2024年4月13日、いわゆる“分散型SNS”として利用者が増えている「Bluesky」のミートアップイベント(Bluesky Meetup in Tokyo)が、東京・紀尾井町にあるLINEヤフー本社で開催された(翌日には大阪・中央区にあるNTTデータSBCオフィスでもBluesky Meetup in Osaka も開催された)。
昨春に引き続き今回で2度目の開催となった当日は、Bluesky開発チームのテクニカルアドバイザーであるWhy[Jeromy Johnson]氏が来日登壇されたほか、リモートで同社CEOのJay[Jay Graber]氏も登場し、会場およびオンライン経由の参加者約200人に向けて、これまでの開発秘話や今後の展開等がざっくばらんに共有された。
また後半のパネルディスカッションでは、Why氏/Jay氏らBlueskyチームの他、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏をはじめとする“Bluesky大好き”メンバーも加わって、各々が考えるBlueskyの魅力や他SNSとの違い、持続可能なマネタイズモデルなどについて想いや意見を出し合った。
Blueskyと聞くと多くの方は「また新しいSNSが出てきた」程度に思われるかもしれないが、その真価は「ATプロトコル」と呼ばれる、分散型SNSを実現するための基盤にあると言える。本イベントのレポートを通じて、そのあたりの考えをご紹介していきたいと思う。
ソーシャルメディアのオープンで分散化された標準の構築のためにスタート
まずは「Blueskyって何なの?」という方向けに、簡単にその概要をご紹介する。
もともとはTwitter社 元CEOのジャック・ドーシー[Jack Dorsey]らが発起人となって、「ソーシャルメディアのオープンで分散化された技術の標準を開発し、そのための大規模な採用を推進」すべく、2019年に同社内のいちプロジェクトとして立ち上げたものだった。以下が当時ツイートされたドーシー氏による投稿である。
Twitter is funding a small independent team of up to five open source architects, engineers, and designers to develop an open and decentralized standard for social media. The goal is for Twitter to ultimately be a client of this standard. 🧵
— jack (@jack) December 11, 2019
これによると、初期のTwitter(現在のX)は非常にオープンで、ユーザーは同プラットフォームがSMTP(電子メールプロトコル)のような分散型インターネットの標準になる可能性を見出していたが、会社の方針として中央集権化の方向へと舵を切るようになったことで、結果としてソーシャルメディア環境を取り巻く様々な弊害への対応が難しくなってしまったとしている。SNSがもたらした弊害については、体感レベルでも認知している方が多いのではないだろうか。
そんな背景からスタートしたBlueskyプロジェクトは、2021年8月に先述のJay氏をCEOとして、Bluesky PBLLC(Public Benefit Limited Liability Company:公益目的有限責任会社)として分離独立することとなる。
I’m excited to announce that I’ll be leading @bluesky, an initiative started by @Twitter to decentralize social media. Follow updates on Twitter and at https://t.co/Sg4MxK1zwl
— Jay Graber 🦋 (@arcalinea) August 16, 2021
PBLLCとはアメリカで取り得る法人形態の一種で、端的にお伝えすると、利益追求と社会貢献をバランス良く行うことを目指す企業で採用されるタイプのものだ(州法に基づいた個別の規定あり)。つまり同社は、最初から利益の最大化を目的とするのではなく、事業活動を通じて追求すべき公益目的(定款に記載)を実現する責任も負うこと前提で設立されたということになる。そして、ここでいう公益こそが、先述のドーシー氏が記載した「ソーシャルメディアのオープンで分散化された標準」というわけだ。
なお、Blueskyの法人形態は2022年秋にPBLLCからPBC(Public Benefit Corporation:公益法人)へと変更されており、より資金調達のしやすい形で現在は運営されている。(2023年7月にはシードラウンドで800万ドルの資金調達を行っている)
ATプロトコルって何?
