記事の要点
・半径1〜10km内に設定された地域内の人のみ使うことができるご近所SNS「マチマチ」運営の株式会社マチマチが、東京消防庁との「防火防災訓練等の情報提供に係る協定」の締結を発表。
・東京消防庁はマチマチを活用することで、防災訓練や防災知識の情報を各地域ごとに発信することが可能となり、またマチマチ上では東京消防庁の管轄52市区町村で展開している「災害情報共有コミュニティ」を活用し、住民同士の共助を中心とした防災の強化をおこなっていくとした。
・マチマチはこれまでも、台風や地震、新型コロナウイルス等の災害発生時において、近隣住民同士の情報共有や助け合いのためのコミュニケーションツールとして積極的に有効活用されてきた。
LoveTechポイント
新型コロナウイルスをはじめ、台風や地震など、今後考えられる様々な災害への対策が急務である状況の中で必要なインフラの一つが情報共有・伝達の仕組みと言えるでしょう。情報が正しく伝わることで、救われる命が増えるはずです。
日頃から活用できる情報共有ツールが、災害発生時の危機コミュニケーションプラットフォームとしても機能する点が、特にLoveTechだと感じます。
編集部コメント
ご近所SNS「マチマチ」を運営する株式会社マチマチが、東京消防庁との「防火防災訓練等の情報提供に係る協定」の締結を発表した。
マチマチとは、近所にいる人と地域の様々な情報を交換することができるソーシャルネットワークサービス。半径1〜10km内に設定された地域内に居住や仕事の関係でいる人のみ使うことができ、以下のような、自分の地域で知りたいことや困っていること、疑問に思っていること等を聞いたり、過去投稿ログから確認することができるというものだ。
- 近所の方からの疑問への回答
- 地域の防犯・防災情報の発信
- 地域のおすすめの病院
- 地域独自のお祭りやイベントの情報
- 不用品などの「あげます・売ります」/「ほしい、買います」
- 地域の美味しいレストランや評判の良いお店の情報
- 行方不明のペット情報 etc…
現在(2020年9月4日)時点で29の公共機関、1省庁及び1団体と提携しており、月間200万人のユーザーが利用している、日本最大級の地域特化型SNSと言えるだろう。
そんなマチマチを2016年から提供する株式会社マチマチのミッションが「ひらかれた、つながりのある地域社会をつくる」こと。首都圏を中心に、近くに住む者同士の顔が見えにくくなり、社会における物理的な“互助”の仕組みが希薄化している現状の中においては、防犯・防災情報や有事の際の助け合い、地域におけるユニークな店舗やサービスの紹介、小中学校、幼稚園・保育園などの教育施設、病院などのクチコミといった情報が受け取りにくくなっている。
だからこそ同社は、地域という物理的なくくりにおける“近所”の声をデジタル化させることに着目しているという。
そんなマチマチが、消防機関と提携するのは初めてのこと。
もともと東京消防庁では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で対面による防災訓練やキャンペーンの実施が難しくなったことから、インターネットを中心に防災情報の発信に取り組んできた。
第一弾としては、2020年7月16日から話題のNintendo Switchソフト「あつまれ どうぶつの森」を活用して防災情報の発信を開始。ゲーム内にある「ボウサイ島」より、熱中症防止対策をはじめとする様々な防災情報等を発信している。
【新しい防災情報の発信をはじめます!】#あつまれどうぶつの森 のボウサイ島に職員を移住させ、島の安全を見守りながら、防災情報を発信していきます!防災に興味を持って、行動に移してもらえることを願っています。準備ができ次第マイデザインの公開も行う予定です!#防災の日 #防災週間 pic.twitter.com/VoNDlqqAij
— 東京消防庁 (@Tokyo_Fire_D) July 22, 2020
マチマチとの取り組みは、その第二弾というわけだ。
今回の協定により、東京消防庁はマチマチを活用して、防災訓練や防災知識の情報を各地域ごとに発信することが可能となり、またマチマチ上で、東京消防庁の管轄52市区町村で展開している「災害情報共有コミュニティ」を活用し、住民同士の共助を中心とした防災の強化をおこなっていくという。
- 平時:防災訓練の認知度向上、防災知識の共有
- 台風、地震などの災害時:近隣住民同士の共助、被災状況の共有
ちなみにマチマチは、これまでも台風や地震、新型コロナウイルス等の災害発生時において、近隣住民同士の情報共有や助け合いのためのコミュニケーションツールとして積極的に有効活用されてきた。
例えば2019年の台風15号や19号接近時には、川の水位上昇や浸水といった近隣の被災状況のほか、避難所のキャパシティ等の情報、防災士の資格を有する利用者から台風接近時の準備情報、開いているお店や浴場の無料解放情報等が住民同士で共有された。
また新型コロナウイルス感染拡大時では、地域の感染情報はもとより、在宅勤務時の過ごし方や近隣の店舗・公共施設等の混雑情報、マスクを始めとする生活物資の在庫情報、テイクアウト・デリバリー対応店の情報等が共有されていた。
このような地域特化型SNSの災害時発生活用は、例えば米国でも盛んであり、具体的には2011年に米サンフランシスコで立ち上がった「Nextdoor」が多く利用されている。11か国260,000以上の地域で活用されているプラットフォーム力を活かして、新型コロナウイルス感染拡大時においてはアメリカ疾病予防管理センターや各国赤十字等との情報連携と発信の役割を担っていた。
都市防災の専門家である東京大学大学院の廣井悠准教授も、下記のように述べて、災害時等のような危機コミュニケーションのプラットフォームの必要性を説いている。
「首都圏直下型地震の際の死因の多くは火災によるものと予想されています。地震火災はどこで発生し、どう広がるかわかりません。台風や地震などの災害時には、地域のみんなで情報共有をすることが重要です。」
TwitterやFacebook、およびLINEなどは広範囲なデジタルコミュニケーションが可能な一方で、特定地域への継続的な情報リーチが難しい。同じくテレビや新聞、ラジオといったマスメディアも、刻一刻と変わる災害状況にリアルタイム性を持って必要な人に情報を伝達をするのは不得手である。
だからこそ、あらかじめ地域を絞ったマチマチのようなシステムが今後ますます重宝されることは、グローバルな事例が証明していると言えるだろう。
周辺住民のWell-beingな生活を加速させるツールとして、自治体担当者はマチマチの導入を検討してみてはいかがでしょう。
以下、リリース内容となります。