likes It)」です。代わりに、あなたの才能、エネルギー、お金、時間を以下のように使うことをお勧めします。

  1. 支援活動に参加する
  2. 変化を生み出しているクリエイター、教育者、ブランドをサポートする
  3. 身近なコミュニティに影響を与える
  4. 性教育やテクノロジー、ソーシャルメディアの規制について国会議員に手紙を書く
  5. 素晴らしい女性経営の独立系ブランドを金銭的に支援する

エネルギーの使い方に気をつけ、良い目的のために使うようにしましょう。それが、特に私たちの業界や話題において、集団的に変化を起こす方法です。それからもう一つ、これらのトピックについて話すことを恐れないでください。誰もが話す権利を持っています。より多くの声が上がれば上がるほど、状況は良くなります。

Lauren Cooney:今のお話に重ねると、インターネット上で見る性に関する情報は、実際の人々の状況を歪めて伝えがちだということです。この業界にいると、時に悲観的になることもありますが、GASMを運営してきた経験から、私は希望に満ちてもいます。最初から男性向けの性的ウェルビーイングブランドになるつもりはありませんでしたが、異性愛の男性たちを含めたいと思っていました。なぜなら、彼らに語りかけ、質問できる場所を作り、自分が完璧な性の達人ではないと認められる空間を提供している人がいなかったからです。結果として、私たちのメーリングリストの70%が異性愛の男性で、その半数がパートナーがいる人たちでした。彼らと話すと、友達とこういった話をしていないことがわかります。パートナーとの会話も難しく、セラピーにも行かず、ポルノが自分たちに必要なものを与えてくれないことも知っています。そこには大きなギャップがあったのです。インターネット上では、この問題が平等、フェミニズム、クィアの問題などと極端に捉えられがちです。しかし、私の経験では、多くの善意ある人々がこのテーマについて異なる会話をしたいと思っています。私たちの仕事は、そのような会話をしやすくすることです。

女性や他のジェンダーの人々の役割は、そういった会話の仕方を学び、男性たちが良いセックス、良い親密さ、良い関係とは何かを探求することを normalise(当たり前のこととして受け入れる)するのを支援することだと思います。私たちはそこに到達できると信じています。

Sophie Cohen:皆さんの活動は本当に素晴らしいですね。私自身は、カップルや個人と一対一で仕事をしていますが、皆さんはより大きなプロジェクトに取り組んでいらっしゃいます。私からのメッセージは、セックスは薬物やアルコールなしで体験できる最高の「旅」だということです。気分を変える物質なしで、この素晴らしい体験を楽しんでほしいと思います。ただし、新しいパートナーと関係を持つ際には、これまでの経験が全く役に立たないこともあります。そのため、コミュニケーションが非常に重要です。まず自分自身の快楽を理解し、そして相手とオープンに話せる快適さを持つことが大切です。私たちがここでやっていることは、セックスについて話すことを当たり前にし、アプローチしやすくすることです。

毎日セックスをする、あるいは自慰をすることは素晴らしく、普通のことなのです。セックスは人生の変革点となり得るものです。他の人や自分自身とつながり、より良い方法で世界で生きていくことができます。これを世界に広めていくことが大切だと思います。少し「カリフォルニア的」な考え方かもしれませんが、これが私のメッセージです。

Samantha Marshall:皆さんがおっしゃったことに全面賛成です。セックスは楽しいものであるべきです。このようなパネルディスカッションでは、私たちは真剣に話し合い、怒りを感じるべき多くの問題について議論します。しかし、セックスは人間的で、混沌としていて、ぎこちなくて、それでいて面白いものです。これらすべての側面があることを忘れないでいることが大切だと思います。セックスは楽しいものであるべきで、その定義は人それぞれです。何であれ、あなた自身が定義するもの、それがセックスなのです。