Bluesky社による最初のプロダクトは、ADX(Authenticated Data eXperiment)と呼ばれるプロトコルだ。「え、SNSアプリじゃないの?」と思われるかもしれないが、先述の通り、同社のミッションはあくまで「オープンで分散化された標準としての基盤」を作ることにある。この分散型SNSプロトコルの初期テスト版は、2022年10月に「AT Protocol」(ATはAuthenticated Transferの略。以下、ATプロコル)に改名され、現在はこのオープンプロトコルを中心として開発者エコシステムが形成されている状況だ。初期のBluesky社公式ページにも、「ATプロトコルは、公共コミュニケーションとソーシャル・ネットワーキングの新しい基盤であり、クリエイターにはプラットフォームからの独立を、開発者には構築の自由を、そしてユーザーには体験の選択肢を与えるものだ」と記述されている。
ATプロトコルとは「ソーシャルメディアプラットフォームを構築するための公開会話プロトコルであり、オープンソースのフレームワークだ」と、Bluesky社は公式ページで説明している。要するにソーシャルメディアを構築するための基盤というわけだが、その大きな特徴の一つとして「コンテンツのポータビリティ」が挙げられるという。
多くのソーシャルメディアは、Meta社やX社のような特定の運営企業が中央集権的にサービスを提供しており、例えばFacebookで培ったフォロワーをXにも反映する、といったプラットフォーム間でのデータの引き継ぎ等はできない。もちろん、2018年にビッグテック各社が連携してきたData Transfer Projectのような取り組みもあるが、あくまでシステムの外部連携のような仕組みでしかなく、なかなか普及にまでは至ってはいない。これに対してATプロトコルは、その基盤上で動くソーシャルメディアについては両者間のインターオペラビリティを担保し、例えばAというアプリからBというアプリへとユーザーIDやフォロワー情報のほか、各種コンテンツ等を移行できるようにするものだという。BlueskyというSNSアプリはそのリファレンス実装として構築されたものなのであって、Blueskyアプリを成長させることが唯一最大の目的というわけではないという。この点についてはBluesky社のWhy氏も、「他SNSとの違い」という質問に対して以下のように答えている。
「ATプロトコルのリファレンス実装として公式アプリ(Bluesky)を提供してはいますが、プロトコルはオープンソースになっていてデベロッパーによって自由に使うことができるようになっているので、それこそ全然違うアプリを作ることもできます。多様性を以って作れることが、他SNSとの一番顕著な違いだと思います」(Why氏)
どうやって実現させているのかということだが、ATプロトコルでは以下の公式ドキュメント掲載図にあるPDS(Personal Data Server)やRelayといったサーバーの役割が鍵になっている。PDSは、ユーザーが作成した投稿データやアカウントプロフィールなどを保管する場所として機能しており、複数あるPDSからRelayと呼ばれるサーバーに情報が集約され、さらにLabelerサーバーでのモデレーション(投稿監視)を経て、Blueskyアプリ等で表示がなされるという、ざっくりとした流れになっている。Blueskyアプリ“等”と表現したのは、ATプロトコルはオープンソースなのであって、それ以外のサードパーティツールなどでの利用も想定されているからだ。
PDSもRelayもユーザーがホスト(セルフホスト)できるように設計されており(ただし現状はPDSのみ可能だし、Relayができるようになったとしても大規模サーバー環境が必要になると想定される)、ユーザーはPDSを建てることで、自分の個人データを自分で管理できるようになる。この辺りはブロックチェーンにおけるノードの考え方に似ており、ATプロトコル公式では「フェデレーション・アーキテクチャ(連合アーキテクチャ)」と銘打って説明がなされている。ATプロトコルの詳細については、こちらのQiita記事で非常にわかりやすく図説されているので、興味のある方はこちらもご覧いただきたい。
