福利厚生から店頭販売まで、企業が進める「ふたりの妊活」セミナーレポート《後編》

インタビュー

 「妊活は、パートナーといっしょに取り組むもの」という啓発を進めるべく、4月17日に開催された「ふたりの妊活」メディア向けセミナー。

 リクルートライフスタイルが提供する、自宅でできるスマホ精子セルフチェック『Seem(シーム)』を始め、会場には国内様々な妊活関連事業者が集まっており、その日、日本で最も妊活について熱く議論される場であったことは間違いないだろう。

 前編では、会場に併設されていた妊活事業者ブースと、産婦人科医である宋美玄氏による基調講演内容についてレポートした。

 後編では、Seemプロデューサーによる妊活市場や不妊治療件数の推移、政府・行政の取り組みについての情報共有と、社内の福利厚生からドラッグストアの売り場づくりまで、「ふたりの妊活」を推進している企業担当者を招いての事例報告会となった。

》前編記事はこちら

高まる妊活への関心

 まず妊活市場を俯瞰した流れについて、株式会社リクルートライフスタイル 『Seem』プロデューサーである入澤 諒(いりさわ りょう)氏より説明された。

 以下のグラフが、「妊活」というキーワードにおけるGoogle Trendsの動向を示したものとなる。最も高い部分を100とした構成になっているものだ。

 妊活という言葉自体は2011年より使われ始めており、2014年2月にお笑い芸人である森三中・大島美幸氏が妊活での休業を正式に発表したタイミングから、トレンドが一気にのぼっていった。

 その後、2018年1月クールでフジテレビ系「木曜劇場」にて放送された、妊活テーマのドラマ『隣の家族は青く見える』のタイミングでトレンドピークを迎え、その後も同年2月のNHK「クローズアップ現代+」にて『”精子力”クライシス 男性不妊の落とし穴』が放送されるなど、世の中での高い関心がうかがえる。

 そんな中、Seemは2016年10月より販売開始しており、妊活のGoogle Trends上昇に併せて、毎年300%近くの販売数の伸びを実現している。

 なお、Seemの使い方については、以下の動画をご覧いただければと思う。

ヘルスリテラシー調査から見たパートナーコミュニケーションの重要性

 次にお話されたのは、日本医療政策機構の今村優子(いまむら ゆうこ)氏。同団体は、2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間医療政策シンクタンクである。

 今村氏は、同団体より2018年3月に発表されたレポート「働く女性の健康増進に関する調査 2018」の企画段階から携わっており、「女性のヘルスリテラシーと健康行動や仕事のパフォーマンスには関連性があるのでは?」という仮説のもとで調査を進めていった。

 ここでいう「女性のヘルスリテラシー」とは、以下のように定義されている。

女性が健康を促進し、維持するために

・必要な情報にアクセスする能力

・情報を理解する能力

・情報を活用する能力

 調査期間は2018年2月2日〜2月8日の7日間。調査会社パネルのモニターである全国18歳〜49歳のフルタイムの正規の社員・職員及びフルタイムの契約社員・職員、派遣社員・職員女性2,000名に対するインターネット調査で進められた。

 具体的には、対象者を上述ヘルスリテラシーの高低に分け、女性特有の症状への対処や仕事のパフォーマンス、妊娠・不妊治療へのアクションや婦人科・産婦人科への受診状況などについて調査していった。

その結果、以下のような注目すべき調査結果が出された。

  1. 女性に関するヘルスリテラシーの高い人は、女性特有の症状があった時に対処できる割合が高い
  2. 女性に関するヘルスリテラシーの高さが、仕事のパフォーマンスの高さに関連がある
  3. 女性に関するヘルスリテラシーの高さが、望んだ時期の妊娠や不妊治療の有無に関連がある
  4. 女性に多い病気の仕組みや予防・検診・治療方法、医療機関へ行くべき症状を学ぶニーズが高い
  5. 企業の健康診断が、定期的な婦人科・産婦人科の受診に貢献

 

