産業集積戦略の設計方法
今回の深谷市による取り組みは、非常にサステナブルな形での設計がなされていると感じる。
最後に、このような体制や仕組みどのように構築をされていったのか、担当課である産業ブランド推進室に問い合わせをしたところ、全ては同市が発行する「アグリテック集積戦略(2019年3月発行)」に記載されていた。
http://www.city.fukaya.saitama.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/79/AGRITECH-FUKAYA_finish.pdf
まずは国内外において産業集積が行われている地域として先行研究の対象となっている主要地域を抽出し、各地域が集積に至った経緯やきっかけ、取り組んだ施策等を整理する。以下、各産業集積地域における産業集積のポイントが抽出されている。
出典:アグリテック集積戦略(2019年3月発行) 15ページ
そこで整理した情報を踏まえて、産業集積の実現に向けて実施効果が得られると期待される、行政による産業 集積施策の選択肢(産業集積オプション)を抽出する。
出典:アグリテック集積戦略(2019年3月発行) 16ページ
最後に、抽出した産業集積オプションと、深谷市が産業集積を実施する上での強みや課題を踏まえた上で、深谷市における産業集積戦略の方向性を整理するという流れだ。
出典:アグリテック集積戦略(2019年3月発行) 28〜29ページ
これらを整理した結果、「儲かる農業都市 ふかや」が産業ブランディング方針として設定され、集積戦略が目指す産業振興の目標として、今回発表された「アグリテック集積都市 DEEP VALLEYの実現」として昇華されたわけだ。
なお、定量的目標は以下に設定されている。
編集後記
今回の深谷市によるDEEP VALLEY宣言を事前にチェックした中で、アグリテックというバズワード単体での企業誘致施策実施は、持続性に課題がありそうだな、というのが取材前の本音でした。
そんな中での今回取材を経て、アグリテック集積による企業誘致は、深谷市全体でのブランド戦略の一部であり、経済循環も含めた大きな画を産学官連携して描いていることが、非常に印象的でした。
特に、国内外を問わず様々な他地域産業集積の事例を分析し、「深谷モデル」として独自に産業集積設計された点は、今後の他自治体にとって大いなる参考事例になると感じます。
まずは今年7月16日〜8月末まで応募を受け付け予定の「DEEP VALLEY Agritech Award 2019」ですね。
名称としては「Agritech」と掲載されていますが、あくまで「深谷市の農業課題の解決や改善に向けた取組ができる個人・法人(プロダクト部門)」「深谷市および推進パートナー等と連携した取り組みが実施できる個人・法人(コンセプト部門)」ということで、何もITやバイオテクノロジーといった「テック」に強くこだわる必要はないとのことです。
ぜひ、幅広い事業者による応募が集まることを願っております!