ちなみに東京のミートアップ会場には、早くもPDSを建てているユーザーが数名ほど参加されていた。現状、PDSを建てるには開発者向けのインストーラーパックを使う必要があるが、「今後はWebのインターフェースを用意してWordpressのように簡単に建てることができるようにしたい」とWhy氏は説明する。
コンポーザブル・モデレーションとカスタムフィード
加えて、PDSやRelayだけでなく、Labelerもユーザーがホストできるという。Bluesky公式アプリ経由だと、コミュニティガイドラインに反する投稿を24時間体制で監視している同社モデレーションチームのフィルターを経た投稿のみが確認できるわけだが、独自のLabelerを構築・運用すればその限りではないという。Bluesky社はこれを「コンポーザブル・モデレーション」と表現しており、以下の哲学をもって設計されている。
- 誰でもコンテンツやアカウントに「ラベル」を定義し、適用することができる(「スパム」や「nsfw」など)。あくまで独立したサービスなので、PDSやクライアントアプリ等を実行する必要はない。
- ラベルは、(サードパーティのサービスやカスタムアルゴリズムによって)自動生成することも、(管理者やユーザー自身によって)手動で生成することもできる。
- ネットワーク内のどのサービスや個人も、最終的なユーザー体験を決定するために、これらのラベルがどのように使用されるかを選択することができる。
CEOのJay氏も、「コンポーザブル・モデレーションやカスタムフィードといった機能も、他SNSとの差別化ポイントだと思う」と、ミートアップでコメントしていた。
Blueskyのカスタムフィードとは、特定の文字が含まれる投稿をピックアップしたり、自分がいいねした投稿だけをまとめるなど、何らかのルールに沿ってフィード(タイムラインのこと)に表示する情報を取捨選択する機能のことだ。公式ブログでは「Algorithmic choice」という表現で、その考え方が紹介されている。
自分で作ったカスタムフィードはもちろん、他ユーザーが作ったものもお気に入りに入れて何個でも利用することができるので、自分が見たい情報へとすぐにアクセスできるようになっている。ちなみに、カスタムフィードの構築方法として公式からはfeed generator starter kitと呼ばれるツールが提供されているが、開発者でないと扱うのが難しいものとなっている。より簡単に構築したいという人は、サードパーティ製の「Skyfeed」などがノーコードで作れるものとして有名なようだが、条件指定が難しい等の課題もあるとのことで、より複雑な条件でのカスタムフィードを構築する方法としてこちらの記事のような方法もある。非常に長い記事だが、Blueskyのあらましを理解するのにも非常に良い内容だと感じたので、興味のある方はぜひ読んでみてもらいたい。
いずれにしても、ここまでお伝えしてきた思想をベースにしたオープンプロトコルということで、様々なエンジニアが多様なツール開発やそれにまつわる発信等に勤しんでおり、良質なデベロッパーエコシステムが醸成されている状況と言える。
Blueskyアプリの変遷、現在は540万強のユーザーが登録
Bluesky社のメインプロダクトはあくまでATプロトコルであって、Blueskyアプリは機能リファレンスとして開発・提供されているわけだが、そうは言っても同社の哲学をふんだんに反映したプロダクトでもあるわけで、「分散型カルチャーを体現するSNS」としてユーザーも目を見張る勢いで増えていった。ということで、ミートアップ序盤では、初回ミートアップの運営メンバーの一人であるShino3氏から、ここ1年の振り返りが紹介された。概要としては以下の通りだ。
- 2023年4月20日、公式Androidアプリが提供開始(iOS版は同年3月にリリース済)
- 2023年5月30日、ユーザー数が10万人を突破
- 2023年8月5日、ユーザー数が50万人を突破
- 2023年9月13日、ユーザー数が100万人を突破
- 2023年11月13日、ユーザー数が200万人を突破
- 2023年12月21日、新しいロゴに変更
- 2024年1月8日、ユーザー数が300万人を突破
- 2024年2月6日、招待コードを廃止
- 2024年2月8日、ユーザー数が400万人を突破
- 2024年2月23日、ユーザー数が500万人を突破