 今回はこの中でも3番部分についての説明である。特に印象的だった調査詳細は、不妊治療の実施とヘルスリテラシーの項目の関連についてであった。

 望んだ時期に妊娠ができなかった時の、不妊治療の実施に最も関連のあるヘルスリテラシー項目は「パートナーとの性相談」だというのである。

 つまり、妊娠や不妊治療に関して、パートナーとのコミュニケーションが重要であることが、改めて確認された。

社内向け妊活勉強会の実施

 それでは個別具体的な企業での活動はいかがだろうか。まず事例報告されたのは、freee株式会社で「ICX(Internal Communication & eXperience)」と呼ばれる、社内のコミュニケーションロスを少なくすることがミッションの部署に所属する関口聡介(せきぐち そうすけ)氏である。

 「スモールビジネスを、世界の主役に。」というビジョンを掲げ、各種業務支援システム「freee」シリーズを提供する会社として、ご存知の方も多いだろう。

 同社では2018年12月より福利厚生パッケージの中にSeemを導入しており、導入にあたって社内で勉強会を開催したところ、予想を超える数の参加者となり、概ねポジティブなアンケート結果になったという。

 以下が参加者属性である。男性参加者が7割近くを占め、半分以上の方が過去・現在・未来いずれかでの妊活経験がある(もしくは予定している)という分布であった。

勉強会実施の結果、最高の「大変満足」を回答したのは実に87%。満足度の理由で最も多かった回答項目は「妊活や妊娠に関して正しい知識を獲得できたため」であった。妊活に関する情報はネットを中心に様々な粒度で情報が氾濫しており、正しい知識へのニーズがあることが改めて浮き彫りになった。

 なお、勉強会で印象に残ったことの抜粋が以下となる。

 「精子の状態が生活習慣によって変わることを初めて知った」などの知識面の充足への満足から、「不妊治療の世界が変わる予感にワクワクした」などの正しい情報の認知による気分の高揚まで、様々なリアクションがあることがわかる。

妊活の認知向上の波はドラッグストア店頭にも来ている

 薬局・ドラッグストアチェーンを展開するスギ薬局グループでの、妊活商品の展開事例について、スギホールディングス株式会社 広報・CSR室 室長の日野清孝(ひの きよたか)氏から報告された。

 多くのドラッグストアで妊活関連のグッズを購入しようとすると、どこに置いてあるかお分かりだろうか。そう、「避妊用品」コーナーなのである。しかも、売り場面積も、大きくて棚1本という状況であり、積極的な展開がなされているとは言い難い印象だ。

 そんな背景の中、スギ薬局グループでは大型店舗での妊活商品の拡大施策を実施した。

 まず、これまで展開していた棚1本を2本に増強し、Seemの他、婦人体温計や葉酸サプリ、温熱用品も展開するようにした。また、展開棚のカテゴリ表示は従来の「避妊用品」ではなく、「妊活用品」へと表示変更させ、一部店舗では積極的に手作りPOPも設置するようにしている。

 この施策の結果としては、ネットのような大きな動きはリアル店舗ではなかなか無いものの、確実に売上は上がっているという。特に、コーナー全体の動きは郊外店舗よりも都心店舗の方が活発であり、インバウンドの影響もあるという。

 なお、店頭における妊活の認知度合いをはかれる指標として、「排卵予知薬」の売上があげられ、2016年と2018年の比較で170%ほど市場が伸びているという。同期間における「妊娠検査薬」の伸びは103%ほどとなっており、各事業者やメディアによる発信に伴う妊活の認知向上が、ドラッグストアの店頭にも表れている証拠であると言える。

男女のヘルスリテラシー向上を目指して

 今回のセミナーの中で、LoveTech Mediaとして特に気になったのが、先述した「働く女性の健康増進調査2018」レポートである。先ほどは主に「調査概要」及び「注目すべき調査結果」についてお伝えしたが、レポートの後半部分では、今後推進すべき対策についても、それぞれ国・教育機関・企業・研究機関・医療機関等を対象として言及されている。

「働く女性の健康増進調査2018」1頁より

 

 本調査を企画段階より進めているメンバーの一人、今村優子氏に、本調査企画にあたっての想いや今後の目標について、セミナー終了後にお話を伺った。

 

--どのようなきっかけや想いで、「働く女性の健康増進調査2018」に携わられたのですか?

