日本経済新聞社と金融庁が共催する、国内最大のFinTech(フィンテック) & RegTech(レグテック)カンファレンス「FIN/SUM(フィンサム)」。
「新しい成長の源泉を求めて」をメインテーマに掲げ、9月3日〜6日の4日間かけて東京・丸の内で開催された、大規模国際ビジネス&テクノロジーカンファレンスである。
レポート第4弾の本記事では、「レギュレーション × テクノロジーが世界を変える」セッションの後半パートについてお伝えする。
前半では、ケンブリッジ大学CCAFによる“The Global RegTech Industry Benchmark Report”の世界初ラウンチングイベントが実施され、世界に先駆けてレポート内容が発表。その内容を踏まえて、RegTechエコシステムの各界キープレイヤーが登壇し、その先に見えるものがなにか、未来を探っていった。
後半では、金融から非金融へ話を変遷させ、EUにおける国家戦略としてのサーキュラー・エコノミーについて、またそれに付随するTAXは今後どのように動くのか、といった内容を幅広く議論していった。
<登壇者>
※写真左から順番に
・喜多川和典(きたがわ かずのり)氏
公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 エコ・マネジメント・センター長
・橋本純(はしもと じゅん)氏
EY Japan EY税理士法人 / タックステクノロジー アンド トランスフォーメーション パートナー 税理士
・福地真美(ふくち まみ)氏
東京大学 大学院情報学環 准教授
・宮地秀敏(みやち ひでとし)氏
EY Japan / EY アドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーリーダー パートナー
<モデレーター>
・中川勝彦(なかがわ かつひこ)氏
EYパルテノン Digital & Technology leader
新しい経済システム“サーキュラー・エコノミー”
EYパルテノン Digital & Technology leader中川勝彦氏
セッション後半の大きなトピックが「EUのサーキュラー・エコノミー政策の先進事例に見る産業と企業戦略」ということで、まずはモデレーターであるEYパルテノン 中川氏より、欧州におけるサーキュラー・エコノミーについて解説がなされた。
サーキュラー・エコノミーとは、従来からある“3R”(※)とは異なる視点で欧州から生まれた考え方で、資源不足に向かうマイクロトレンドを背景に、新しい付加価値の創出を目指す経済システムのことを示す。
※3R:Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)、Reuse(リユース:再使用)
、Recycle(リサイクル:再資源化)という、環境と経済が両立した循環型社会を形成していくための3つの取組の頭文字をとったもの。リデュース、リユース、リサイクルの順番で取り組むことが求められている
2010年にコンセプトが確立し、これに対してEUが成長戦略として掲げ、戦略が具体化され、2030年にわたってのアクションプランが確立されているという状況となっている。
また、ISOの規格化もすでに始まっており、政策と国際規格の流れの中でEU内企業における戦略の転換が起こっている。
例えばフランスに本拠地を置くタイヤメーカーのミシュランについて。
同社における従来のビジネスモデルは、タイヤを自社で大量生産し、大量販売した後に大量廃棄をしていたわけだが、そこから走行距離に応じた従量課金モデルへとシフトチェンジし、ビジネスモデルをリース&メンテナンスサービスへと昇華させている。それを可能とするのはIoT技術であり、タイヤにセンサーを埋め込むことで、走行距離やタイヤの状態といった利用状況を収集して分析している。
またタイヤの素材についても、従来は枯渇性資源や有害資源を使って製造し、それらを大量に廃棄していたわけだが、最近ではこれまでなかったようなバイオ由来の原材料やリサイクル原材料で作ったタイヤを活用するようになっている。
では日本における取り組み状況はどうなっているかというと、主に経済産業省と金融庁が両輪となって動いている。
具体的にはまず経済産業省において2018年に「循環経済ビジョン研究会」が設置され、循環経済ビジョンの骨子案が策定された。また金融庁においても、経産省と連携してTCFD(※)の取り組みを開始し、SDGs目標とIR開示を企業に求める対話を開始させている。
※TCFD:気候変動関連財務情報開示タスクフォース(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)。2016年に金融システムの安定化を図る国際的組織FSB(金融安定理事会)によって設立され、2017年6月に以下を目的とした最終提言が公開された
- 気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援すること
- 低炭素社会へのスムーズな移行によって金融市場の安定化を図ること
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