記事の要点
・埼玉県深谷市と株式会社トラストバンクが、自治体専用ビジネスチャット「LoGoチャット」の導入効果に関する実証実験の試算結果を発表。職員1人あたり1日平均11分、年間44時間の削減効果を試算。
・深谷市では全庁導入を進めており、全職員(会計年度任用職員含む)1,142名が活用した場合、年間(240日) 50,248時間の削減効果を試算。これを金額換算すると、年間で約2億99万2,000円相当の人件費の削減効果が試算された。
・「庁内・課内の情報共有」「迅速な意思決定支援」「他の自治体とつながるコミュニティ」「地域内事業者や関連機関との連絡」という観点で、新型コロナウイルス感染症対応の様々な活用事例が、深谷市のみならず、全国のLoGoチャットユーザーからも寄せられている。
LoveTechポイント
COVID-19パンデミックのような有事の時こそ、様々な組織体において、いかにコミュニケーションコストを下げることができるかがカギとなります。
インターネットを利用したリモートワークが難しい自治体職員でも、LoGoチャットを使うことで自宅でもLGWAN環境に接続できるので、様々なケースに迅速に対応できる仕様となっている点が、非常にLoveTechだと感じます。
編集部コメント
2019年11月、ふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』等を企画・運営する株式会社トラストバンクから、自治体専用ビジネスチャットツール「LoGoチャット」が発表された。
セキュリティレベルが高いLGWAN環境(行政専用回線の総合行政ネットワーク)で使えるのみならず、インターネットからもつなげることができ、且つ庁内だけでなく自治体間でも使えることから、自治体の抜本的な業務改善&コミュニケーションツールとして大いに可能性を感じ、当メディアでも取材させていただいた。
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それから約5ヶ月。
2020年4月20日時点で、導入自治体数(関連団体含む)が241自治体、利用アカウント数が145,770アカウントになったと発表された。半年にも満たない期間で、全自治体の1割近くが導入を決定したのは驚きである。
また、いち早くLoGoチャットの導入を意思決定した埼玉県深谷市からは、その導入効果に関する実証実験の試算結果も併せて発表がなされた。
深谷市ではこれまで、日程調整や会議に多くの時間がかかるなど、リアルタイムかつ円滑なコミュニケーションに課題を抱えていたことから、2019年9月にLoGoチャットの全庁導入を決定。全職員にアカウントを付与し、業務時間削減効果の実証実験に取り組んできた。
今回は、LoGoチャットを使う職員49名を調査モデルとして抽出。従来の電話やメール等の方法とLoGoチャットを使った場合の平均時間を2019年9月~2020年3月の期間で比較算出したところ、業務上のコミュニケーションにかかる時間を【1人あたり1日平均11分削減】できたことが分かった。
具体的には日程調整で54%減、電話対応で約40%減、庁内会議で32%減などの効果が試算されたという。
<業務時間や人件費の削減効果が見られた業務例>
- 「日程調整」:54%減(個別にメールでしていた予定調整を、グループチャットの日程調整の機能を活用)
- 「電話」:発信39%減、着信42%減、取り次ぎ30%減(電話でしていた庁内のやり取りをチャットで対応)
- 「メール」:送受信ともに30%減(メールでしていたやり取りをチャットで対応)
- 「庁内会議」:会議資料を事前にチャットで共有することで紙資料の印刷を省力することで32%減 等
よって、年間(勤務日数240日)では、44時間削減できることになる。
深谷市で働く職員は1,142人いらっしゃるので、全職員がLoGoチャットを活用するとなると、年間50,248時間、人件費約2億99万2,000円の削減効果に相当するというから驚きだ。
(計算式)
・職員1人の1日あたり平均削減時間:11分
・職員1人の年間削減業務時間:11分×240日=44時間
・全職員の年間削減業務時間:44時間×1,142人=50,248時間
・年間人件費削減額: 50,248時間×4,000円=2億99万2,000円
これに対し、深谷市でLoGoチャット導入を推進している齋藤理栄氏(企画財政部 ICT推進室)は、以下のように述べている。
「4月の人事異動後、スマートフォンアプリを搭載する利用端末申請も増加傾向です。
チャットの便利さを知っている職員が異動先で新しい活用方法を発見するなど、さらなる削減効果が期待できます。
現在、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、対面でのコミュニケーションが難しくなっていますが、職員間だけでなく他自治体や関係事業者と離れた場所にいてもグループでのコミュニケーションが取れるので大変助かっています。
また、各自治体でバラバラにやっていた自治体業務について、他自治体とチャットで意見交換ができるので、先進自治体のノウハウを参考に住民サービスの向上を短期間で実現できるようになると感じています。」
そう、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染拡大に伴い、自治体職員の業務はこれまで以上に多岐に渡ることになり、また非定型業務も増えている。先日政府より発表された、全国民への一律10万円が給付される「特別定額給付金」は、その最たる例と言えるだろう。
そんな中、他自治体での対応内容を気軽にチャットベースで共有・相談できるプラットフォームは、おそらくLoGoチャットが初めてなのではないだろうか。
実際の運用画面を確認させてもらったところ、COVID-19関連の対応については「パンデミック対応」というトークルームで、積極的な意見交換がなされていた。
積極的な意見交換がなされるLoGoチャットユーザーグループ画面(PC版)
(画像提供:株式会社トラストバンク)
もちろんCOVID-19対応についてはこれだけではなく、以下のように「庁内・課内の情報共有」「迅速な意思決定支援」「他の自治体とつながるコミュニティ」「地域内事業者や関連機関との連絡」という観点で、様々な活用事例が全国のLoGoチャットユーザーより寄せられている。
(画像提供:株式会社トラストバンク)
刻一刻と状況が変化する中、市区町村としては統一した意見を全職員と共有し、一律の回答を住民にする必要がある。だからこそ、迅速に重要事項を共有できる点も、チャットツールならではのメリットと言えるだろう。
なお、今回の実証実験結果をベースに本格的に全庁導入を進める深谷市では、しっかりと全職員に使ってもらえるよう、チャット文化醸成に向けて地道な庁内PR活動を進めていくという。具体的には、全庁向け調査を可能な限りLoGoチャットで回答を依頼したり、定期的に利用者アンケートを行って利用方法がわからない職員に向けてピンポイントで説明や課題解決案を提示する等を実施予定だ。
現在、LoGoチャットの全庁導入を進めている自治体は40近くにものぼる。また市区町村だけではなく、県庁での活用も増えているという。深谷市による先行事例が他自治体のDXに繋がり、県庁から県域の市区町村へと導入促進が進むことで、LoGoチャットそのもののネットワーク効果も高まることが期待される。
意思決定プロセスや共有など組織内のコミュニケーションコストの高さや、他自治体の事例確認等に課題を感じている自治体担当者は、試しにトライアル導入から始めてみてはいかがでしょう。
善は急げだ。
以下、リリース内容となります。