沖縄発医療ベンチャー・SOIKがコンゴ民で実証実験。5,000名の妊婦にデジタル産科健診を予定

妊娠/出産

記事の要点

・株式会社SOIKが、2021年11月よりコンゴ民主共和国の首都キンシャサで、最大5000名の妊婦を対象とするデジタル産科健診の実証試験を現地保健省と合同で実施予定。

 

・実証試験と並行して、コンゴ民主共和国の公的診療所(約8,000施設)に、今回開発した産前パッケージを導入するプロジェクトも形成中。

 

・今後は、まずコンゴ民国内で政府・ODA予算での導入を進め、その後安価な初期投資を強みとして民間クリニックへ市場を展開予定。

LoveTechポイント

アフリカの地において、個別の医療機器よりもパッケージ型のソリューションが求められていることに気づき、ニーズに応じたシステムを提供しようとしている点が、LoveTechだと感じます。

何かしらのパッケージシステムを展開する際のポイントの一つは、機能を直感的に理解して自然と操作ができるようなUI設計にあると言えます。グローバル展開をするのであれば、尚のこと重要になるでしょう。

編集部コメント

沖縄発のアフリカSDGsスタートアップ・SOIKが、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)の首都キンシャサで、スマホ完結型の産科健診プラットフォーム「S-PAQ」の実証事業を現地保健省と合同で開始する。

 

実証事業の背景にあるのは、コンゴ民における高い妊産婦死亡率及び新生児死亡率にある。

 

2017年のコンゴ民の妊産婦死亡率は473/10万、新生児死亡率は27.4/1,000(※1)であり、日本の2017年妊産婦死亡率33/10万、新生児死亡率1.9/1,000(※2)と比較すると、とても多い数字だと分かる。

※1. ワールド・データ・アトラスコンゴ民主共和国 妊産婦死亡率ワールド・データ・アトラスコンゴ民主共和国 新生児死亡率

※2. nippon.comより

 

何故こんなに低いかというと、例えば日本では通常14回行われる産前超音波検査が、アフリカの農村部では3回以上行われているのがわずか1%だと、同社は主張する。医療サービスの質・アクセスが悪く、必要な検査が十分に行われていないというのだ。

 

SOIK代表の古田国之氏は、国際協力機構(JICA)勤務中にコンゴ民に赴任した際、現地の社会課題を目の当たりにしたことをきっかけに、ビジネスでの課題解決を志し、沖縄にあるデジタル医療機器スタートアップにて、アフリカ市場開拓や製品開発に取り組むこととなる。その中で、日本には他にも途上国で活用できる医療機器を開発している企業があること、またアフリカでは個別の医療機器よりもパッケージ型のソリューションが求められていることに気づいたという。

 

 

そこで今回、上記課題の解決に挑戦するため、開発途上国で周産期医療活動を展開する(特非)母と子の医療を世界に届ける会、およびアフリカ向けIT開発に強みを持つヘルスアンドテック合同会社とともにスマホ完結型の産科健診プラットフォーム「S-PAQ」を開発し、提供をスタート。2021年6月時点で30名以上の妊婦へ活用されている。

 

このS-PAQは、安価かつ電源がないところでも使用できるIoT医療機器を接続して使うことができるアプリ。開発途上国にある診療所の看護師・助産師等の医療従事者がターゲットユーザーとなるが、1時間の研修で使い方を習得できるシンプルな操作性設計が特徴となっており、スマホアプリのナビゲーションに従うことで、国家標準の健診プロセスを終えることができる。もちろん、結果はデータベースに保存、共有される。

 

詳細は以下の動画も参照してほしい。

 

妊婦にとっても、医療サービスの質向上や低価格化、診察時間短縮等のメリットが期待でき、産前健診に必要な機材をすべて含んだ「自己完結型」パッケージにすることで、インフラが不足する僻地においても保健サービスの質を向上させることが可能となっている。

スマホの診断ナビにしたがって検査結果を入力する

 

 

本実証事業は経営革新計画承認を得ており、これまでも厚生労働省・国立国際医療研究センターの「医療技術等国際展開推進事業」に令和2年度、令和3年度で採択。また、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」5次締切のグローバル展開型においては、沖縄県で唯一採択されている。

 

《経営革新計画の概要》

  • 経営革新計画のテーマ:「AI、IoTを活用したデジタル産前検診パッケージ開発による日本の医療機器グローバル展開」
  • 経営革新計画の期間:令和 2年9月~令和7年8月(5年間)

 

《実証事業の概要》

  • 実施目的:スマホ完結型の産科健診プラットフォーム「S-PAQ」に関する仮説検証
  • 実施場所:コンゴ民主共和国キンシャサにおける医療施設で最大6サイト
  • 実施期間:2021年11月〜同年12月(第1回)および2022年1月〜同年3月(第2回)

 

本実証事業では、超音波画像診断装置や胎児モニター、生化学装置、尿分析装置については国内メーカー製品を用いる予定であり、そのほかの機材等に関しては、共同実証事業パートナーを募集中となっている。

 

また実証事業と並行して、コンゴ民の公的診療所約8,000施設に対して、今回開発した産前パッケージを導入するプロジェクトも形成中で、今後は、まずコンゴ民国内で政府・ODA予算での導入を進め、その後は安価な初期投資を強みとして民間クリニックへ市場を展開していく予定だという。

 

中長期的には、蓄積された検査データをAI学習させ、検査項目・プロセスの改善提案や診断・処置に対する支援情報を提供することで、医療サービスの質向上に向けてさらなる機能向上を目指す。また、妊婦・患者向けアプリの開発と診療費決済のプラットフォーム化、生活習慣病・感染症等の他診療科への展開も進める計画となっている。

 

本サービスの普及により、妊娠・出産時だけでなく、コレラやはしかなどの感染症を防ぐ予防接種といった、基本的な医療保険システムの強化につながることを期待したい。

 

LoveTechMedia編集部

「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

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