これを見ていると、ユーザー数が大きく伸びたきっかけとしては、やはりTwitterの動向が大きく相関していることがわかる。2023年7月に、TwitterのAPI制限措置が発表され、また同月にサービス名がTwitterからXへと変更されたことで同サービスからの離反とBlueskyへの流入をもたらしたのか、結果として翌月にユーザー数が50万人を突破している。また、2024年2月6日の招待コードの廃止も大きかったと言える。もともとBlueskyでは招待コードによるクローズドベータ版の運用とされていたのだが、同日を境に誰でも利用できるようにオープンされたことから、招待コード廃止からわずか2日で400万人の壁を突破している。
ミートアップ当日の情報としては上画像にある通り。ユーザー数としては546万人強となっている。画面下部にある青い棒グラフはアクティブユーザー数の変遷なのだが、招待コード廃止日に一気に伸びていることがお分かりいただけるだろう。
ちなみに右下に書いてある「四谷ラボ」とは、いつでも誰でも自由に参加して研究・交流・発信できる未来志向のオープンイノベーションラボで、今回のミートアップの企画にも携わっている団体なのだが、日本でおそらく最初のBluesky同人誌である『Hello Nostr! Yo Bluesky! 分散SNSの最前線』(書籍のLPはこちら)を出しており、今年5月25日・26日に予定されている技術書典16には第二弾(改訂版?)がお披露目される予定だという。Shino3氏はそのプロデューサー兼ライターとして携わっており、ミートアップ当日は手元に残っていた最後の1冊をWhy氏にプレゼントするという一幕もあった。
ビジネスモデルは今後どうするの?どうやってユーザー獲得していく?
後半のパネルディスカッションでは、集客やビジネスモデルといった、SNSサービスの拡張に関するトピックがメインに据えられた。
他SNSからユーザーを呼び込む施策等を問われたCEOのJay氏は「カスタムフィードはキラーコンテンツになり得るし、DM機能の実装も近くリリースしたい」と説明し、Why氏は「既存ユーザーが新規ユーザーを招待する時の体験の改善が最優先だ」とコメントし、直近の機能強化としてはオンボーディング周りになることを明かした。また別の観点として、開発者の山貂氏による「ベータをちゃんと終わらせるのは一つあると思う」というコメントも面白かった。つまり、クローズドベータ版から始まって2024年2月6日に招待制コードが廃止されて実質的なオープン状態にはなったが、ベータが明けたという発表は実のところなく、現状どういうステータスなのかがはっきりしないことから利用を躊躇している人も多いのではないかという指摘である。これに対してJay氏は「公式にベータのステージは抜けた」と返答し、会場からはこの改めてのアナウンスに対して拍手が送られた。
また持続可能なマネタイズ案について、基本的にJay氏もWhy氏も現時点では安易な広告モデルへの依存は想定していないようで、ハンドルネームに独自ドメインを割り当てる機能に付随したドメイン販売サービスの展開をはじめ、今後はカスタムフィードやモデレーションサービスのマーケットプレイスなど、Blueskyエコシステムに関わるユーザーに利益が還元されるようなサブスクリプションモデルの検討も進めているという。
「少し前まではクローズドベータ版の運用などで収益化を考える段階ではなかったのですが、今年からしっかりと考えていきます」(Jay氏)
Blueskyのマネタイズについて徳力氏は「Twitterが証明したこととして、全員が繋がっちゃうとケンカが起きる。コミュニティを適切に区切ることによってそれぞれが楽しく過ごせる空間があることが前提で」と前置きをした上で「サブスク的な仕組みがあって、PDSとかにもお金が流れる仕組みがあったらいいな」とコメントする。リモート登壇のNight Haven氏も、「ユーザーが増えていくと、Twitterのように個人とネットワークの距離が大きくなってしまうので、中間領域を作るのが必要じゃないかなとずっと考えている。オープンだけどクローズ、クローズだけどオープンみたいなものを今のTwitterライクなUIを追求していく中で機能として作ってほしい。そこにマネタイズの可能性もあるのではないかと感じている」と考えを述べた。
