愛と勇気とお金の等価交換を実現する「actcoin」が目指す世界

インタビュー

 Love Tech Media読者の中には、ボランティア含めた社会貢献活動に興味のある方も多いのではないだろうか。

 では実際にボランティア参加などアクションにつなげた方、もしくはアクションを起こし”続けている”という方は、どれだけいらっしゃるだろうか。そうなってくると、人数がグッと減るのではないかと予想する。

 そう、社会貢献活動への昨今の注目度合いとは裏腹に、個人ないし団体がサステイナブルに活動参画できる環境が整っていないのが、現状の課題であると言える。1〜2回ボランティアに参加したけど、それで終わってしまったという方が多いのも、ある意味で仕方のないことだろう。

 そんな背景から登場したのがactcoin(アクトコイン)プロジェクトである。

 「より良い世界をつくるために、愛と勇気とお金の等価交換を実現」することを目指したものだという。一体どのようなプロジェクトなのか、2月19日に開催された説明会に参加してみた。

actcoinは仮想通貨ではなくトークン

 この日の説明は、actcoinを開発・運営するソーシャルアクションカンパニー株式会社代表取締役CEOの佐藤正隆(さとうまさたか)氏により進められた。

actcoinは、ボランティア活動への参加や寄付など、個人の社会貢献活動に対して独自のトークンを付与する無料オンラインサービスです。

 つまりこういうことだ。

 ユーザーはまずactcoinの会員としてアプリ上で登録し、教育・福祉・国際協力など様々なテーマで活動する非営利団体、行政および企業のプロジェクトに参加・寄付することができる。

 ボランティアやセミナーといったアプリに登録されているプロジェクトに参加すると1時間あたり1,000コイン、プロジェクトをSNSでシェアすると100コイン、団体へ寄付すると寄付金額の10%分のコインを、それぞれもらうことができるという。

 さらにはactcoinができる前に寄付した分についても、個人名義であれば、寄付を証明できるものを提示することで、その金額に応じたactcoinが付与されるという。

 個人の社会貢献活動が、コインとして”見える化”されるというわけだ。

 そもそもこのactcoin、コインというからには仮想通貨の一種なのだろうか。

actcoinは仮想通貨ではなく、あくまでトークン(※)です。

※トークン:硬貨の代わりに用いられる代用貨幣のこと(Wikipediaより)

 そう、actcoinは社会貢献アクションにだけ付与する代用ポイントのようなものであり、仮想通貨のように売買したり、現時点で換金できるものではないという。

ブロックチェーン3.0のプロダクト

2018年4月11日 総務省 自治体ポイントに関する検討会「ブロックチェーンの将来性と応用分野」より転載。actcoinは上図の非金融分野(ブロックチェーン3.0)の領域に属するプロジェクトである。

 actcoinはブロックチェーン技術を活用して構築されたサービスだ。

 その仕組みは世界でも珍しく、アジア発ブロックチェーン3.0のプラットフォーム「REXX」のサイドチェーン第1号トークンとして開始されたものだという。

 ビットコインなど仮想通貨をメインとするブロックチェーン1.0トレンド、主に金融分野での活用をメインとするブロックチェーン2.0トレンド、そしてその先にある医療情報や不動産所有といった非金融分野における活用をメインとするブロックチェーン3.0トレンドの中において、actcoinはさらに実際に動くものとして社会実装されている貴重なプロジェクトでもある。

 同社が調べた限りにおいて「ブロックチェーン技術を活用して個人の社会貢献活動を可視化する」サービスは国内初であり、その先進性から、環境省からの問い合わせを通じて先日、日本版ナッジ・ユニットへの連絡会議で事例発表をしたという。

 行政からも非常に注目されているプロジェクトであると言えるだろう。

3つの”見える化”と、潜在的な社会貢献意欲の掘り起こし

 actcoinの企画は2018年1月に立ち上がり、同年5月には現在の会社法人として設立された。設立の背景には、大きく2つの目的があったという。

まず一つ目は、ソーシャルセクターにおける3つの”見える化”を実現したいと考えたからです。個人の社会貢献の見える化企業とNPO活動の見える化、そして参加者全員で起こすインパクトの見える化です。

 特に2つ目の「NPO活動の見える化」について、佐藤氏の本業における原体験があったという。佐藤氏はこのプロジェクトとは別に、2008年よりリタワークス株式会社という大阪にある会社の代表も務めており、そこで病院やNPO法人などの非営利業界に対してITソリューションを提供してきた。

その中で、非営利業界の広報やマーケティング領域における課題を痛感し、もっと活動そのものが見える化される仕組みを作りたいと考えたことがきっかけでもあったという。

次に二つ目ですが、潜在的な社会貢献意欲を掘り起こしたいと考えております。

 社会貢献や寄付への関心は労働人口の約50%にものぼるとも言われており、多くの方は「社会貢献活動に参加してみたい」と思っている。しかし、平成29年3月に内閣府より発表された「平成28年度 市民の社会貢献に関する実態調査」によると、様々な要因によって、結局は参加出来ずじまいになってしまう方が多いことがわかる。

出典元:https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/h28_shimin_1.pdf(10ページ)

actcoinは、生活者の参加障壁を下げるサービスとして、国民の多くの社会参加を実現していきます。昨今の企業による副業解禁やプロボノ層の増加、働く場所や時間の多様化は、actcoin推進にとっての追い風になっていると感じます。

日本財団のCANPANプロジェクトと連携

2019年2月19日時点のアプリ内「プロジェクト」サーチ画面

 こちらが実際のactcoinアプリの画面である。2019年2月時点では、iOSアプリのみ提供されており、actcoinはこのアプリ経由のみで入手することができる。

