「契約における法務格差をなくしたい」
そんなビジョンを掲げ、2017年に創業されたLegalTech(法律×テクノロジー)企業がGVA TECH株式会社だ。
人工知能とクラウド型ソフトによって契約書レビューをより正確に早く安価で行える「AI-CON」や、仕事で使える書式や契約書のドラフトを無料でダウンロードして利用できる「AI-CONドラフト」などの仕組みを開発・提供している。
この度、このGVA TECH社がオフィス移転したという。しかも、一棟丸々借りられており、命名権も与えられたことから、ビル名を「GVAフレンズ(ジーヴァフレンズ)」にしたという。
LoveTechなにおいを感じ、3月25日に催されたオフィス移転パーティーにお邪魔させていただいた。
法務格差とは
2018年11月15日、TechCrunch Tokyo 2018 Startup Battle でピッチされるGVA TECH株式会社 代表取締役CEO / 弁護士 山本俊氏
そもそも、法務格差とは何なのか。
GVA TECH代表取締役CEOであり弁護士でもある山本俊(やまもとしゅん)氏は、これまで1,000社を超えるスタートアップ企業へのリーガルサポートを行ってきた。
契約書には様々なリスクが潜んでいる可能性があるが、すべての管理業務担当者が法律のスペシャリストというわけではなく、また多くのスタートアップにはそもそも法務担当者が設置されていないので、思わぬ契約トラブルに発展することが多いという。
例えば大企業との契約。スタートアップと違い、大企業には”法務力”があるので、スタートアップにとって不利な契約を結ぶ事例が散見されるという。せっかくの世界を変える可能性のある魅力的な事業が、法務を苦手とするためにストップしてしまうのは非常にもったいない。契約をより簡単で身近なものへと変えるべきだと感じていたことが、山本氏のGVA TECH立ち上げにつながったという。
確かに、会計領域ではマネーフォワードやfreeeのようなクラウド会計が発展してきているが、契約書の分野ではWordファイルもしくは紙文化が主流で未だにクラウド化が進んでおらず、クオリティ、スピード、コストのバランスがとれないという問題を抱えている。
3つのAI-CON(アイコン)サービス
そんな背景から、GVA TECHが提供するサービスは3種類ある。
AI-CON(アイコン)
契約書業務の中でも、法律知識が必要とされる契約書ドラフト作成から交渉までのプロセスを、弁護士の知見を学習したAI(人工知能)がサポートしてくれる。
具体的な操作は非常に簡単だ。
WordやPDFで作成した契約書ファイルをAI-CONにアップロードすることで、当該契約類型に必須の条項のチェックや自社に不利な条項に関する判定がなされて、リスクが見える化された状態でフィードバックされる。
リスクが大きい条文については、修正条文案を確認することもできる。
2019年3月26日現在で条項リスク判定対応している契約書は以下の通りだ。法務知識が豊富でなく、工数もかけられないスタートアップにとっては非常に助かるサービスとなっている。
売買契約※、秘密保持契約(NDA)、人材紹介契約、職業紹介契約、業務委託契約、コンテンツ制作契約、原稿作成委託契約、動画制作委託契約、映像制作委託契約、SaaS利用規約、ライセンス契約、使用許諾契約、販売店契約、販売代理店契約、販売取次店契約、サイト制作契約、アプリ開発契約、システム開発契約、ソフトウェア制作委託契約、アプリ開発委託契約、ウェブサイト制作委託契約、システム保守(運用)契約、ゲーム運営委託契約、顧問契約、アドバイザリー契約、コンサルティング契約、広告代理店契約、広告運用契約、広告配信委託契約、製造委託契約、賃貸借契約(事業用)、投資契約
※不動産売買契約は含まれておらず
AI-CONドラフト
スタートアップビジネスに役立つ契約書のドラフト版を無料ダウンロードすることができる。スタートアップ法務の経験が豊富なGVA法律事務所の弁護士が作成した契約書テンプレートであり、それぞれの立場や簡易・詳細といった利用場面に応じて、各類型ごとに原則3種類のデータを提供してくれている。
実はLoveTechMediaも「秘密保持契約(NDA)」と「コンサルティング・アドバイザリー契約」のドラフトデータを使わせていただいたことがある。例えば「コンサルティング・アドバイザリー契約」では、委託者有利型・中間型・受託者有利型という3種類のテンプレートが用意されているので、状況に応じて使い分けできるという点で、非常に助かったことを覚えている。
AI-CON登記
必要書類をオンライン上にアップロードし、最低限の入力を行うだけで、法人登記への必要書類を自動作成してくれる。AI-CON登記で自動作成した書類に押印し、法務局に送付するだけで登記手続が完了する。
スタートアップの成長過程において、増資や本店移転などの登記事項は頻繁に発生するが、煩雑な作業を伴う登記手続は、ビジネスのスピードを妨げる要因となっている。また、司法書士に依頼すると数万円程度の費用が生じるため、コスト面でも負担となっていた。
法律知識がなくとも自由に事業をスタートできる未来実現のために、リリースされたサービスである。
新社屋「GVAフレンズ」
GVA TECH新社屋はJR代々木駅から歩いて5分程度の場所にある。冒頭記載の通り、社屋名は「GVAフレンズ」。なんとも覚えやすいビル名だ。
ガラス窓面積が大きい点が特徴的なGVAフレンズ
地下1階にはバーカウンターが設置されており、社内外含めたコミュニケーションの場として活用していくという。
地下1階、オフィス移転パーティー会場当日の様子
2〜5階は執務スペースとなっており、今回は最上階にお邪魔させていただいた。
左側がエンジニアサイドの島、右側が弁護士含めたビジネスサイドの島となっている。両者のコミュニケーション量が多ければ多いほど、製品へのフィードバックの質も向上していくというわけだ。
そして何と言ってもこの部屋、とにかく天井が高い。
上から見下ろすとこんな感じである。
最上部の端には、限定1名のスタンディングデスクも置いてある。とにかく集中したいときは、こちらにこもるのもアリだろう。寂しくなったら、すぐにしたのフロアに声をかければ良いわけだ。
様々な支援者や仲間が集うような場にしていきたい
GVA TECH株式会社 代表取締役CEO / 弁護士 山本俊氏
最後に、今回の新社屋移転を記念して、GVA TECH代表の山本氏にコメントをいただいた。
「今まではエンジニアと弁護士のオフィスがそれぞれ分かれていた状況だったのですが、今回一つの場所になることで、テクノロジーと法律について一緒に議論して一つのサービスを作るという体制になりました。
これは非常に大きなことです。
弊社のAI-CONシリーズは、法務リテラシーが高くない人に対するサービスであり、まだまだ未知のマーケットだと考えています。ですので、これからも様々な支援者や仲間を作っていかねばならず、そういう方々が集うような場所にしたいと思い、『GVAフレンズ』と名付けました。
ユーザーからのフィードバックを受けながら、製品をどんどんと良いものにしていきたいと思います!
本日は有難うございました!」
編集後記
GVA TECHさんの新たなオフィスビル、大変素敵でした。
建物自体は実はそこまで新しいものではないようなのですが、リノベーションされ、人とのコミュニケーション含めた業務に集中できる環境が整えられていました。
法務に困っている中小零細企業は多いです。契約書一つとっても、しっかりと専門家に確認して取り交わせている事業者が、どれくらいいるでしょうか。
中には、契約内容の吟味が面倒なことに起因して、契約書を交わさないといったことになるケースもあるようです。
会計のマネーフォワードやfreee、法務のAI-CONといった感じで、法務のデファクトスタンダードになることを期待しております!
会場で配布されていたAI-CONマシュマロ