子宮内フローラを自宅でセルフ検査。2021年春頃の展開めざし、ファミワン × Varinosが共同開発開始

妊娠/出産

記事の要点

・ゲノムテクノロジーを用いた遺伝学的検査を開発・臨床実装するVarinos株式会社と、LINEを活用した妊活コンシェルジュサービス「famione」を提供する株式会社ファミワンが、共同で「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」の事業化を開始。2021年春頃のサービス展開を目指して準備中。

 

・自宅で手軽に自身の子宮内フローラを知ることで、自身の妊活の選択肢を広げ、また正しい理解をもって適切な妊活や不妊治療への一歩踏み出す機運を醸成することが狙い。

 

・健康な女性の腟内にはラクトバチルス属の細菌が豊富に存在しており、細菌性腟症や酵母感染症、性感染症、尿路感染症といった症状の原因となる病原体の繁殖を予防していると考えられている。

LoveTechポイント

これまで当メディアでは、精子の状態や卵巣年齢等を自宅でチェックできるツールの開発・提供について報じてきた(参考記事)わけですが、今回の子宮内フローラツールの提供によって新たな自宅妊活の手段が広がる点で、LoveTechだと感じます。

定型的な正解というものが特にない領域だからこそ、一人ひとりが自分の身体状況を知ることが、大きな一歩になるでしょう。

編集部コメント

近年、ヒトの健康に重要な影響を与えるとされている「腸内フローラ」が話題になっているが、こと不妊領域においては「子宮内フローラ」が注目され始めていることをご存知だろうか。

 

腸内に存在する細菌叢と同様、子宮内にも細菌が存在し、その菌環境が不妊治療の成否を左右するという考え方だ。

 

そもそも、腸内や口内といった身体の中には様々な菌が住み着いており、宿主であるヒトと共生する常在菌の多くは、病気を引き起こす可能性のある悪玉菌を排除することで、感染に対する防御の第一線を構成すると考えられている。

 

健康な女性の腟内も同様で、ラクトバチルス属の細菌が豊富に存在しており(参考論文)、細菌性腟症や酵母感染症、性感染症、尿路感染症といった症状の原因となる病原体の繁殖を予防していると考えられている(参考論文)。

 

ラクトバチルス属の細菌とは「善玉菌」の一種で、女性ホルモンによって腟上皮細胞より分泌されるグリコ ーゲン由来の物質を代謝することで「乳酸」を生成している。この生成された乳酸には、腟内の雑菌の増殖を防いだり、病原体を死滅させる効果があるとされているのだ(参考論文)。

 

要するに、女性が分泌するホルモンによって善玉菌が増え、それによって女性の腟内の環境が保たれている。

 

もし雑菌が子宮けい管を通過して子宮に到達すると、不妊の原因となる子宮内膜炎、卵管炎、骨髄腹膜炎が起きる可能性があり、また細菌性腟症の妊婦では、自然流産のリスクが9.91倍、早産のリスクが2.19倍に上がることが報告されている(参考論文)。雑菌と各種感染症等に関しては、日本性感染症学会が発表知っている冊子が参考になるだろう。

 

以前は子宮内は無菌だと考えられていたわけだが、感度の高い解析技術が登場してきたことで、上述のような子宮内フローラを構成する菌の割合を調べられるようになった。具体的には2015年に、米国ラトガース大学の研究者らが、子宮内に善玉菌が存在することを発見し、善玉菌が着床時の免疫に影響を与える可能性を指摘(参考論文)。その後2016年には、米国スタンフォード大学の研究者らが、妊娠成功群と妊娠不成功群で善玉菌の量を調べ、妊娠不成功群では善玉菌が少ない傾向にあることを発見した(参考論文)。

 

以降も子宮体癌や子宮内膜症と関わる菌が発見されるなど、子宮内の菌環境と女性の健康が密接にかかわっている可能性が次々と報告されている状況だ(以上、Varinos社HPを参照)。

 

そんな子宮内フローラについて、最新のゲノムテクノロジーを活用して、世界で初めて医療機関向けの検査サービスとして実用化したのがVarinos株式会社である。

 

同社は、診断や治療方針の決定にゲノム情報を利用する「ゲノム医療」の実現化を目指したベンチャー。最近では生殖医療および産婦人科領域を中心に、女性のヘルスケアを支える新規の臨床検査を開発・提供している。

 

そんなVarinosが提供する子宮内フローラ検査は、現在140以上の日本全国の不妊治療クリニックや大学病院に導入されており、この領域におけるデファクトスタンダードとして認知が広がっている。

 

ちなみに、先述の子宮内フローラの各種情報については、同社による以下の動画でもわかりやすく解説されている。

 

今回、この子宮内フローラ検査の技術を用いて、医療機関にいかなくとも自宅で腟内検体を採取し、簡易的に子宮内フローラの状態を検査できる一般消費者向け「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」の開発プロジェクトがスタートした。

 

共同事業パートナーは、LINEを活用した妊活コンシェルジュサービス「famione」を提供する株式会社ファミワン。同社については過去の記事もご参照いただきたい。

 

手軽に自身の子宮内フローラを知ることで、自身の妊活の選択肢を広げ、また正しい理解をもって適切な妊活や不妊治療への一歩踏み出す機運を醸成することが狙いだと言う。

 

本サービスは2021年春頃のサービス展開を目指して準備が進められており、購入や結果の報告等はファミワンを介して行われる予定だ。

 

すでにWeb上にはティザーサイトも開設されており、無料イベントへの招待や最新情報、限定のお知らせなどが届くニュースレター登録を開始している。

https://flora.famione.com/

 

子宮内の状況を見える化し、自身の身体の状況を理解する。妊活の進め方に悩んでいる方にとっては、新たな選択肢となるだろう。

 

以下、リリース内容となります。

長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

プロフィール

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