今や出会いの手段として広く人々から受け入れられているマッチングアプリ。
正確にはオンライン恋活・婚活マッチングサービス業界の一領域に括られ、主にスマホベースのアプリを通じて、異性などの相手とマッチングすることができるサービスのことを示す。
日本でこのマッチングアプリが展開され始めたのは2012年と言われており、Facebookと連動する独身者のみ利用可能なサービスとして、それまでオンライン上での出会いの代名詞となっていた「出会い系」とは違った、安心・安全なものという認知が、少しずつ、そして確実に広がっていった。
この、マッチングアプリのクリーンなイメージを牽引していった功労者の一つが、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」と言えるだろう。
2012年11月にリリースされたPairsは、2年後には会員数100万人を突破。その後も順調に会員数を増やしていき、今年3月にはとうとう大台の1,000万人を突破するに至った。
そんなマンモスマッチングサービスを運営する株式会社エウレカより、新たなる取り組みが今年7月に発表された。
その名も「Pairsエンゲージ」。
今すぐにでも結婚を望んでいる人に向けた、結婚コンシェルジュアプリであり、7月31日にサービス開始したばかりの新サービスだ。
本記事では、2019年7月11日に同社スペースで実施されたサービス発表会の内容に触れながら、ここ数年で起こっている婚活サービスへのニーズの変化について考えていく。
1,000万人以上が利用するPairsとは
ここまで会員数が広がったPairsであるが、まだご存知でない方に向けて、簡単にそのサービス概要をお伝えする。
Pairsの使い方は非常にシンプルである。Facebookもしくは電話番号を使ってアカウント登録し、居住地や年齢といった条件検索した一覧の中から気になる相手を選び、プロフィールを開いてチェック。いいなと思ったら「いいね!」を押し、相手が「ありがとうマーク」を返すとマッチングが成立する。
マッチングしたもの同士がやり取りできるメッセージを重ね、ぜひ会いたいと思ったらリアルの場で会うことになるという流れだ。
Pairsを使う上で認識すべき代表的な機能が「コミュニティ」である。現在12万件以上のコミュニティが登録されており(2019年8月2日 15:20現在で121,622件を確認)、1人あたりの平均登録数も20件を超えているという。趣味・ライフスタイル・価値観という3軸の分類で、それぞれの興味分野をプロフィール上で視覚的に表現・確認できることが目的の機能となっており、各コミュニティを登録している会員、という軸でお相手を探すことも可能となっている。共通の趣味や嗜好を持った者同士は、それだけ仲良くなれる確率も上がるものであり、このコミュニティをきっかけに出会いが加速した会員も多いことだろう。
またその他にも、同社では相手との思わぬ出会いを創出するための優れたマッチングアルゴリズムを開発していたり、安心・安全のための24時間365日内製カスタマーケア体制を敷いているなど、会員がより自分に合ったお相手を安心して探せるプラットフォームの構築に積極投資している。
運営会社のエウレカでは「かけがえのない人との出会いを生み出し、日本、アジアにデーティングサービス文化を定着させる。」というビジョンが掲げられており、それに向かって確実に歩みを進めていると言えるだろう。
Pairsエンゲージ開発の背景
株式会社エウレカ 代表取締役CEO 石橋準也氏
それではなぜ今回、同社は新たなるサービスの開発に至ったのだろうか。これについて、株式会社エウレカ 代表取締役CEO 石橋準也(いしばしじゅんや)氏がお話しされた。
「日本は歴史的に『身近な環境』で出会うことができていましたが、今ではその受け皿がなくなっているのが現状と言えます」
どういうことか。
かつて日本での結婚に至る手段の多くは「お見合い」と「職場恋愛」であった。
引用:国立社会保障・人口問題研究所「2015年 社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」p.38
