出張演奏のムジカルが生演奏依頼プラットフォーム「Musicalu」を発表、演奏家の“活躍の場”を拡張

インタビュー

記事の要点

・出張演奏依頼サービス「LiveDeli(ライブデリ)」の運営等を手がける株式会社ムジカルが、新サービスとして、動画で選べる生演奏依頼サービス「Musicalu(ムジカル)」をリリース。演奏家自身が得意な演奏スタイルで演奏メニューを販売することができる。

 

・音楽に詳しくない人であっても、実際の演奏動画を観ているだけで好みの演奏家を簡単に見つけることができ、子ども向けの誕生日会や高齢者同士の懇親会など、演奏メニューを選ぶことで自分のイベントにあった演奏をリクエストできる。

 

・主なジャンルは、クラシック、ジャズ、ポップス、オペラ。ハイレベルな演奏だけでなく、子どもたちが楽器に触れる体験プログラム「Music Touch」も大人気とのこと。

LoveTechポイント

演奏家さんと顧客が抱える情報の非対称性に着目され、動画ベースの新しいプラットフォームを通じて、他ユーザーによるレビュー(評価)を公開する形で演奏家の信用スコアを見える化し、ユーザーに対する安心・安全の確保はもちろん、演奏家への「適切な顧客評価」も提供しようとしている点が、非常にLoveTechだと感じます。

子ども達が実際に、プロの演奏家さんの楽器に触れることができる、という体験を提供している点も、とても素敵だと思います。

編集部コメント

出張演奏依頼サービス「LiveDeli(ライブデリ)」の運営等を手がける株式会社ムジカルが、新サービスとして、動画で選べる生演奏依頼サービス「Musicalu(ムジカル)」をリリースした。

 

一言で表現すると、「演奏家の“食べログ”」だという。

 

どういうことか。

 

今回リリースされたMusicaluというプラットフォーム上では、演奏家自身が得意な演奏スタイルで“生演奏メニュー”を販売することができる。

 

「生演奏ということは、イベントとか企画する人専用のビジネス向けサービスですか?」

 

そんな声が聞こえてきそうなものだが、対象は「toC(一般消費者)」向けだという。

 

一般的に、音楽の生演奏を聴くとなればライブやコンサート、フェス、イベント会場での催しなど、一種特別な空間でしか味わえないと考えている方が多いだろうが、同社はその価値観を拡張し、自宅や友人宅、老人ホームや介護施設などといった身近な場所でのプロ演奏家による生演奏の文化醸成を狙っている。

 

少し遠い国の例で恐縮だが、例えばクラシック音楽が生活に浸透しているチェコ・プラハでは、音楽ホールやコンサート会場といった場所での演奏はもちろん、レストランの一角や路上(冬以外)など、なんてことない場所でも普通に上質なセッションが展開されている。

 

人々はピルスナーウルケル(ビール)ジョッキを片手に、音楽を聴きながら、楽しそうに“だべって”いるのだ。

 

これは極端な例ではあるものの、要は、誕生日や各種記念日における「プロ演奏家の奏でる音」も、プレゼントの選択肢としてもっと民主化されるべきであり、そのための「プロ演奏家の“流通プラットフォーム”」がMusicaluというわけだ。

 

「どの演奏家さんに来てもらおうかな」と吟味する際に、当然ながら、実際の演奏風景や奏でる音をチェックしたいだろう。

 

そのために、Musicaluは「動画」をベースにした仕様となっている。

 

具体的には、「シーン別」「ジャンル・楽器」「登録動画」「演奏家一覧」の4カテゴリーより、「この人だ!」という演奏家を見つけることができる。

 

例えば「シーン別」について見ていくと、「非日常をプレゼント」や「感性を豊かに育てる」といった希望シチュエーションがあらかじめ用意されている。

Musicaluサービスサイトより

 

その中の一つを選択すると、以下のような「動画」一覧が表示され、気になる演奏家を動画ベースで探すことができるというわけだ。

 

ここでポイントとなるのは、演奏家一人ひとりによる演奏の様子のみならず、登録演奏家同士による「セッション」動画も多く紹介されているということ。

 

例えば以下画面の通り、具体的なセッションの様子をチェックすることができる

 

プロの演奏家であっても、当然ながらセッションの「相性」というものがあり、他者がそれを慮ってセッティングするのは、ほぼ不可能である。

本人同士でさえ、実際に音合わせをして演奏してみないとわからないからだ。

 

だからこそ、Musicaluでは演奏家同士のセッション動画が多く登録されており、素人でも安心してセッションを依頼することができるようになっている。

ムジカル社では、定期的に登録演奏家さんのミートアップを開催しており、そこでメンバー同士のトライアルセッションが行われている。ここで、「音の相性が合う/合わない」といったことの確認や調整が行われている。当メディアも一度見学させていただいたことがあるが、同一の音楽スタジオ内で複数のセッションが繰り広げられるという空間は、“音好き”にとってはたまらなかった

 

