キュレートポイント
ITジャーナリスト・湯川鶴章氏が編集長を務めるWebメディア『AI新聞』より。
本記事は、昨年11月に米シリコンバレー・パロアルトで開催されたテクノロジーカンファレンス「TransTech Conference」のレポートシリーズです。(TransTechについて、当メディアで取材した記事はこちら)
今回のテーマは「手で触れることのデジタル再現」です。
人は誰しも、誰かに手で触れられると安心するもの。「安全だからだいじょうぶ。安心して」というメッセージを受け取り、心が落ち着きます。ですから、例えば子どものうちから体をさすったりヨシヨシしたりと、たくさん手で触れてあげることが「豊かな心」を育む上で重要だ、と言われていたりします。
そんな、まるで手をつないだような安心感を脳に送るウェアラブル機器が、「Apollo」という腕時計型デバイスです。
手で触れるという、ユマニチュードでも重要視されている行為をデジタル再現することは、多くの方の孤独感や孤立感への対処法になりうるという点でLoveTechだと感じ、本記事をキュレートしました。
一体どのような仕組みと思想で動作しているのか、ぜひご覧ください。
なお、記事中に埋め込んだ動画は、TransTech Conference 2019の該当セッションフル動画となります。前編英語のみの内容となりますが、興味のある方はぜひ、こちらもご覧ください。
本記事は「AI新聞」のキュレーション記事で、元記事の一部転載版となります。
手で触れられる。それだけで人の心は落ち着くものだ。腕時計型デバイスのApolloは、手首への振動を発信、まるで手をつないだような安心感を脳に送るウェアラブル機器だ。開発者のDavid Rabin博士によると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や不安神経症などの精神疾患の治療に有効なだけではなく、瞑想の質を深めるのにも効果があるという。同博士は「(このデバイスでユーザーに)どんな状況においても心静かに対応できる仏教の高僧のようになってもらいたい」と語っている。
瞑想や呼吸法よりも簡単
心を落ち着かせるには、呼吸法や瞑想が効果的だと言われる。欧米ではこのところ、ストレス対処法として呼吸法や瞑想が注目を集めているわけだが、ただ「(高僧のようにどんな状況でも心静かに対応できるようになるには)何千時間もの訓練が必要」と同博士は指摘する。
一方で相手を安心させるために人類が何十万年も培ってきた方法がある。手を触れる、という方法だ。人類は、手を触れることで「安全だからだいじょうぶ。安心して」というメッセージを相手に伝えてきた。そこで同博士は、手で触れられているときに「安心して」というメッセージを脳が受け取るのと同様の仕組みを、ウエアラブル機器からの振動で再現。実験の結果、ストレス軽減、瞑想を深めるのに効果があったと言う。
手に触れるという刺激と同様の結果を得るために同博士が採用したのは、TVS(Transcutaneous Vibroacoustic Stimulation、経皮的振動音響刺激)と呼ばれる、皮膚の上からの振動による刺激。皮膚への波のような振動の刺激は、神経を伝わって感情や自律神経を司る脳の部位に「安心して」というメッセージを届けるのだという。
神経で同博士が最も注目するのは、Lamina 1と呼ばれる脊髄後角の1つの層。皮膚への振動は、Lamina 1を通じて自律神経に直接信号を伝達するほか、脳幹の中の孤束核と呼ばれる場所に信号を送っている。孤束核は自律神経のハブのような存在だという。同博士は「Lamina 1は感情伝達の中核的な経路。Lamina 1をターゲットにすることで自律神経や呼吸、心拍変動に影響を与えたり、判断力を高めたり、感情をコントロールできるという研究結果の文献が多数存在する」と言う。
こうした文献をベースに、皮膚への振動がストレス軽減に役立つのではないかといいう仮説で実験を続けてきたという。
つづきは以下よりご覧ください。
また、元記事執筆者である湯川鶴章氏が主宰する、2歩先の未来を読む少人数制勉強会「TheWave湯川塾」の詳細は以下となります。