こちらのグラフはお見合い結婚と恋愛結婚の比率推移を示したものだ。これを見るとお分かりの通り、戦前には見合い結婚が約7割を占めていた。その後一貫してお見合い結婚は減少を続け、1960年代末に恋愛結婚と比率が逆転した。
恋愛結婚が主流となった中で、今度は職場が結婚相手との出会いのきっかけになっていくことになる。
いずれの場合も、キーワードとしては「お膳立てされた身近な出会い」である。お見合いはお膳立ての最たるものであるし、職場恋愛についても、周囲のサポートを受けながら互いが仲良くなっていくという社会的マッチングシステムとしてのお膳立てが機能していた。社内結婚を推奨していた企業が多かったことも、今となっては懐かしい。
それが、1992年の職場でのセクハラ裁判の結審などがあって、職場恋愛の流れにブレーキがかかることになる。男女ともセクハラリスクの空気に敏感になるようになり、職場結婚は徐々に減少していくこととなる。
職場結婚が減少することで、身近な場での出会いというものも減っていくこととなり、いまだにその受け皿がしっかりと用意できていない点が、未婚化の要因になっているという。
このような状況の中、出会い支援サービス提供各社は新しい受け皿となる出会いを提供するべく、こぞって様々な事業展開をしているが、そのどれもが利用者にとっては一長一短という状況である。
理想的な出会いがないことからこそ、成果も出ず、婚活や結婚そのものに後ろ向きになってしまうという悪循環が発生してしまっている。
エウレカではPairsを通じて、マッチングサイトの課題である「安心・安全」を強化し、この悪循環を断ち切るべく多くの男女の出会いを創出してきた。
一方で、Pairsでも捉えきれていない会員層がいた。それが、「すぐにでも結婚をしたい人たち」である。Pairsでは、プロフィールの項目に「結婚に対する意思」という選択項目があり、そこで「すぐにでも結婚したい」と設定している会員は、6.63%いるという。
「すぐにでも結婚をしたい人は、結婚意思の強い人とだけの出会いや、婚活を成功に導くためのサポート体制を求めていました。
僕たちは、このような方々のニーズを捉えるべく、日本の婚活を変える新たなプロダクトを開発しました。
それが、Pairsエンゲージです。」
より多くの、結婚意志の高い相手との出会いを創出
Pairsエンゲージを一言でお伝えすると、マッチングアプリと結婚相談所の良いとこ取りをしたサービスと言えるだろう。
まず、Pairsエンゲージには、結婚意志の高い人しかいない。
一般的なマッチングアプリで提出が義務付けられている運転免許証などの本人確認書類だけでなく、独身証明書のオンライン提出も必須となっている。これにより、既婚者といった目的外利用のユーザーが入り込む余地がなくなる。
また、利用には男女同額の入会金と月額会費(いずれも税込9,800円)が設定されているので、そのことが一種のフィルターとして機能し、結婚に対して積極的な人だけが入会するようになっている。
その上で、同社がこれまでPairsの運用で培ってきたマッチングアルゴリズムを活用して、会員一人ひとりに合った相手を毎月最大30名まで紹介してくれる。いわゆる一般的な店舗型結婚相談所と比較すると、業界最多の紹介人数となる。
また、もう一つの特徴としてあげられるのがコンシェルジュとプロコーチの存在だ。
まずコンシェルジュとは、会員の婚活に対する疑問や恋愛相談に対応してくれる存在だ。こちらは24時間365日対応してくれるものである。
次にプロコーチとは、ファッションやプロフィール写真の選び方など、各分野の専門家のこと。人の魅力を最大限発揮するような内容の記事監修などを担当しており、会員はそれらのコンテンツを通じて、婚活成功に向けた学びを深めることができる。
発表会当日にお二人のプロコーチが来場されていたが、お二人とも非常に感じの良い方々であった。
利用の流れも簡単だ。
会員登録後、相手とマッチングをすると、コンシェルジュやプロコーチのサポートを得ながら、2人で最初に会う「ファーストコンタクト」の時間と場所をセットする。
ファーストコンタクトを経て、お互いに再度会いたいと希望すると、晴れて「カップリング」成立となり、ここで初めて相手とのメッセージやりとりができるようになる。
