写真左)株式会社ネットマーケティング代表取締役社長兼CEO 宮本邦久氏、写真右)青森県三村申吾知事
人と人だけでなく、地域と人もつなげるOmiai
「マッチングアプリは異性同士をつなげるだけではなく、地域と人をつなげるプラットフォームにもなりうる」
これは、約半年前からの恋活・婚活マッチングサービス「Omiai」の事業展開を取材していて感じることだ。
Omiaiを展開する株式会社ネットマーケティングでは、昨年8月に岡山県と連携して自治体×マッチングアプリによる結婚支援および移住支援施策をスタートさせた他、今年の2月にも島根県出雲市と同様の取り組みを実施している。自治体に強いマッチングサービスといえばOmiaiになっており、各地域の少子化対策関連部署および移住関連部署での認知も少しずつ向上しているように感じる。
今年の3月、今度は新たに青森県との連携が発表され、青森県出身の県外在住者や青森県移住希望者へ向けた婚活&UIJターンイベントのほか、青森県在住の独身者と青森県移住希望の独身者の婚活ツアーとパーティーも企画しているという発表がなされた。しかも、同社代表取締役社長兼CEOの宮本邦久氏と、青森県知事の三村申吾氏のツーショットと併せてである。
3月23日(土)夜に、東京・新橋の「青森ねぶたワールド 新橋店」で開催された「青森Omiai恋活Party」の様子と併せてご覧いただきたい。
Omiaiが地方を支援する理由
恋活・婚活マッチングサービスの老舗として、これまで異性との出会いを紡いできたネットマーケティングがなぜ、自治体支援をしているのか。背景としては地方移住への関心の高まりがある。
現代ではコミュニティなど繋がりが欲しい、自分たちの生き方を反映したいという若者が増えており、2018年6月に実施された国土交通省の調査では、都会に住む20代の4人に1人が地方移住に関心があるというデータが出ている。
平成29年度国土交通白書より
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h29/hakusho/h30/html/n1231000.html
少子高齢化に併せて人口減少フェーズに突入している日本において、上記のような若者のニーズに呼応する形で「少子化対策」に貢献したい。そんな思いが原動力となり、同社ではOmiaiを活用した地方創生の取り組みをスタートさせた。
年齢や性別、住んでいる地域に関係なくマッチングアプリが出会いのインフラとして活用される世の中になれば、地方が抱える課題を解決できるというビジョンを掲げ、この取り組みは行われている。
ポイントは、Omiaiに登録された属性豊富な利用ユーザーデータベースである。
例えば、出会いや結婚を希望する青森県出身、東京在住、年収が300万円以上、年齢が22〜30歳の男性、という条件に合致する対象者をピンポイントで抽出することができる。Omiaiではアプリ内でこれらの内容を登録できる専用項目があり、積極的に活動しているユーザーであればあるほど、これらの項目の入力率も上がる傾向にあるからだ。
これにより、一般的に自治体が不得意とする集客面や、施策実施後のアフターフォローなどについて、Omiaiユーザーへのピンポイント訴求が可能なのである。
これまで実施された岡山県や島根県出雲市との連携事例でも、同社は東京での婚活イベント実施における集客サポートや、その後の移住施策におけるアフターフォローなどを役割分担として担ってきた。
東証一部上場企業という社会的からの信用のもと、運営の歴史が長く、安心・安全への設計がしっかりとなされているサービスだからこそ、自治体事業との親和性も高いと言える。
日本中に幸せな人を作れる世界を実現したい
今回の取材に併せて、以下、株式会社ネットマーケティング代表取締役社長兼CEO 宮本邦久氏よりコメントを頂戴した。
「これまでの出会いは職場や合コンなど、かなり限定的でした。
『Omiai』は忙しくて出会いに対してなかなか時間を取れない人、普段の生活で出会いがない人、お酒が飲めない人や初対面のコミュニケーションが苦手な人など、”本当は恋愛したいけどできていない”さまざまな状況・環境にある方に出会いのきっかけを提供しています。
隙間時間を利用して自分のタイプや条件を登録することにより、理想に近い人に出会える素晴らしいソリューションだと思っています。
地方には昨今の婚姻率低下や少子高齢化といった社会的課題があります。
『Omiai』はそういった地方がアプローチしたいけれどつながりを持てていない首都圏の若者を中心に広く利用され、支持していただいているサービスです。
『Omiai』がその両者の架け橋となれば、首都圏だけではなく、地方での出会いやUIJターンの増加など、さまざまな方法で地方創生へ貢献できると考えています。
僕は『Omiai』という出会いのサービスを通じて、日本中に幸せな人を作れる世界を実現したいのです。」
都道府県による結婚支援の取り組み