またNight Haven氏は「ATプロトコルの未来」というトピックへの回答において以下のようにコメントしていたのも印象的だった。
「Blueskyソーシャルというサービスに限って言うと、Twitterライクなユーザーインターフェースを踏襲しているので、それをぜひ破壊してほしいと考えています。より人間の物理空間でのコミュニケーションに対応するような何かが生まれたらいいなと思っていて、例えばフォローというシステムを表示させなくするとか。あと、今いろんなカスタムフィードがありますが、未だにFollowingタイムラインが特権的な位置にあって、非表示にしたり移動させたりができなくなっているので、それをまずは自由に出したり消したりできるようにすることを、エンドユーザーとして望んでいます」(Night Haven氏)
なお、会場からの質問も途切れることがなく、30分以上にわたって挙手に対するBlueskyチームからの回答がなされた。中でも面白かったのが、開発者の方から「BlueskyのフロントエンドではJavascriptやReact Native等を使っていると思うが、そこで苦労したエピソードなどがあれば知りたい」という質問に対するWhy氏の回答だ。
「そうですね、React Nativeは非常に難しいソフトウェアで、様々なデバイスに出荷できる反面、バグも無限にあります。Androidにだけ存在するバグもあれば、iOSにだけ存在するバグもあります。バグによっては、新しいスマホを購入して、バグがあるかどうか確認する必要もあります。結局、FacebookでReactに携わっていた人を雇うことになりました。彼が参加した時、彼は『全部のアプリを捨てたい』と考えていたんですよ。時には非常にイライラすることもありますが、複数のアプリを個別に作るよりも間違いなく簡単なので、そこは本当に良いことだとは感じています」(Why氏)
まだまだコミュニティ全体としては偏りがある
各種コンテンツの最後は交流会、ということで、ミートアップ参加者と登壇者、それからミートアップの運営スタッフ(全員有志)が一緒になって、会場後方で中華料理を食べながらのBlueskyトークに花が咲いていた。
参加者の中には、20年ほどTwitterで活動していたが、ここ一年の仕様変更に伴う運営企業や参加ユーザーの姿勢等に色々と考えることがあって、2023年8月からBlueskyへと活動の軸を移したクリエイターの方もいらっしゃった。主に特に最後の1年ほどは悪意のあるアカウントの投稿等が目につくようになっていったと言い、安全に自身の発信ができる状態ではなくなってきたと判断し、招待コードをもらったことをきっかけにBlueskyを使いはじめたという。
「本当は今でも戻ってほしい、できれば使っていた当初のTwitterに戻ってほしいとは思っているのですが、現状だとまぁ難しいと思うので、今はBlueskyだけで発言をしています。当初はここまで大きくなるメディアだとは思っていなかったのですが、ミートアップでいろんな方と交流して、今後の展開をディスカッションするようなレベルにまでなっていることを今日初めて知りました。TwitterやFacebookなどは一方的に機能を提供するような形だと思いますが、開発者とユーザーが熱量を交換し合いながら建設的な話をしていくということで、すごく感銘を受けました」
※ご本人のより率直・詳細な感想についてはこちら
なお1年前に開催された第1回目ミートアップでは運営スタッフの一人として、第2回目の今回は挙手して運営長としてミートアップを牽引したつるるん氏は、多様な属性の参加者を見ながら以下のようにコメントする。
「今は割と開発者やデザイナーが中心といった感じで、まだまだコミュニティ全体としては偏りがあると思うのですが、本日会場にいらっしゃってくれた方々のように、それこそクリエイターや一般ユーザーまで幅広い方々に広まっていって、Blueskyがより一般化していってくれたらいいなと感じています」(つるるん氏)
「日本のみなさんのとても素晴らしい仕事ぶりを称賛させてください」
筆者が個人的に印象的だったこととして、Blueskyチームから要所要所で「日本のデベロッパーは素晴らしい」という趣旨の発言がなされたことだったので、最後にご紹介しておきたい。
