自由で幸せ溢れるイバフォルニア・ビーチを目指して
そんなXフォルニアの最新事例として勃興したイバフォルニア・プロジェクトとは、いったいどのようなものなのか。それを理解するには、これまでの阿字ヶ浦海岸が辿ってきた歴史を振り返る必要がある。
東洋のナポリは何処へ
1980年代の阿字ヶ浦海岸の様子(クラウドファンディングプロジェクトページより引用)
阿字ヶ浦海岸と聞いて、皆さんはどのようなイメージを持たれるだろうか。
おそらく、年代によってその印象は変わってくるだろう。
かつて阿字ヶ浦海岸といえば、日本有数の海水浴場であった。1980年代にはひと夏で300万人以上もの海水浴客が訪れ、巷では「東洋のナポリ」と呼ばれ親しまれていた。
しかし、1985年に発表された常陸那珂国際港湾都市構想を元に進んでいった、阿字ヶ浦海岸北側での常陸那珂港開発により、ビーチの浸食に伴う砂浜の減少が起こり、2000年代後半にはかつての数から10分の1の30万人まで激減してしまう。
2000年代後半の阿字ヶ浦海岸の様子(クラウドファンディングプロジェクトページより引用)
さらに追い討ちをかけたのが、2011年3月11日。
港の沖堤防により津波被害自体はなかったものの、福島第一原発事故に伴う風評の影響からか、2011年の夏には1万7000人程度という過去最低を記録する。
現在は少し持ち直し、2018年は約9万人まで回復したが、最盛期には遠く及ばないというのが現状である。
そんな阿字ヶ浦海岸の今後をどのようにしていったら良いかを考える場として、地元の若手経営者を中心に2018年初春に立ち上がったのが「ひたちなか市の海岸のあり方を考える会」であった。海水浴低迷に危機を感じているひたちなか市観光協会が始めた勉強会であり、地元から斬新なアイデアを発案してもらうことを目的として発足されたものであったという。
そこで、現在のプロジェクト原案が提出され、イバフォルニア・プロジェクトとして正式にスタートすることとなった。
夏シーズンのみの海水浴からの脱却とビーチパーク構想
イバフォルニア・プロジェクト企画推進メインメンバーの皆様
プロジェクトを通じたイバフォルニアの目指すべき姿、それは、「茨城の海岸を、カリフォルニアのような自由で幸せ溢れる海岸へ」というスローガンに現れている。
日本で「海で過ごす」と聞くと、大抵の人は「海水浴」をイメージする。一方、諸外国のリゾート地域では、ビーチそのものが人の集まる場所として開発されており、散歩道やベンチ、芝生、遊具が整備され、居心地のいい空間設計がなされている。結果として夏だけのスポットではなく、年中通して人が集う場となっている。
そこにはランニングやサイクリングに汗を流す人もいれば、木陰で寝そべりながら読書をする人もいる、ピクニックをする親子もいれば、犬と一緒に散歩する老夫婦もいる。夕暮れ時にはどこからか楽器を鳴らす音が聞こえてきて、波音と混ざり合って素敵な空間を演出する。
-「イバフォルニア・プロジェクト」クラウドファンディングサイトより
そんな海岸空間を作るための中長期的な取り組みが同プロジェクトであり、具体的には以下のような活動を進めていくとのことだ。
- ビーチの改良
- ヤシの木植樹
- ビーチ沿いボードウォーク(遊歩道)整備
- 芝生の整備、海賊船型大遊具を含めた海岸公園の新設
- ランニングやサイクリングロードの整備
- ビーチハウス型複合施設や海の家改良
- ドッグランやドッグカフェの設置
- 音楽など、イベントステージの常設
- トレーラーハウスやコンテナ式のフード、ショッピングエリアの設置
初期企画書に掲載されたビーチパークのイメージイラスト
通称「イバフォルニア・ビーチパーク」と呼ばれる、全体的に洒落た町並みをつくる構想となっており、これらハード面のものは、2020年3月を目標に国や県、市に提言していくと言う。
そしてこの第一弾として設置された大きな催しが、今回のおてつたびでも支援をすることとなった「イバフォルニア・マーケット in 阿字ヶ浦」である。
イバフォルニア・マーケットとは
海岸の再開発を伴う大きな構想であるイバフォルニア・プロジェクトであるが、いきなり家や仕事場、公園、広場などを作るといったことはできない。自治体や地元住民含めた様々なステークホルダーを巻き込んでの合意形成と、実に多くの手続きが必要となるからだ。
しかし、その進捗だけをただ待つのみだと、せっかくの集まった熱量が霧散してしまい、プロジェクト自体が有名無実化してしまう。
そこで企画されたのが「イバフォルニア・マーケット」である。
一言で申し上げると、海岸沿いで開催されるマルシェであり、色々な方が「自分の好きなモノ・コトを発信できる場所」として考えられたマーケット企画である。
この期間限定のマーケットを開くことで、商売や遊ぶ場所を作り、「海で一日過ごすこと」に幸せを感じてもらうことを目的としている。
実はこのイバフォルニア・マーケット、クラウドファンディングサイトのReady forでプロジェクトページが立ち上がり、今年の2月に、目標額の150%以上の支援を得て成立している。
このような背景で企画されたイバフォルニア・マーケットの開催は5月18日(土)〜19日(日)の2日間で行われた。
初めての取り組みなので、来場者や出店者がちゃんと集まるのか、といった不安がメンバー内にあったものの、蓋を開けてみると天候にも大変恵まれ、2日間の総来場者数は約3,000名、出店者数も57組となった。
大盛況である。
次回、vol.2記事では、実際のおてつたびの活動を通じた、このイバフォルニア・マーケットの様子をご覧いただこうと思う。
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