LoveTech Media編集長がお届けする「勝手にいちおしクラファン」、今回は伊藤玲子さん(一般社団法人キャリアヘルス研究所・日本大学医学部兼任講師)が立ち上げたクラウドファンディングプロジェクト「#吸入レッスン:正確な吸入技術をすべての世代に伝えたい」です。
気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、呼吸器関連の病気の治療で使われる「吸入器」。僕も喘息患者として、季節の変わり目などに気道が狭くなる気配がしたら使っているわけですが、実はこの吸入器を処方された患者の70%が“間違った使い方”をしていると言います。
「薬の使い方を間違えるなんて、そんなバカな」と思うかもしれませんが、例えば僕が使っているテリルジーという吸入器の使用にあたっては、以下のようなオペレーションが必要になってきます。
- カバーが上に、かつカウンター(残使用回数計)が手前になるように吸入器を持つ
- カチッと音が鳴るまでカバーを開けて、カウンター残量が1目盛り減ったことを確認する(この時に、吸入器を横にしたり、何度もカチカチとカバーを開閉しない)
- 無理のない程度に息を吐く(この時、吸入口に息を吹きかけないように注意する)
- マウスピース(吸入口)に唇を当てて強く深く一気に息を吸い込む(この時、吸入器の通気口を指で塞がないようにする)
- マウスピースから唇を離して、3〜4秒息を止め、その後ゆっくりと息を吐き、呼吸を再開する
- カバーを閉める
- 口の中に薬剤が残らないようにうがいをする
どうでしょう。これだけのステップがあると、抜け漏れ等が発生してしまう可能性は高まりますよね。現に僕自身、7番のうがいがすっかり抜けてしまっていました。
もちろん、吸入器にはしっかりと説明書がついており、そこで上記オペレーション含む細かな注意点等が説明されているわけですが、全員が全員しっかりと説明書に目を通すかと言われると、そんなこともないでしょう。
また、処方される際や薬剤を受け取る時に、医師や看護師、薬剤師からの説明もあったりしますが、そういった吸入指導は時間がかかる業務であることから全処方患者に提供できているわけではなく、また医療従事者自身が複数パターンに及ぶ全ての吸入薬のオペレーションを適切に説明できるとも限りません。説明スキルにばらつきもあるでしょう。
吸入オペレーションに間違いがあると、それだけ薬剤が適切に患部等に届かず、結果として治療がうまく進まないリスクが高まる事態に。このような背景から制作されたのが、吸入指導のためのWebツール「吸入レッスン」です。
吸入レッスンサイトでは以下にある通り、薬の名前ではなく「形状」で見つける形で、各吸入器の使い方を学べるようになっています。具体的には、短い説明動画を視聴し、最後に復習テストも用意されているというシンプルな内容です。
公開以降、喘息治療の指針となる「喘息治療・管理ガイドライン2018」にて「吸入指導に役立つツール」として掲載されたことも相まって、全国の調剤薬局やクリニックで使われてきた本サイト。
これまで医局の研究資金で運営されてきたものですが、研究費の減額などにより資金面での継続が難しくなり、このままでは閉鎖を余儀なくされる可能性があるとのことで、今回のクラウドファンディング実施に至るというわけです。
今回獲得した資金によって、サイト継続のための必要経費支払いはもちろん、既存コンテンツのバージョンアップや、「吸入レッスン」小児用ページの作成も予定しているとのこと。
説明だとなかなか伝わりにくい吸入オペレーションを動画でわかりやすく見える化するのは、小さなお子様がいる家庭にとって特に大事なことでしょう。
日頃から吸入器を使っている方はもちろん、そうでない方も、ぜひ詳細ページをご覧になってみてください。
文:長岡武司