 気になるプロジェクトを選択すると、以下のようなプロジェクト詳細画面が表示される。

 この画面ではプロジェクトに対応するSDGsの目標項目が併せて表示されており、またプロジェクトに参加することで獲得できるactcoin枚数も確認できる。

 プロジェクトに参加したい場合は右下のピンクの「参加する」ボタンを、SNSでシェアしたい場合は左下の白い「シェアする」ボタンをタッチする。非常にシンプルな構造だ。

個人が過去に行ってきたアクション履歴は、actcoinアプリユーザーであれば誰でも閲覧可能内容にしています。誰がどこに寄付しているか、どのプロジェクトに参加しているかなどは、ユーザー同士で確認できるようになっています。お互いのアクションの見える化によって、アプリ内のアクションがより活性化されることを期待しています。

 なお、上記画面はプロジェクトに参加したいユーザーサイドのアプリ画面だが、NPOや企業サイドには別途、管理用の画面が提供されている。

 管理画面ではプロジェクト紹介ページの編集や公開ができる他、参加ボタンを押したユーザーの管理や承認作業(※)を実施できるようになっている。

※ユーザーが希望プロジェクトに参加するには、プロジェクト管理者によるシステム上の承認作業が必要となる。

 プロジェクトを掲載できるのは企業・NPO法人、そして行政である。行政については現在開発中だが、企業とNPO法人をそれぞれ異なる登録フォームにアクセスし、ソーシャルアクションカンパニーからの認証を得ることで、このactcoinシステムを利用することができるという。

 ちなみにNPO法人については、日本財団CANPANプロジェクト(※)と連携しており、CANPAN情報開示レベル4以上の団体のみ申請することが可能だという。

actcoinの全体像

※CANPANプロジェクト:日本財団および特定非営利活動法人CANPANセンターによる、市民・NPO・企業などの活動を支援し、連携を促進することで、民間主体のより豊かな社会づくりに貢献することを目指すソーシャルプロジェクト。

誰もが『利他の心』を発揮して幸せに生きる社会を目指す

既存の金融システムはほとんどがゼロサムです。つまり、一部の人々がどんどん裕福になっていき、貧困層はますます貧しくなるというループです。

actcoinはそうではなく、プラスサムな仕組みとして、誰も損をしない仕組みに設計しています。公益的な用途でブロックチェーンを活用しています。

 全ての通貨は有限資産であるが、actcoinも例外ではなく、2,030億枚のトークンを発行している。2030年までに全てのトークンを生活者に配布完了させることを目的にしているということで、年号と一致する枚数を発行した形だという。

 2019年3月にアプリのバージョンアップを予定しているとのことで、そこでは現時点のユーザー数のほか、actcoinの残数(あと何トークン残っているか)も見える化する予定だという。

多くの方がトークンを持てば、その分actcoinの価値も上がります。そういう観点からも、既存のポイントシステムとは異なることがお分かりいただけるかと思います。

まずはactcoinプラットフォームの価値を上げていきたく、ユーザー数の増加を優先させたいので、少なくとも2019年内は全ての機能を無料で利用できるようにする予定です。

本日(2月19日)時点で既にユーザー数は600以上、登録希望団体が100以上申請されてきています。すぐに大きくなっていくと期待しています。

今後はactcoinそのものも資産として価値を持たせ、活用したり交換できたりする仕組みを整えていきたいと考えています。

愛と勇気とお金の等価交換を示現するとともに、誰もが『利他の心』を発揮して幸せに生きる社会を作って参りたいと考えています!

説明会参加者の声

・NPO法人副理事

「actcoinのことは雑誌の記事を読んで知りました。とても面白い仕組みだと思い、早速利用登録を申請しました!

世界中で植林をしたり災害支援といった活動をしているのですが、ボランティアスタッフとつながる手段として、また実際に寄付を集める手段として、とても可能性のあるサービスだと感じました。」

・NPO法人スタッフ

「知り合いから紹介されて、本日の説明会に参加しました。水産資源を守る活動をしているのですが、なかなか活動の認知に苦労しているので、新しい仕組みで素敵だなと思いました。

また、ブロックチェーンのこと自体はニュースなどで見ていましたが、こういう形で使われると思っていなかったので、それも新鮮でした。

今後プロジェクトを掲載していく立場としてぜひ利用したいと考えています!

・一般参加者

「普段からいろいろな活動に参加しているのですが、コインが貯まるという形で自分の活動の履歴が見える化されるのは、今までにない面白い仕組みだと感じます。

早速actcoinプロジェクトに参加して、1,500コインをもらいました。

またNPOだけではなく、企業のソーシャルなプロジェクトを知るきっかけになるのも、良いなと感じます。

せっかくダウンロードしたので、色々と使ってみたいと思います。」

 

編集後記

「社会に対して何か貢献したいが、何をすればよいかわからない」という方は結構多い印象の中、アクションをした方だけがコインを手にすることができるという仕組みは、実際の行動変容につなげることができる仕組みとして画期的だなと感じました。

 

また、換金できないという点こそが、変なインフレを引き起こすことなく、しっかりとしたソーシャルサービスとして社会実装させていける要因だとも感じます。

 

actcoinでは今年4月に新たなクラウドファンディングを始める予定だということで、またLove Tech Mediaでもニュース配信したいと思います。

 

興味ある方は、詳細をお楽しみにされてください!

 

 

『actcoin』詳細についてはこちらをご覧ください

LoveTechMedia編集部

「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