また、Musicaluでは「Music Touch」という、利用者が直接「楽器に触ることのできる」オプションも提供している。

 

さっきまで演奏家が弾いたり吹いたりしていたピカピカの楽器に触れることができるという、非常に貴重な体験を創出しているのだ。

 

株式会社ムジカル 代表取締役の大山幹也氏によると、特に子ども達にとって素晴らしい刺激になるという。

株式会社ムジカル 代表取締役 大山幹也氏

えばコンサートとかであれば、観客と舞台が別世界として分離されているので、楽器を触るということはありません。

 

でも、私たちが提供しているのは“出張演奏”です。

 

演奏を間近に見ていたお客様にとって、そのまさに演奏されていた楽器に触れるという体験は、何事にも替えがたい貴重なものとなります。

 

特に子ども達は、みんな目をキラキラさせながら触るので、Music Touchは当社サービスの大きな特徴の一つと捉えています。

 

もちろん、演奏家さんとの最初の面談でこのお話をして、触ってもOKなものがある場合のみ、Music Touchオプションを可能にするようにしています。

 

このような、いわゆる演奏家紹介サービスや出張演奏サービスといったものは、これまでも様々な形で存在していた。

 

だが、ユーザーサイドにとっては「どんな演奏家が来るか分からない」「演奏家を選べない」「高額」といった課題があり、また演奏家にとっても「専属契約のため音楽活動が制限されるにもかかわらず仕事の紹介数が少ない」「演奏内容を自分で選べない」「仲介手数料が高額」と、気持ちよく演奏できるビジネスモデルでないものが多かった。

 

だからこそ、Musicaluではそのような情報の非対称性に起因する諸問題を解消すべく、動画といったわかりやすいコンテンツを掲載するのみならず、プラットフォームとして他ユーザーによるレビュー(評価)を公開する形で演奏家の信用スコアを見える化し、ユーザーに対する安心・安全の確保はもちろん、演奏家への「適切な顧客評価」も提供しようとしている。

 

大山氏も、特にこの部分を強調している。

 

「Musicaluで最も解決したいのは、演奏家さんが抱える課題です。

 

もともと音楽というものは、“アート領域”の営みとして『誰がなんと言おうと、自分の紡ぐ音で勝負をする!』といった側面がありました。

 

だから、顧客評価のフィードバックなんて、言ってしまえば無くても良かったんです。

 

でもそうではなく、いわゆるエンタメをはじめとする“ビジネス領域”で活動していこうとする演奏家さんもたくさんいらっしゃる中で、顧客のフィードバックをダイレクトに受け取れる仕組みが存在していませんでした。

 

Musicalでは、お客様からの声を直接聞くことができるし、それを元にした演奏メニューを自分で構築し、動画を作ってアピールすることができます。

 

同社ではこれまで、出張演奏依頼サービス「LiveDeli(ライブデリ)」を運営しており、こちらも並行して運用を続けていくという。

 

「Musicaluがお客様と演奏家さんのダイレクトプラットフォームなのに対し、LiveDeliは、間に私たち“事務局”が入ります

 

シチュエーションや演奏内容の企画、演奏家さんのアサインなど、コンシェルジュによるコーディネートが必要な方は、LiveDeliのご利用をオススメしています。

 

法人向けサービスも、現時点ではLiveDeliのみとなります。

 

なお、同社は今月、静岡県浜松市が実施する第1回「浜松市実証実験サポート事業」の採択事業者8社への選抜が決定。

 

ここで地方自治体の文化課題を掘り下げていき、中長期的には音楽イベントの地産地消、つまり各地域で地元の音楽家が演奏を通して人が繋がっていくプラットフォームを目指していくという。

 

「最終的にモノが残らないアウトプットをしていくサービスとして、少し『出張シェフ』に近い部分がありますが、それに加えて『動画を見て人が来てくれる』という顧客体験を提供しているものって、これまであまりなかったと思います。

 

だからこそ、そのような前例のない体験を提供するUX作りに、ものすごく苦労しました。

 

まずはお客様の反応を見ながら、サービス改善を繰り返していきたいと思います。

 

現在、演奏家がMusicaluに登録するには、サイト上にあるフォームから面談を経るフローとなっているが、近い将来には、登録フォームから“自己紹介動画”と“演奏動画”をアップすることで「オンラインオーディション」をするという、半自動的な流れへとアップデートされる予定だという。

 

音楽業界においては(というか実は、ほとんどの業界において)、「音楽をアップデートさせる」という掛け声の裏に、効率的に利益を生むための「企業ファースト」思考が蔓延してしまっており、肝心の演奏家さんやエンドユーザーである我々の利益は、二の次になってしまっていた印象を否めない。

 

今回リリースされたMusicaluが、自浄能力を持った健全な演奏家プラットフォームとして、地域活性化の機能も有した「音楽業界のデファクトスタンダード」になっていくことに期待したい。

 

Musicaluサイト:https://www.musicalu.online/

 

以下、リリース内容となります。

長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

プロフィール

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