記事の要点
・環境移送技術を活用する東大発ベンチャーの株式会社イノカが、株式会社商船三井と共同で、モーリシャスの環境回復・地域貢献のための取り組みを実施することを発表。
・今回の連携はモーリシャスの環境回復を目的としており、世界的に減少を続けているサンゴを保護し残していくことで地域への貢献を目指していく。具体的には、イノカが持つサンゴ礁への知見を活かし、アドバイザリーとして協力・支援を行う。
・環境移送とは「実際の海を切り取り、それを生態系ごと陸上に移動させる」行為のことで、つまりは「水環境のハイクオリティな陸上再現」であり、同社ではこのことを総じて「イノカの箱舟」と命名している。
LoveTechポイント
モーリシャス島沖での座礁に伴う深刻な環境汚染が、地域の生態系を刻々と破壊している状況は非常に胸が痛みます。
資本の規模を問わず、現状の打開に向けて積極的なオープンイノベーションを進めている点が、LoveTechだと感じます。
編集部コメント
環境移送技術を活用する東大発ベンチャーの株式会社イノカが、株式会社商船三井と共同で、モーリシャスの環境回復・地域貢献のための取り組みを実施することを発表した。
商船三井がOKIYO MARITIME社(長鋪汽船株式会社の子会社)から傭船していた、ばら積み貨物船WAKASHIO(わかしお)が、中国からシンガポール経由でブラジル方面に向かう途中の日本時間7月26日に、モーリシャス島沖での座礁により船体が損傷。救助作業中の日本時間8月6日に燃料油が流出した事故への対応である。
大量に流出した重油等により、付近に深刻な環境汚染を引き起こしている状況に、胸を痛めている方も多いだろう。
ただでさえコロナ禍によって観光業への打撃を被った上に、今回の座礁事故に伴う重油流出による環境汚染で二重の痛手を被ったモーリシャス政府は、「環境上の緊急事態」を宣言。フランスや日本をはじめ、様々な国際的支援の輪が広がっている。
モーリシャス政府によると、重油流出の影響は島の海岸線の5%以下とのことだが、付近では魚やカニなどの生物の死骸が多く発生している上に、中長期的にはサンゴの窒息やマングローブの枯渇も懸念されており、原因究明や再発防止策の策定と並行して、油の回収や付着油の除去など環境資源の保護活動が最優先で行われている。
例えば商船三井が主導で実施する「自然環境保護・回復プロジェクト」では、マングローブ保護・育成プロジェクトやサンゴ礁回復プロジェクト、海鳥の保護・希少種海鳥の研究、モーリシャス自然環境回復基金(仮称)の設立を推進。
実は環境省が、中長期の環境モニタリングや環境再生方策の検討について、モーリシャスに専門家を派遣して援助活動を行っていることから、こうした動きとも連携しながら進めていくとしている。
ここで多くの企業、大学、研究機関等との提携が推進される中、イノカもその1社として連携したというわけだ。
イノカといえば、世界におけるサンゴの危機に着目し、AI / IoTの知見を組み合わせた「環境移送技術」の研究開発を進め、地球の生態系ドクターを目指している東京大学発スタートアップ企業である。
環境移送とは「実際の海を切り取り、それを生態系ごと陸上に移動させる」行為のことで、つまりは「水環境のハイクオリティな陸上再現」であり、同社ではこのことを総じて「イノカの箱舟」と命名している。
同社事業詳細については、以前取材したこちらの記事でもご紹介している。
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今回の連携はモーリシャスの環境回復を目的としており、世界的に減少を続けているサンゴを保護し残していくことで地域への貢献を目指していく。具体的には、イノカが持つサンゴ礁への知見を活かし、アドバイザリーとして協力・支援を行うとのことだ。
また、プロジェクトの一環として実施される上述の「サンゴ礁回復プロジェクト」では、アドバイザリーとして協力・支援し、プロジェクト推進のために、大学や研究機関等と連携しながら現地NGOと共同での環境回復を検討していく予定だ。
- 研究者と商船三井のサイエンスブリッジコミュニケーション
- 研究者と協議のうえ方針を決め、現地調査のうえ、現地実装を検討
被害を受けた生態系の回復には長い時間がかかる可能性があるが、対応が早ければ早いほど被害は少なく済む。
今回のイノカ参画を含め、さらなるオープンイノベーションを推進しての一刻も早い応急対応、そして恒久対応が望まれる。
以下、リリース内容となります。