Julia Margo:最後に付け加えたいのは、この分野で働く私たち全員が、もっと協力し合える方法を考えるべきだということです。私たちの多くは似たようなことを、異なる方法で行っています。例えば、私の顧客の70%も男性です。しかし、私たちはGASMとは全く異なることをしています。また、近所にはセックスショップもあります。ここ数年で私が学んだのは、競争するのではなく協力することの重要性です。ヨーロッパのセックストイメーカーは数が少なく、私たちは小さな家族のようなものです。だからこそ、タブーや偏見に挑戦し、変化を起こすために一緒に動くべきです。それは共同キャンペーンであったり、共同製品開発であったり、PRの協力であったりするかもしれません。これはとても重要だと思います。私たちは前進し続けなければなりません。

セックスは「生涯を通じて継続的に必要なもの」と捉えよう

質問者:皆さんから見て、セックステック(SexTech)領域で最もイノベーションの機会があると思われるところを教えてください。

Julia Margo:私は、障害がある方向けの分野に最もイノベーションの機会があると考えています。ここで言う「障害」とは、セックスする能力に影響を与える身体的な課題を持つ人々のことを指します。これには関節炎や反復性筋肉痛から、膣痙攣や性機能障害まで、幅広い状態が含まれます。この方々、人口が非常に多いにもかかわらず、十分なケアがされていないのが現状です。

大事なことは、アクセシビリティを考え、より使いやすく、より多くの人が利用できる製品を作ることです。多くの人は障害というと車椅子の人や視覚障害、聴覚障害等の方々を想像しがちですが、実際には、これらの人々のためにアクセシビリティを向上させたソリューションが、別の領域でも役立っています。つまり、障害がある方向けのイノベーションは、実は多くの人々にとって有益なものになるのです。もしも、画期的な素晴らしいバイブレーターを作ろうと考えている方がいれば、ぜひ私たちと一緒に取り組みましょう。この分野で活動している企業はまだまだ少ないです。

Samantha Marshall:関連してですが、セックスや性教育を「人生の一時期だけのもの」として見るのではなく、生涯を通じて継続的に必要なものとして捉えることが重要だと思います。例えば、性教育は若い世代だけに必要なものだと考えられがちですが、実際には私たちは生涯を通じてセックスについて学び続けるべきです。私自身、80歳になっても新しいことを学びたいと思っています。この継続的な教育がとても重要です。例えば、更年期についてよく「どれくらい大変ですか?」と聞かれますが、この質問自体を変えるべきです。「更年期はどれだけ素晴らしいものになるでしょうか?」と問いかけることで、私たちの人生を通じての性生活に対する解釈が全く異なるものになるでしょう。

つまり、セックステックにおけるイノベーションの機会は、単に製品開発だけでなく、生涯を通じての性教育や性に対する態度の変容にもあると思います。年齢や人生のステージに関わらず、セックスやセクシャル・ウェルネスを肯定的に捉え、継続的に学び、楽しむことができるような製品やサービス、教育プログラムの開発に大きな可能性があると考えています。

Sophie Cohen:思春期が重要であるのと同じように、閉経前期や閉経後の時期も同様に重要です。実は、私の祖母は78歳の時にセックス中にベッドから落ちて腰の骨を折ったんです。まさに私にとってのゴールの姿ですよね、腰は骨折したくないですが(笑)

要するに、セックステックの分野でのイノベーションの機会は、高齢者でも安全に楽しめるような製品やソリューションの開発にもあるのです。年齢に関係なく、人々が自分のセクシュアリティを楽しみ、探求し続けられるような技術/デバイスの開発が求められています。もちろんサマンサさんが仰った通り、これは単に製品開発の問題だけでなく、社会の認識を変えることにもつながります。年齢を重ねても性的な存在であり続けることは自然で健康的なことだという認識を広めることも、セックステック業界の重要な役割の一つかもしれません。

取材/文/撮影:長岡武司

Decoding the Future of Women特集

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  • 女性の健康と幻覚剤。医療用途でのMDMA/シロシビン使用など「サイケデリック・ルネッサンス」の現在地を探る

この記事を書いた人

長岡武司のアバター 長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年11月にあいテクテク株式会社創業。愛に寄り添うテクノロジーの切り口で事業を展開。一児の父。

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