記事の要点
・一般社団法人不動産テック協会が、位置情報テクノロジーを活用するスタートアップ・株式会社Geoloniaと共同で「不動産共通ID」β版の提供を開始。
・「不動産共通ID」とは、各社で管理方法や管理表記の違う不動産情報に対して、同一の物件を示す情報に付与される一意のIDのこと。住所や物件名などの不動産情報のデータ連携にかかるコストを大幅に削減し、物件の特定等が容易となるインフラ構築を目指す。
・リリース時点で46社が不動産共通IDの利用登録中。今後は年内100社を目標とし、不動産の基盤データを構築していく予定。
LoveTechポイント
オープンソースとAPIエコノミーによって、重複と手間のかかるリアルワールドが、どんどんとなめらかになっていく。
そんな未来を予感させる、LoveTechなニュースだと感じます。
編集部コメント
一般社団法人不動産テック協会が、位置情報テクノロジーを活用するスタートアップ・株式会社Geoloniaと共同で「不動産共通ID」β版の提供を開始した。
「不動産共通ID」とは、各社で管理方法や管理表記の違う不動産情報に対して、同一の物件を示す情報に付与される一意のIDのこと。
そもそも、世の中に出回っている様々な不動産に関する情報は不動産事業者ごとに管理されているわけだが、表記方法が統一されていないため、同一の物件の住所でも「三丁目」と「3丁目」といった表記ゆれや誤入力が発生している。そのため同一物件の特定が難しく、各社が持つ不動産情報の連携が困難であるといった課題がある。
これに対して今回の不動産共通IDを付与することで、表記ゆれがある住所と物件名が入力されても、同じIDがレスポンスされる特定技術によって物件の特定がスムーズになり、住所や物件名などの不動産情報のデータ連携にかかるコストも大幅に削減できることが期待されている。
また、この問題は不動産業界だけでなく、様々な領域へと幅広く応用することが想定されているという。
例えば物流を考えた際に、誤った住所や古い住所で登録されていて郵送物が返ってきてしまう場合、調査と再送のために人的コストがかかっているわけだが、不動産共通IDで管理されることで常に正しく最新の住所情報が手に入ることになるので、従来よりもスムーズに郵送物が届けられようになる。
また民間利用だけでなく、行政機関での活用も期待されている領域の一つだ。
例えば長らく社会問題となっている空き家問題について。国が大量にもつ衛星画像の夜間光街画像により、夜間に灯がついていない、つまりは空室の可能性が高い物件を不動産共通IDと緯度経度で紐つけることで、物件名を特定する事ができることが想定される。
この不動産共通IDは、2021年3月15日に事前利用登録が開始されており、大手不動産会社や不動産テック企業、公的機関など、合計46社が提供開始時点で利用登録中となっている。
プランと料金は下記の通り。不動産共通IDの取得自体は無料プランででき、正規化済みの住所と緯度経度情報を含めたい場合は、有料プランに申し込むことで利用できるようになるという。
◆無料プラン
「参照API」では、IDの修正や統合があった結果、IDが新しくなっている場合に正しい不動産共通IDを返す。
◆有料プラン
緯度経度情報はデータベースなどに保存をすることはできないが、30日まではキャッシュ(一時保存)が可能。有料プランの料金は以下の通り。
短期的な目標としては、まずは年内100社を目標に不動産共通IDの利用を広めていくという。
その上で、地図開発を得意とするGeoloniaと共同で不動産の基盤データを構築していくことで、不動産業界全体における情報連携を推し進め、データ活用の幅を広げていくという流れだ。
実際に、ライナフのスマートエントランス「NinjaEntrance」とヤマト運輸のマルチデジタルキープラットフォームとを連携した再配送問題対策の取り組みなど、複数のプロジェクトでの活用が早々に予定されている。
オープンソースとAPIエコノミーによって、重複と手間のかかるリアルワールドが、どんどんとなめらかになっていく。そんな未来を予感させる、LoveTechなニュースである。