イベントの冒頭でJay氏は「日本では公式が対応する前から、独自のクライアントやアプリ、その他プロトコルに接続する様々な方法を開発する人たちがいて、オープンソースエコシステムに対して非常に熱心に取り組んでいた」と発言し、またWhy氏もセッション終了後のメディアぶら下がりで以下のようにコメントしていた。
「日本人開発者の偉業として真っ先に思い浮かんだのは、翻訳機能ですね。今でこそポスト画面からGoogle翻訳に飛ばすリンク機能をつけていますが、それよりも全然前の時期から、サードパーティ製のビルトインの翻訳機能を作っていたりしていて、完敗だと思いました。あとハッシュタグについても、公式で対応するずっと前から対応するなどしていて、こちらも実に印象的でした」(Why氏)
さらに、Bluesky開発チームのPaul[Paul Frazee]氏も、ビデオレターを通じて以下のように発言している。
「ここで少し時間をいただいて、みなさんのとても素晴らしい仕事ぶりを称賛させてください。まずカトウシンヤさんによるDart SDKは素晴らしい出来栄えです。ドキュメンテーションサイトも素晴らしく、我々はとても感銘を受けました。次はATプロトコルのRust実装であるATriumですね。ATプロトコルの完全な実装を目にするのは嬉しいことです。これはsugyanさんの成果ですね。これにはとても興奮しています。TOKIMEKI、Klearsky、Ucho-tenといった素晴らしいクライアントも開発されています。SNSを違った方法で実現しようとする皆さんの姿を見るのは本当に嬉しいことです。皆さん、本当にありがとうございました」(Paul氏)
日本の会場でミートアップを開催しているのでこういった発言はリップサービスとして出てきたと言われたらそれまでかもしれないが、そうは言っても第1回目のBlueskyミートアップが日本という土地で開催されたこと、そして2年連続でテクニカルアドバイザーのWhy氏が来日してミートアップに参加してくれていることなどを踏まえると、日本の開発者へのリスペクトは本物であると思うので、非エンジニアながら我が国の開発者エコシステムに大いに誇りを持った次第だ。
なお、Blueskyはまだまだ進化の途中で、たとえばミートアップが開催された2024年4月13日(現地時間では4月12日)には、もともと禁止していた国家元首の利用を解禁。さっそく、ブラジルの大統領がBlueskyアカウントを開設し、それに併せてブラジル国民も次々とユーザー登録を進めているという。SNSとして、影響力が大きいユーザーを受け入れる準備が整ったということだろう。
President @LulaOficial of Brazil has just joined Bluesky. Bem-vindo! 🇧🇷
— bluesky (@bluesky) April 12, 2024
Sign up for Bluesky (no invite code required): https://t.co/exCdOOYprz pic.twitter.com/9RFbbPBgP1
最近「インターネットがつまらなくなった」という声をよく耳にするようになったが、厳密には「SNS/ソーシャルメディアがつまらなくなったのであって、インターネットそのものはまだまだ面白いのではないか」という話を友人とした。「インターネット黎明期の思想を体現するようなプラットフォーム」のあり方については、クリプトの取材をしている際によく感じていたのだが、今回のBlueskyミートアップでも大いに感じることができた次第だ。なんだか、ソーシャルメディアの明るい未来を垣間見ることのできる時間だったし、そこに向けたポジティブなエネルギーをミートアップ会場全体、及び配信YouTubeコメント欄やミートアップ専用Discordから受け取った気がした。
※Bluesky社の日本語での動向については今のところGIGAZINEが最も細かく追っていると感じたので、より細かい部分で気になる方は、公式ブログかこちらをご覧いただくと良いだろう。
なお、大阪開催(Bluesky Meetup in Osaka Vol.2)の内容については、GIGAZINEの以下の2記事で詳しくレポートされているので、興味のある方はこちらも併せてご覧いただきたい。
当日のセッションフル動画はこちら
ミートアップ当日の各セッションの様子については以下の動画でご確認ください。(上段:東京開催、下段:大阪開催)
取材/文/撮影:長岡武司