記事の要点
・オリジナルのOSやスマホ「SUNBLAZE Phone」等を開発するアメグミのインド法人・Amegumi Indiaが、インド州政府公認のフィンテック企業「Transaction Analysts Pvt. Ltd」とNDA締結の上、業務提携したことを発表。
・Transaction Analystsが提供するのは、一般消費者向けデジタルウォレットと銀行向けバンキングアプリケーション。中でも前者のいちサービスである「T-Wallet」が、テランガナ州政府公認のデジタルウォレットアプリとなっており、これを使うことで州域住民は官民両サービスのデジタル決済を簡単に行うことができる。
・アメグミの「安くて」「動作安定性が高く」「機能制限をかけられる」オリジナルスマートフォンを通じたスマホ普及率向上によって、テランガナ州政府による州域住民の情報把握が可能になり、行政サービスの浸透、ひいては「一人も取り残さない公共サービス」の提供を推進することが可能に。
LoveTechポイント
India Stackは今や世界中から注目される国家DXプロジェクトであり、そのビジョンはまさに「全員最低限幸福」というアメグミのビジョンと通じます。
人生の可能性を広げる手助けを、ハードウェア提供の立場から公的アプローチで進めている点が、非常にLoveTechだと感じます。
編集部コメント
オリジナルのOSやスマホ「SUNBLAZE Phone」等を開発するアメグミのインド法人・Amegumi Indiaが、インド州政府公認のフィンテック企業「Transaction Analysts Pvt. Ltd」とNDA締結の上、業務提携したことを発表した。
アメグミといえば、今月頭に日本での格安業務用スマホの発売を開始した、我が国でも珍しい筐体等のハードメーカー・スタートアップである。
[clink url=”https://lovetech-media.com/news/family/20200609_01sunblazephone/”]
そんな同社がインド法人を設立したのは今年4月。そう、まさにインド全土が新型コロナウイルス感染症の影響でロックダウン中(※)のことであった。
※インドではモディ首相が、3月25日より21日間のインド全土ロックダウンを宣言。その後ロックダウン期間は延長されており、記事執筆時点で、封じ込めゾーンにおけるロックダウンは6月30日まで延長、それ以外の地域においての段階的ロックダウン解除にかかる通達およびガイドラインを発出している(JETRO:ビジネス短信より)
それから僅か2ヶ月。
インドで「第二のシリコンバレー」と呼ばれるテランガナ州(Telangana)の政府公認で使用されるアプリの開発企業と業務提携を完了させるとは、素晴らしいスピード感である。
Transaction Analystsが提供するのは、一般消費者向けデジタルウォレットと銀行向けバンキングアプリケーション。
中でも前者のいちサービスである「T-Wallet」が、テランガナ州政府公認のデジタルウォレットアプリとなっており、これを使うことで州域住民は官民両サービスのデジタル決済を簡単に行うことができる。
具体的には、送金、銀行振込、モバイルリチャージ、メトロカードリチャージ、電気代支払い、水道代支払い、固定資産税支払い、旅行チケット予約、オンラインリチャージおよびその他のデジタル請求書支払いといった具合だ。
画像提供:Transaction Analysts社
同州は本アプリを通じて、インド版マイナンバーとも言える「Aadhaar(アドハー)」(※)に州域住民を登録させ、一元管理・行政サービスの浸透を可能にする試みを推進しているわけだ。
※2009年にインドでスタートした公共のデジタルトランスフォーメーション基盤ともなる「個人認証」のために開発されたIDシステム。顔面・虹彩・指紋の3データによって当人を紐つける仕様となっている。このような「本人不在レイヤー(Presenceless layer)」のほか、「紙不在レイヤー(Paperless layer)」、「現金不在レイヤー(Cashless layer)」、「同意レイヤー(Consent layer)」の4レイヤーで構成される国家DXの総称が「インディア・スタック(India Stack)」と呼ばれている。詳細は以下記事もご参照いただきたい
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190506_aisum10/”]
そこで課題となるのが「スマホの普及率」。
マッキンゼー調査によると、インドにおける2018年度のスマホ普及率は26%程度であり、70%以上の人がスマホアプリの使用が不可能な状況だという。2014年における普及率が5.4%だったことを考えると、4年間で5倍程度普及しているわけだが、俯瞰して見ると決して高い割合とはいえないだろう。
出典:Digital India(McKinsey Report)p9(100人中26.2人がスマホユーザー)
普及していない原因としては金銭的な理由の他に、「スマホ=エンタメ(ゲーム等)」というイメージもあるという。生活必需品という認識が低いことから、公共サービスへのアクセスや各種情報収集など、その利便性に気づけていない層が多いわけだ。
スマホが広く行き渡らないことには、デジタル基盤としてのネットワーク効果も高まらない。
そんな背景から、「安くて」「動作安定性が高く」「機能制限をかけられる」オリジナルスマートフォンを開発しているアメグミに白羽の矢が立ったというわけだ。
特に三番目の「機能制限がかけられる」ということは、裏を返すと、エンタメ機能を持たせずに目的を絞って使用できるようになるということ。
ユーザーは「何のためにスマートフォンを活用するのか」が明確に把握できるようになり、一方で行政は国民の情報を把握したり、特定のアプリを使用してもらいやすくなる。
つまり今回の提携によって、州政府による州域住民の情報把握が可能になり、行政サービスの浸透、ひいては「一人も取り残さない公共サービス」の提供を推進することができるようになるというわけだ。
[clink url=”https://lovetech-media.com/interview/20200102sunblazephone1/”]
これまで同社は実証実験として新興各国での取り組みを展開してきたが、今回のようなガバメント公認企業との正式業務提携発表は、公には初めてである。
「全員最低限幸福」というアメグミのビジョン達成に向け、本業務提携は大きな一歩となるだろう。
以下、リリース内容となります。