今村氏:もともと私は周産期母子医療センターやクリニックで、助産師として8年間勤務していました。

そこで「通ったら産ませてもらえる」と漠然と考えている女性が多いことが課題だと感じるようになり、どうやって産むか、どこで産むかといったことをしっかりと自分で選択できるリテラシーの必要性を、女性に直接訴えることができるような仕事がしたいなと思い、まずはイギリスへ留学して、公衆衛生学を学ぶことにしました。

 

--公衆衛生学とは、どんなことを学べるのでしょうか?

今村氏:本当にざっくりになりますが、社会全体の健康や女性の妊娠・出産に関する国レベルの政策策定について学びました。

社会からアプローチして日本の女性全体にインパクトがあるようなことをしたいと考えての留学だったので、博士過程修了後は日本に戻り、現在の日本医療政策機構にジョインしました。

 

--「働く女性の健康増進調査2018」プロジェクトは、具体的にどれくらいの人員と期間をかけての調査だったのでしょうか。

今村氏:プロジェクトには多くの方にアドバイザーとして携わっていただきましたが、メインで動いていたのは、私含めて2名です。パイロット調査や質問項目の選定なども含めると、半年ほどかかりました。

 

--少数精鋭体制ですね!調査レポート発表後、具体的にどのような反応が世間からありましたか?

今村氏:この調査結果を出したことがインパクトとなって、経済産業省が選定する健康経営銘柄の指標の中に、「女性の健康」という項目が入りました。

これが、最も大きな成果だなと感じています。

 

--素晴らしいですね。最後に、今後の目標について教えてください。

今村氏:今回は女性の健康についての調査だったのですが、今後は男性も含めた実態調査を実施できればと考えています。

ヘルスリテラシーについて、男女や夫婦間で比較したら面白いのではと感じています。

あとは、そもそもヘルスリテラシーを上げるようなプログラム開発もしていけたらと考えています!

 

編集後記

「ふたりの妊活」セミナーレポート、前編・後編いかがでしたでしょうか。

 

各事業会社・団体による個別の活動ももちろん大切ですが、今回のように、業界を横断しての情報発信も非常に大切なことだと感じた1日でした。

 

記事で再三記載している通り、妊活は夫婦いずれか片方では成立しません。男女いずれも当事者意識を持っての取り組みが重要となります。

 

身の回りにそのような意識のカップルが1組でもいることが、他のカップルの気づきとなり、参考事例となって、自分たちの意識向上にもつながります。

 

本記事を通じて、1組でも多くの夫婦・カップルの、妊活への意識向上につながれば幸いです。

 

『Seem』詳細についてはこちらをご覧ください

 

本セミナー登壇社情報

今村優子(いまむら ゆうこ)

日本医療政策機構 シニアアソシエイト

総合周産期母子医療センター愛育病院、育良クリニック等にて、助産師として 8年間、多くの女性のケアにあたる。臨床経験を通じ、女性の妊娠や出産に関する国レベルの政策策定を学ぶ必要性を感じ、イギリスへ留学。 シェフィールド大学にて公衆衛生学修士課程修了(MPH)。大学院卒業後、2017年2月より日本医療政策機構に参画。主に、女性の健康に関する調査研究の企画・立案、実行を担う。

関口聡介(せきぐち そうすけ)

freee株式会社 経営企画本部 カルチャー推進チーム ICX

Sun microsystems、Googleを経て、2014 年にfreeeに UXディレクターとして入社後、2017 年にデザインとユーザー体験開発の知見を活かした「社内コミュニケーション開発担当」にピボット。ICX として コミュニケーションとカルチャーのデザインに心血を注ぐ日々。

日野清孝(ひの きよたか)

スギホールディングス株式会社 広報・CSR室 室長

1997年 (株)スギ薬局入社。店舗運営に関するスーパーバイザーを経て、販促部門立上げ後は広告領域全般を 担当し、マーケティング〜営業企画、販売促進を手掛ける。2015年より現職。幅広い広報活動の他に、未病・予防〜介護・終末期までトータルヘルスケア領域で健康啓発イベントを多数開催する等、CSR活動を推進。

入澤諒(いりさわ りょう)

株式会社リクルートライフスタイル

2014年11月にリクルートライフスタイルに入社し、新規事業開発部門に配属。新規事業として『Seem(シーム)』を立ち上げ、現在はSeem事業全体の戦略策定からUXの検討、プロダクト開発までを担当する。

LoveTechMedia編集部

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