記事の要点
・育児記録アプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」が、大幅なデザインリニューアルと、新機能「オンライン緊急度チェック」をはじめとする機能強化を含めたアップデートを実施。今回はiPhone用アプリ(iOS版)のみへの対応だが、Android版も鋭意対応中。
・新機能「オンライン緊急度チェック」では、子どもの体調変化や症状に関して、気軽にチェックできる画面。医療監修された質問内容にチャット形式で回答していくことで、病院の受診目安や緊急度を導き出すことが可能となる。
・既存機能についても、例えば育児記録機能について、記録アイコンが20種類あったものが、1.5倍の30種類に拡張。画面配置も変更され、片手での操作を行いやすいようにバージョンアップしている。
LoveTechポイント
7年前にリリースされた「パパっと育児@赤ちゃん手帳」アプリのドラスティックなデザインリニューアルということで、運営会社であるファーストアセントのCEO・服部さまにお話を伺いました。
短期的には既存ユーザーの負担になる可能性がありつつも、中長期的には間違いなくプラスになって家庭のペインポイントを解消するプラットフォームになりうる点が素敵であり、そのために大胆な意思決定をされた点がLoveTechだと感じます。
編集部コメント
育児記録アプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」(以下、パパっと育児アプリ)が、大幅なデザインリニューアルと、新機能「オンライン緊急度チェック」をはじめとする機能強化を含めたアップデートを実施した。今回はiPhone用アプリ(iOS版)のみへの対応だが、Android版も鋭意対応中とのことだ。
パパっと育児アプリとは、出産後の育児をラクにしてくれる機能が詰まった無料サービス。
当初は育児メモアプリとして、授乳や睡眠、身長・体重、予防接種等の“記録機能”をベースにスタートし、2018年にはAIが赤ちゃんの泣き声診断をする機能を搭載するなど、子育てパパ・ママにとっては必要不可欠な情報サービスへと着々と昇華されている。まさに、運営会社であるファーストアセントのCEO・服部氏の思いが具現化したサービスと言えるだろう(以下は2018年時点のインタビュー記事)。
[clink url=”https://lovetech-media.com/interview/firstascent20180731/”]
そんな同社では、パパっと育児アプリで収集した育児ビッグデータを用いて研究開発を実施。現在、その研究結果に基づいた新サービスの提供を計画しているようなのだが、その前段階として、まずはユーザー体験をリフトアップするべく、メイン画面からの大幅なデザインリニューアルおよび機能強化を実施した。
まずは「育児記録」機能について。
これまで授乳、ミルク、オムツ替え、睡眠などの記録アイコンが20種類あったものが、1.5倍の30種類に拡張。全画面に育児記録アイコンが配置されていたが、片手での操作を行いやすいように画面の下部に配置され、代わりに育児記録のタイムラインの表示領域を拡大している。ちなみに、下部のアイコン一覧はスワイプすることで表示数を増減させることができるので、前バージョンと同様の使い勝手になるよう工夫されている。
- 【食事】:母乳、哺乳瓶(ミルク、搾母乳)、搾乳、離乳食、のみもの、おやつ
- 【排泄】:おしっこ、うんち、オムツ替
- 【健康】:体温、身長体重、予防接種、病気、薬、吐く、咳、発疹、ケガ、
- 【記録】:寝る、起きる、お風呂、予定、日記、はじめて、予定、登園、降園、夜泣き、その他
- 【その他】:睡眠、夜泣き、おふろ(沐浴)、お出かけ、泣き声診断
また、先述した「泣き声診断」機能はリリース以降非常に人気なこともあるので、これまでは20種類のアイコンの一つとして整列して表示されていたが、新バージョンではすぐに選択できるよう、常に目立つ位置に配置されている。
次は「まとめ」機能について。
ここでは、日ごと・週ごとの育児記録のまとめをグラフで振り返ることができる。日ごとでは過去7日間の育児記録と比較して1日の進捗がわかり、週ごとでは、睡眠・食事・授乳・トイレ・その他の育児記録が並び、“生活リズム”を振り返るのに役立つ。
ちなみに、画面中央にある「ミルクレポートを見る」ボタンを押すと、赤ちゃん(乳児期)で特に大切なミルクの摂取量に関するレポートを別グラフで表示・確認することも可能だ。
次は「成長記録」機能について。
こちらは、記録した育児記録から様々な子どもの成長を振り返ることができる画面。母子手帳にある記録のように、身長・体重の記録から形成される成長曲線を、「3歳まで」および「6歳まで」の平均と比較する形でチェックすることができる。母子手帳のような断片情報ではなく、日々の情報からリアルタイムで成長曲線をチェックできる点がポイントだ。
また、予防接種スケジュールについても、日本小児科学会の推奨するスケジュールを参考に推奨スケジュールを作成しているので、該当画面から簡単に推奨日程をチェックして予防接種の予定を登録することができる。
さらには、数字上の記録だけではなく、写真や日記のような定性情報も成長記録機能として一覧参照できるので、まるでアルバムを見ているかのような形で振り返ることができる。
そして、今回のバージョンアップで新たに追加されたのがこちら、「オンライン緊急度チェック」機能である。
こちらは、子どもの体調変化や症状に関して、気軽にチェックできる画面。医療監修された質問内容にチャット形式で回答していくことで、病院の受診目安や緊急度を導き出すことが可能だ。