コミュニケーションを重ね、カップリングの相手から運命の一人を選び、成婚に向けて進んでいくこととなる。
時代が求めていた結婚コンシェルジュアプリ
ここまでの情報をまとめると、Pairsエンゲージでは「より確度高く理想の相手を見つけることができる」という結婚相談所が得意とする点と、「より手軽で手頃に出会える」というマッチングアプリが得意とする点が、両立されていることがお分かりだろう。
LoveTech Mediaではこれまで多くの婚活中の方と接してきたわけだが、ここ数年の出会い支援サービスへのニーズの変遷が、非常に面白いと感じる。
マッチングアプリ誕生まで、気軽な出会いのための手段といえば、合コンや婚活パーティーといったものが一般的であった。もちろん、オンラインの領域では所謂“出会い系”と呼ばれるサービスも多数あり、ビジネスや勧誘目的だったり体の関係を求める人がいる一方で、純粋にパートナーとの出会いを求める人もいたので、出会いの手段として機能していたことは事実であるが、いずれの場合も「安心で効率的」とはいえなかった。
一方で結婚相談所に入会している人は、その会員費用の高さと、幅広い選択肢とは言えない状況に悩んでいた。
そんな中、マッチングアプリが2012年に登場したことにより、最初こそは悪徳業者の多い出会い系と変わらないだろうと思われて敬遠されることも多かったが、時間が経つにつれ、安心・安全そして安価に素敵な人と出会えるプラットフォームとして評価されるようになった。
マッチングアプリこそが出会いに向けた現代の最適手段、というイメージを持たれていた方も多かった。
それが2018年頃から、「婚活疲れ」を訴えるマッチングアプリ利用者の声が、我々の元に頻繁に届くようになってきた。彼ら彼女らの“疲れ”の原因は様々であるが、「目的にかなった人となかなか出会えない」「実際に会うと会話が続かない人が多くて、その場が苦痛に感じることが多かった」「どれだけ会っても結婚相手としてコレって決められない」といった声が多かった印象だ。
結果として彼ら彼女らは、結婚相談所に登録するという選択をしていた。つまり、結婚相談所からマッチングアプリへ、というかつての流れから逆流する現象が一部で発生していたのだ。
そのような背景から、これからの時代ではオンライン上で完結し、店舗という固定資産を持たない分会員費用を安く抑えることのできる形態の結婚相談所需要が増えていくことが想定される。
まさに、そのような時代の流れに即して設計されたサービスが、「Pairsエンゲージ」であると言えるだろう。
「私たちエウレカは、従来より提供して参りましたPairsで、恋活や婚活といった様々な出会いに貢献して参ります。そして本日リリースしたPairsエンゲージ。こちらで、すぐにでも結婚したい人のニーズに応えて参ります。
それらを持って、日本社会で最も大きな課題の一つである少子高齢化、この主要因である未婚化の解決に向けて動いて行きます。
かけがえのない人との出会いを生み出し、日本の社会課題解決に貢献していくために、私たちはこれからも多くの価値を届けて参ります。」
編集後記
Pairsエンゲージ。
いよいよ、マッチングアプリの巨人が新たな動きを仕掛けてきました。
記事中にも記載した通り、これまでLoveTech Mediaには様々な婚活者の声が届いており、その中でも「マッチングアプリでは出会えないけれど、結婚相談所って感じでもない」という声がたくさんありました。
そんな方々には、どちらのメリットも組み込んである「オンライン結婚相談所サービス」を提案していたわけでして、今回の発表により、その選択肢がまたひとつ増えることになりました。
ティファニーブルーを基調カラーとするPairsロゴとは異なり、よりやわらかい印象を与えるグリーンの筆記体“engage”ロゴが印象的でした。
エウレカの皆様は、これを「エンゲージグリーン」と呼ばれているそうです。
国内オンライン恋活・婚活マッチングサービスを牽引する企業による、最先端のマッチングアルゴリズムを駆使したオンライン結婚相談所サービスとして、今後の展開に期待します。