共働き世帯の増加、ワンオペ育児による大家族から核家族への進展、それによる身近な相互扶助の希薄化。
現代の子育て世代は、とにかく時間がない。時間がないことで日々の生活にて心身ともに疲れが溜まっていき、最悪のケースでは精神疾患の発病、夫婦関係の崩壊、子供に対する虐待やネグレクト等に発展するリスクがある。
海外では子育てにテクノロジーを活用することで、子育ての効率化をはかる文化が醸成されている。BabyTech(ベビーテック)と呼ばれ、IoT哺乳瓶やウエアラブル体温計など、先進的なテックプロダクトが育児生活に浸透し始めている。
この度、日本でも本格的な「育児×テクノロジー」業界のうねりが生まれた。株式会社カラダノート、株式会社ファーストアセント、株式会社AsMama、株式会社オトバンク、ピクスタ株式会社の5社により発足された「子育Tech委員会」である。
本記事では、10月2日に実施された「子育Tech共同提唱に関する記者会見」の様子をお伝えすると共に、和製BabyTechの今後の可能性についてお伝えしたい。
子育Tech委員会発足の背景
子育Tech(こそだてっく)とは「子育て×テクノロジー」を略した言葉。今回の共同提唱発起人である株式会社カラダノートが、今年3月から提唱していた概念である。
育児の記録や共有の効率化、育児の情報収集の効率化、及び育児にまつわる夫婦間のコミュニケーションの糸口になるようなITやテクノロジーを用い、心身ともにゆとりある子育てをするという考え方だ。
テクノロジー先進国のアメリカではBabyTechと呼ばれ、妊娠から乳幼児育児に関する技術が特に発達している。同国では4人に1人の女性が産後2週間で職場復帰を果たし、母親でない第3者が世話をする、またベビーシッターやナニーに自宅で世話をしてもらうという文化が醸成されている。だからこそ、BabyTech領域が発達していったと言えるだろう。
一方日本を見てみると、育児にテクノロジーを用いることへの躊躇が社会全体に垣間見える。手間をかける、手作りをする、お母さんが夜なべをすることが美談であり愛情だと考えられる文化が色濃く残っている。「テクノロジーを使って育児を効率化する」ことを声を大にして言いにくい雰囲気を感じる。
そんな国内の意識状況を変え、子育て現役世代のみならず孫子育て世代への理解と浸透を図るべく中長期的に市場・産業を醸成していくことが、今回の子育Techの共同提唱の目的となる。
家庭、地域、社会全体など、それぞれの子育て領域で強みを持つ企業同士が協力し、子育て×IT・テクノロジーの普及を推進していくことが、子育Tech委員会のミッションだ。
次章より、子育Tech委員会の企業紹介に移る。
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