また、緊急度が高い場合には各地域の休日夜間診療窓口を検索できるように設計されている。コロナ禍でかかりつけ医に対しても気軽に受診しにくい状況があるからこそ、このような目安チェックは、パパ・ママにとって有難い機能と言えるだろう。
<監修医師>
- 三井俊賢 先生(医療法人社団 育心会 理事長/日本小児科学会認定 小児科専門医 小児科指導医 医学博士)
- 鳴海覚志 先生(日本小児科学会認定 小児科専門医 医学博士)
さらには、本機能の追加にあわせて、位置情報をもとに最寄りの自治体の「子育て相談窓口」を検索する機能も実装。一人で抱え込みがちな子育てに対して、より開かれた相談文化醸成に向けた導線設計がなされている点も、特記したいバージョンアップポイントである。
そして、これらの情報は「リアルタイムデータ共有」機能によってママ・パパ間で自動的に共有が可能ともなっており、夫婦間トラブルの原因としてあげられる両親間の情報格差の是正についても配慮がなされている。
このように、大幅なデザインリニューアルと機能強化がなされたパパっと育児アプリだが、ユーザーからの反応も様々だ。例えばAppStoreの評価とレビューを見てみても、バージョンアップ版が配信開始された8月19日以降をチェックすると、機能刷新をポジティブに捉える声もあれば、前のバージョンの方が使いやすかったという悲痛な声をあげる方もいる。
「最近リニューアルされて、すごくよくなりました!旧バージョンでは開始時刻と終了時刻が連動しないのがフラストレーションでしたが、ばっちり改善されています。インターフェースもかっこよくなりましたね。育児記録のモチベーションが上がりました!ありがとう!!」
「上の子のときからずっと使っていて気に入っていたのに、別のアプリになってしまい、本当に残念!」(一部抜粋)
「今回のアプデでデザインも機能面も大幅に変更され驚きました。
母乳タイマーが実装されたり、排泄関係の項目の時間入力関連がシンプルに改善されたり、入力できる項目自体も増えますます使いやすくなったと思います。
ただ、①コメント欄でできるコマンドが削除のみ(以前はコピペが可能だった)となったこと、②夫がアンドロイドユーザーのためかアプデされず新規の「おやつ」などを入力できないことなどが気になります。双子育児中の身としては、離乳食の内容など双子間で共通する内容でもいちいち手入力しなければならないのは非常に面倒で…。
それ以外は非常に良いアプリなので、次のアプデで改善されることを期待します。」
※いずれも「パパっと育児@赤ちゃん手帳」のレビューより引用抜粋
なぜこのような大幅なデザイン&機能のバージョンアップを決行したのか。その点について、ファーストアセントCEOの服部氏は以下のようにコメントしている。
服部氏:「率直に申しますと、前のバージョンが7年前のデザインをベースに作られたものだからです。iPhone5くらいまでのスマホサイズを前提にデザインされたものなので、昔であれば片手で操作しても届いたわけですが、今の大きな画面を前提にすると、片手で操作できないわけです。使い勝手を考えて、今のスマホに最適化したUIに再設計しました。」
では、なぜこのタイミングだったのだろうか。
服部氏:「これまでは“データで新しい価値や世の中の進歩を生み出す”というコンセプトに重みを置いて、アプリ提供をしていました。つまり、ユーザーの皆さまによるアプリ利用データを通じて、どんな意味があるのかといった検証に、事業を集約していた形になります。
そうやって色々なことを進めていく中で、ようやく自分たちなりの答えが出てきたので、それを実現するためにユーザーのUXを最高にするべく、まずはUIに再設計に着手しました。」
利用率の高いサービスのデザインを刷新すると、必ずといって良いほど「戻してほしい」というフィードバックが来るもの。今回もそれがレビューコメントとして現れた形となるわけだが、それについてどう感じているのか。これについては、服部氏も「覚悟していた」という。
服部氏:「ドラスティックに変えるので、率直にこうなることは予想していたのですが、思っていたよりかはネガティブなコメントが少なかったのが、率直な印象です。
もちろん、想定外はいくつかあったのは事実ですが、それも多くはなかったです。
一方で、新規ユーザーの継続率や育児記録の登録数などを見てみると、数字上はその効果が如実に現れているので、やってよかったなと思っています。
これから予定している新しい取り組みをやるためにも、旧デザインだとどうしても不自然になってしまう部分があるので、今回で一気に変えなければ、と最初から思っていました。
一時的にご不便をおかけしてしまいますが、ぜひちょっとだけ我慢して、新しいバージョンに慣れていただければと思います。」
パパっと育児アプリでは、今後一年以内に、家庭を支援するような新サービスを出していく予定だという。
また、それに向けてクラウドファンディングも実施予定とのこと。
ファーストアセントでは、自社サービスの成長という狭義のサービス展開のみならず、業界団体である「子育Tech委員会」への参画や、他社終了サービスユーザーからの移行対応など、より俯瞰した目線で広義のサービス展開を続けてきた。非常にLoveTechな企業である。
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ウィズコロナは「変化への対応力」が問われる時代だからこそ、今回の大幅バージョンアップについても、ぜひポジティブな目線で利用をされてみてはいかがでしょう。
第一原理的な目線でみると、確実に使いやすくなっている。これは、アプリを利用している筆者からも明らかだ。
以下、リリース内容となります。