学生など150名以上がIT・コンテンツ企業求め集結、高知県 産業創造課の挑戦《vol.1》

イベントレポート

課題先進県・高知とは

「同じ四国でも、4県とも文化が全然違います。徳島は東京の影響が強く、香川は大阪の影響が強い。愛媛はほのぼのとしていて、高知は独立国家。こんなイメージですね。

 筆者の友人である四国出身者が、かつてこんなことを言っていた。

 あくまで個人の印象なので、この認識の正誤はともかくとして、高知県の「独立国家」という表現がとても面白い、と感じたことを覚えている。

 高知県といえば、カツオ・日曜市・坂本龍馬・広末涼子などというイメージとともに、豪快な男児という印象が強い。現地では「いごっそう」と言う土佐弁とともに、弱者に対して優しく、行動は大胆不敵にして豪快で、自身の信念を貫く反骨精神を有する精神が大切にされている。

朝5:00から賑わう高知名物・日曜市

 そんな高知県は現在、国内随一の課題先進県としても知られている。人口の社会減による経済の縮小が、さらに人口の社会減を加速させ、それが過疎化と高齢化を同時に招き、結果として全国に先行して人口が自然減の状態に陥り、このことで、より一層経済が縮むという「負のスパイラル」をたどってきている。

出典:高知県ホームページ

 若者の県外流出も合わさり、同県の人口は昭和30年の88万人をピークに徐々に減少していき、現在では70万人を切りそうな勢いである。さらにこのままのペースで進むと、2060年には39万人にまで落ち込むことが見込まれている。

 これに対し、高知県もただ黙って事態を傍観しているわけではない。地産外商による安定した雇用の創出、新しい人の流れ創出、若い世代の結婚・妊娠・出産・子育ての希望を叶える、女性活躍の場の拡大、コンパクトな中心部と小さな拠点との連携による人々の暮らし推進、といった基本目標を定め、2060年の人口展望を約55万人と見通して、各施策を打っている。

 本記事では、上述の「新しい人の流れ」施策の文脈で、5月25日(土)に高知県立大学・高知工科大学 永国寺キャンパスにて開催された「IT・コンテンツアカデミー オープンキャンパス」の様子を、全4編に渡ってお伝えする。

 高校生・大学生・社会人を問わず、実に150名以上の高知県民が参加した本イベントは、高知県が昨年から開催している「IT・コンテンツアカデミー」のキックオフとも言える催しだ。IT・コンテンツビジネスの担い手となる人材の育成を目的に、IT・コンテンツビジネスの基礎知識から最先端のプログラミングまで、幅広く学べるものとなっている。

 この大きなうねりをご覧頂ければ、今後の高知の前途が決して暗いものでないことがお分かりいただけるだろう。

人材育成と企業誘致を通じた好循環を目指した取り組み

イベント冒頭に挨拶される高知県商工労働部長 近藤雅宏(こんどう まさひろ)氏

 昨年から始まったIT・コンテンツアカデミーは、いったいどのような背景から設立されたものなのだろうか。

 もともと同県では2010年より「土佐まるごとビジネスアカデミー」、通称「土佐MBA」と呼ばれる学習講座を開催してきた。ビジネスに関する基礎から応用・実践力までを“まるごと”身につけることができるという、県が行う研修プログラムである。

 経営戦略、マーケティング、会計、財務戦略、事業マネジメント、事業創出、組織・人的資源マネジメントといった経営に必要な基礎知識を体系的に学べる「本科」コース、演習やグループワークなどを中心としたより実践的な形で進められる「実科」コース、貿易実務や農業経営など各分野の専門機関が実施する「専科」コースと、大きく3つに分けられたカリキュラム体系として設計されており、ビジネスを初めて学ぶ人から経営者層まで、それぞれのニーズに合わせて受講することができる。

 また2015年4月からは、産学官民が連携して行う産業振興や地域の課題解決に向けた様々な取組を推進するため、高知県産学官民連携センター(通称:ココプラ)を設置し、「知の拠点」「交流の拠点」「人材育成の拠点」という3つの基本機能を掲げ、産学官民連携に関する相談窓口の設置や交流機会の創出、人材育成研修などの取組みを進めている。

出典:「ココプラ」ホームページより

 そんな中、地理的なハンデが少なく成長産業で、かつ若者にも人気がある業界として、これからの時代を牽引する「IT・コンテンツ業界」の担い手となる人材の育成が急務であるとの判断から、昨年2018年より土佐MBAの専科として開講されたのが「IT・コンテンツアカデミー」である。

 アプリ開発のプログラミングからAI・IoTリテラシー、WEBデザイン、各種マーケティングスキルまで、IT・コンテンツといっても様々な領域における講座が用意されている。

 昨年期は1,620名、延べ3,456名が受講しており、その人気のほどがうかがい知れる。また、これに併せて、これまでに計19社が企業立地しており、新規雇用者数も240名を超えているという。

「どれだけ優秀な人材を供給できるか。これが企業誘致のポイントでして、私たちは人材育成と企業誘致を通じた好循環を目指しています。

現在、Society5.0等言葉にもある通り、IoTやAIといったデジタル技術の革新が進んでおり、その中で一次産業や製造業、医療・福祉・教育・防災関係での活用が進んでいます。

様々な選択肢が広がる中で、ぜひ今日を機会に、IT・コンテンツ業界への関心を深めていただいて、県内で活躍するという選択肢も検討していただけたらと思います。

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長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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