それでは、地方自治体で具体的にどのような結婚支援施策がとられているのだろうか。Love Tech Mediaが都道府県営の事業体についてリサーチしたところ、「結婚支援ポータルサイトの運営」「物理的な結婚支援センターの設置と運営」「独自コンテンツの企画・制作」の大きく3軸での事業内容が確認できた。
<結婚支援ポータルサイトの運営のコンテンツ例>
- 各市区町村で企画される関連イベントやセミナーの紹介
- 婚活やライフデザイン啓蒙のための情報発信(記事投稿・メルマガ配信等)
- 成婚者の事例報告
- イベント等事業者の紹介
<物理的な結婚支援センターでのコンテンツ例>
- 独身男女に対する個別相談
- 独身男女のマッチング(多くの自治体ではセンター内のみで利用できるマッチングシステムを導入)
- 各結婚支援者の管理・育成(コーディネーター、相談員、アドバイザーなど役割や呼称は自治体によって様々)
- 結婚支援協力企業・団体の管理
- 企業間婚活の推進
<独自コンテンツ企画・運営例>
- 独身男女向けの関連イベントやセミナーの企画・運営
- 各結婚支援者向けの研修やセミナーの企画・運営
- 結婚やライフデザインに関する小冊子やパンフレット・リーフレット制作
- ご当地 “婚姻届”のダウンロード提供
これら3つの事業を単独ないしは複合で運営することで、地域内の結婚に対する機運を醸成し、結婚を望んでいる独身男女の出会いを促進させている。
都道府県ごとの結婚支援の取り組みは以下、内閣府のホームページより確認できるので、ぜひご自身のお住まいや地元の取り組み状況をご確認いただきたい。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/kekkon_ouen_pref.html
青森県が2011年から進める結婚支援事業
今回の取材した青森県では、2045年の人口が約82万4000人(※1)になると、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別、市区町村別の将来推計人口で予測されており、全国の2045年までの人口減少率-4.1%と比較しても秋田県に次いで高い-9.4%(※2)になっている。また、同年の65歳以上の人口の割合も調査時の30.2%から46.8%まで増加し、こちらも秋田県に次いで高い数字になっている。(※3)
※参考データ:日本の地域別将来推計人口 (平成 30(2018)年推計)-平成 27(2015)~57(2045)年-
http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/1kouhyo/gaiyo_s.pdf
(※1)表Ⅱ-1 都道府県別総人口と指数(平成27(2015)年=100)
(※2)表Ⅱ-2 都道府県別総人口の増加率
(※3)表Ⅱ-12 都道府県別65歳以上人口の割合
そんな同県では少子化の流れを変えるべく、2011年から「あおもり出会いサポート事業」として、結婚を希望する男女の出会いの機会づくりや結婚を応援する社会的機運の醸成に取り組み、2014年からは「あおもり出会い・結婚応援事業」として、関係機関とのネットワーク形成による地域での取り組みを推進し、2016年からは「あおもり出会い協働プロジェクト事業」として、企業同士でのグループ交流を進める企業間婚活や、結婚したい男女の出会いの場づくりの一層の推進を図った。
そして、2018年からは、市町村、企業、団体等との連携強化や、若年層に主眼を置いた結婚に対する機運を醸成する「結婚支援協働サポート事業」を実施し、具体的には、県内全域や各圏域内での結婚支援の連携体制の構築や、若者に対し自らのライフデザインを考える機会等を提供するための県内大学生を対象としたセミナー等の実施、また、イベント等を活用して県民に結婚のすばらしさや家庭を持つことの喜びを伝え、社会全体で結婚を応援する機運の醸成等を図るための取組を行っている。
これら取組の多くの運営を担っているのが「あおもり出会いサポートセンター」(以下、あおサポ)だ。
あおもり出会いサポートセンターのトップページ(2019年4月2日時点)
NPO法人プラットフォームあおもりが県の委託を受けて運営するWEB上の情報ポータルサイトであり、県内エリア別のイベント情報を掲載しているほか、出会いを希望する個人及び団体会員向けに協賛団体が企画・実施するイベント等の情報を毎月2回メールで配信しており、その情報を経て最終的に結婚にまで至った会員の成婚報告も掲載している。こちらの会員登録は年会費無料であり、登録したもの勝ちだ。
ちなみに、Love Tech Mediaでは今年2月27日に、たまたま青森県つがる市で開催された「結婚サポーター研修会」に参加したのだが、ここにも「あおサポ」職員の方が、積極的に学びにいらっしゃっていた。その方に伺ったところによると、つがる市は県内の中でももっとも積極的に結婚支援に取り組んでいる市町村の一つであり、同市担当課から研修会実施の旨の連絡を受け、結婚支援者としての学びに有効だと判断され、調整の上参加されたという。
