記事の要点
・2021年5月31日に、キャシー松井氏、村上由美子氏、関美和氏をゼネラル・パートナーとするESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタル・ファンド「MPower Partners Fund L.P.」が設立。
・社会的課題をテクノロジーの力で解決しようとする起業家を支援し、ESGを戦略に組み入れることで持続的な成長を促すことを目的としている。
・ファンド総額は1億5000万ドルを予定しており、ヘルスケア/ウェルネス、フィンテック、次世代の働き方/教育、次世代の消費、環境/サステナビリティを重点投資分野と考え、成長ステージにある日本のスタートアップ企業、および一部海外のアーリーステージのスタートアップ企業に投資を行う予定。
LoveTechポイント
日本において比較的強みであるE(環境)を生かしながら、資本生産性の改善というガバナンスの本質を追求し、ベンチャー生態系をより持続的に、そしてよりグローバルに昇華させていく。
そんな未来に向けた大きな一歩だと感じるLoveTechなニュースです。
編集部コメント
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの観点を考慮した「ESG投資」。機関投資家を中心に、グローバル規模で広がるサステナビリティを前提とする投資アジェンダである。
機関投資家ときくと、オルタナティブ運用をベースとするヘッジファンドや、一般的にアクティビストと呼ばれる方々をイメージする方が多いと思うが、ここでの主たるレイヤーは、年金基金や保険会社といった超長期を前提に大きな資産を運用する組織と捉えて良いだろう。
ESG投資の機運は、2006年4月にコフィー・アナン氏(当時の国際連合事務総長)によって発足された「国連責任投資原則(PRI)」より本格的にスタートしたもので、2018年5月時点で世界の1965の機関(資産運用規模約70兆ドル)が署名、2021年時点で、今後20年間でのESGファンドへの投資総額は15~20兆ドル増加、現在のS&P500の規模に匹敵すると予想もされている。
ちなみに日本においては、PRI発足時点では大きく遅れをとっていたものの、世界最大の機関投資家ともいえる「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が2015年に署名したことを受けて、ESG投資の機運は確実に高まっている状況だ。
そんななか、2021年5月末に、新たなるESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタル・ファンド「MPower Partners Fund L.P.」の設立が発表された。
社会的課題をテクノロジーの力で解決しようとする起業家を支援し、ESGを戦略に組み入れることで持続的な成長を促すことを目的に発足されたという。
投資チームとしては、ゴールドマン・サックス証券会社、元日本副会長およびチーフ日本株ストラテジストであるキャシー松井氏や、OECD(経済協力開発機構)東京センター元所長である村上由美子氏、クレイ・フィンレイ投資顧問元東京支店長の関美和氏が、それぞれセネラル・パートナーとして名を連ねる。
《投資チーム員》
- キャシー松井(ゼネラル・パートナー)
- 村上由美子(ゼネラル・パートナー)
- 関美和(ゼネラル・パートナー)
- 鈴木絵里子(マネージング・ディレクター)
ESGという概念が注目を浴びるはるか以前から、様々な立場でダイバーシティー、環境、コーポレートガバナンスの重要性を社会に問い、民間企業や政府に対してアドバイスを行なってきたリーダーたちが、本格的に持続的なスタートアップエコシステム構築へと参入してきたわけだ。
そんなMPower Partnersの考えに、日本を代表する金融機関もリミテッド・パートナーとして参画。
ファンド総額は1億5000万ドルを予定しており、ヘルスケア/ウェルネス、フィンテック、次世代の働き方/教育、次世代の消費、環境/サステナビリティを重点投資分野と考え、成長ステージにある日本のスタートアップ企業、および一部海外のアーリーステージのスタートアップ企業に投資を行う予定だという。
当メディアでは先日、イベントレポートを通じてMPower Partnersの投資チーム員となるキャシー松井氏と村上由美子氏のセッションを紹介している。
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20200201wwfjapan1/”]
上記セッションの中で松井氏は、「S(Social:社会)」と「G(Governance:ガバナンス)」については日本はランクが低くなっていますが、実は「E(Environment:環境)」については比較的高い」とコメントしている。
上記で示された強みを生かしながら、資本生産性の改善というガバナンスの本質を追求し、ベンチャー生態系をより持続的に、そしてよりグローバルへと昇華させていく。
そんな未来に向けた大きな一歩だと感じるニュースだ。