記事の要点
・華和結ホールディングスが投資・運営するAIプラットフォーム「AiBank.jp」が、AIで和牛を識別する鼻紋認証技術を開発し、特許を取得。
・高度のニューラルネットワークAIによる鼻紋認証技術の特許取得は日本初。
・人の指紋と同じく、牛などの動物にも個体ごとに異なる独特な鼻紋があり、この認証技術によって、手動で行われていた従来の家畜管理方法に大きな進歩をもたらすことが期待されている。
LoveTechポイント
農業のDXは様々な分野で加速化しており、今回の鼻紋認証技術のように、限定された分野での技術革新も増えています。
多くの和牛飼育管理者が認知して、作業効率化と生産性向上につながることを期待したいと思います。
編集部コメント
近年、海外でも和食文化が浸透し、和牛は高級食材として世界中で知名度が上昇。その需要拡大に伴い、供給側もより高度な品種管理を求めるようになってきている。
ここで重要になるのが、牛の鼻にある「鼻紋」だ。
要するに各個体によって鼻の「しわ」が異なっているからこそ、人間にとっての指紋のようなものとして、流通時における個体識別や証明等に活用されている。
従来より鼻紋採取は、ローラーにインクをつけ、牛を保定した上、インクを素早く牛の鼻に塗り、最後に和紙を牛の鼻に当てて鼻紋を写すという方法が採用されている。
だが、このような原始的な方法だと、下記のような課題が生じているという。
- 一連の操作は完全手動で、熟練した作業員でないと行うことができない。
- 鼻紋の採取に人手と時間が掛かる。
- 牛にストレスを与え、口蹄疫などの病気にかかる可能性もある。
- 採取データは紙での管理のため、紛失や破損、偽造のリスク。
- 個体識別の鼻紋の照合は人目によって行われ、誤差が生じやすい。
これらの課題を解決するのが、華和結ホールディングス株式会社が運営するAIプラットフォーム「AiBank.jp」による鼻紋認証技術である。
そもそもAiBankとは、「AIで人々の生活をより便利に、豊かにする」をミッションに、世界中の優れたAI技術を日本に展開するプラットフォーム。AIソリューションの提供・AIに関するコンサルティング・AI Labという3つの事業分野に分かれており、スピーディーかつシンプルなハイクオリティーなAI製品の提供を得意としている。
そんなAiBank.jpが提供する鼻紋採取方法はいたってシンプル。スマホカメラで牛の頭をスキャンするだけだ。
スキャンデータが牛の鼻を特定し、鼻紋を採取。デジタル識別情報をデータベースに保管するので、個体識別の際もスマホカメラで牛の頭をスキャンすれば、瞬時にデータベースと照合して、自動的に認証が行われるという。
私たちの社会生活におけるeKYC(オンライン本人確認)に近いイメージと言えるだろう。とても簡単なので、熟練した作業員出なくとも、短期アルバイト等で作業の代替が可能と言える。
また非接触での鼻紋採取・照合を実現したことで、牛へのストレスも軽減され、病気になるリスクも低減。データ管理のため紛失や破損、偽造のリスクも減り、照合時の誤差も大幅に低減する。
さらに、成牛の鼻紋を、仔牛時に採取した鼻紋と照合することもできるという。
結果、農家の作業時間とコスト負担を従来の1/20まで削減することが期待され、全体的な生産効率の向上に大きく貢献すると想定されている。
今回、このニューラルネットワークAIによる鼻紋認証技術は、日本で初めてとなる特許を取得(特許第6795243号)。問い合わせの増加に合わせて、現段階では下記3領域での展開を検討中だという。
- 和牛の飼育管理、生産追跡
- 犬や猫など他の動物の認証と管理。ペットの保険認証、野良動物の管理などでの活用
- ブロックチェーン技術による和牛のデジタル仮想通貨化。農産業以外の国内外投資家も便利かつ安全に投資可能、農家の資金繰り改善や収入向上に期待
農業のDXは様々な分野で加速化しており、今回の鼻紋認証技術のように、限定された分野での技術革新も増えている。
多くの和牛飼育管理者が認知して、作業効率化と生産性向上につながることを期待したい。