2月27日、つがる市生涯学習交流センターで開催された「結婚サポーター研修会」の様子。同市の地域活力創生総合戦略に係る結婚支援事業の一環で、つがる市総務部企画調整課地域創生対策室が主催した。この日は、東京より婚活コンサルタント・澤口珠子氏を講師に迎えての実施となった
このような事例からも、あおサポと県内各市区町村とが密に情報連携していることがわかる。
青森Omiai恋活Party
青森ねぶたワールド新橋店内で展示されている、ねぶた師協力のもと作成されたミニねぶた
そんな中、青森県主催では初となる東京での婚活イベントが企画された。これまでも県主催の独自イベントは県内で何度も企画・実施されてきているが、首都圏での開催は初めてとなる。
ここで展開のサポート役として白羽の矢が立ったのがOmiaiである。先述の通り、首都圏での集客やPRは地方自治体にとっては荷が重く、独自の会員データベースを有しているOmiaiとの連携は強力なサポートとなることが背景にある。
また今回はイベントの実施にとどまらず、青森県へのUIJターンに向けた婚活ツアーの実施や、エフエム青森での企画番組「AOMORI×Omiai Radio」を通じた県内住民への情報発信など、多角的な内容が計画されており、中長期的なスパンでの連携が想定されている。
3月23日(土)に東京・新橋の「青森ねぶたワールド 新橋店」で開催された「青森Omiai恋活Party」に潜入させていただいたが、合計50名ほどの青森県出身者及び同県に縁のある方々が集まり、大いに盛り上がっていた。
Omiai×自治体のイベントでは、いつもその土地にゆかりのある場所が会場として選抜されており、今回も青森県産の食材をふんだんに利用した地元料理を提供するお店として「青森ねぶたワールド 新橋店」が選ばれた。
左上)青森鮮魚の大漁ねぶた盛り 右上)田子にんにく酢漬け 左下)いがめんち 右下)嶽きみの釜茹で
まず県の担当者から乾杯の音頭があった後、なんと、青森県知事・三村申吾氏からスペシャルビデオメッセージが放送された。
青森県の現状の暮らしや婚活事情、移住した場合の生活について、10分程度の詳しい説明が県知事から直接なされた。当日の動画をお見せすることができないのが非常に残念だが、遊び心とチャレンジ精神溢れる方だと感じた次第だ。
青森県の紹介はこれだけにとどまらず、イベントの中盤では「青森愛クイズ」も出された。このようなコンテンツを入れ込むことは、青森への興味関心を自然と高め、県内への移住イメージを少しでも持ってもらえる効果がある。
また、イベントのもう一つのテーマは”占い”である。これまでの岡山県や島根県出雲市とのイベント同様、今回もぷりあでぃす玲奈氏による参加者同士の相性占いがベースに設計されていた。
会場でのぷりあでぃす玲奈氏による相性占い
占いというコンテンツは想定以上に参加者交流を促進するもので、今回のイベントでも、多くの参加者が「占いが特に面白かった」とイベント後の感想でおっしゃっていたことは、要注目である。
青森県からいらっしゃった参加者も
今回取材した「青森Omiai恋活Party」には、青森県からわざわざお越しになった参加者もいらっしゃった。県内でリンゴ農園を営んでいる方で、Omiaiはつい最近、利用開始したという。
最後に、イベント参加の感想を伺った。
「今回は思い切って東京まで足を運んでみて大正解でした。参加者の皆様がとても素敵な方ばかりで、想像をはるかに超えて楽しかったです。
県内でも婚活イベントには参加したことがあるのですが、リンゴ農家だと言うと、あまり良い印象を持ってもらうことができませんでした。農家に対する3K(きつい・汚い・給料低い)のイメージが根強く残っているんですよね。
でも今日の参加者の女性たちは、リンゴ農家だと言うとさらに興味を持ってくれて、積極的にお話することができました。
東京での婚活の味をしめてしまったので、今後も定期的に東京に来て、このようなイベントに参加していきたいと思っています。
もちろん、今日知り合えた女性とも何名かLINEで繋がることができたので、その方々ともお会いしていきたいと思っています!」
編集後記
これまでLove Tech Mediaでは二度にわたり、Omiai×自治体の記事を発信してきました。
この記事を読んでくださった読者の方から「そもそも何でOmiaiは自治体の支援をしているのか、背景含めてもう少し詳しく知りたい」と言う声をいただき、今回の青森県との連携取材をきっかけに、事業の背景含めた内容で取材しお伝えしました。
記事にも記載の通り、多くの自治体は積極的な結婚支援施策を展開していると同時に、首都圏含めた人口過密地帯へのアプローチに苦戦しています。
恋活・婚活マッチングサービスを活用した施策の推進はまだ事例数が少なく、そうであるが故に、現時点では取り組みの独自色を打ち出しやすい状況でもあると感じます。
結婚支援のみならず移住定住領域で困っている自治体関係者は、ぜひOmiaiとの連携を検討してみてはいかがでしょう。
新たなる切り口のきっかけになるかもしれませんよ。
ぷりあでぃす玲奈氏(写真左から二番目)と青森県健康福祉部こどもみらい課の皆様