メンヘラが住みやすい社会に向けて、メンヘラテクノロジーが目指す世界《これからの事業編》

インタビュー

 彼氏を束縛するAIを作ることを夢に掲げる高桑蘭佳(たかくわらんか)氏が、代表取締役 CEOを務める株式会社メンヘラテクノロジー。

 同社が展開していた、社会との距離を縮めたい女子学生のための食事会セッティングサービス「MM(ミリ)」のサービス終了に併せて、「【MM】サービスリリースできなくてごめんなさい会」というオフラインイベントが、2019年1月9日に開催された。

 前編では、高桑氏がメンヘラテクノロジー設立に至るまでの経緯と、MMサービスの展開と終了に至るまでの流れをお伝えした。

 後編では、これから同社が取り組む新規事業2案についてご説明いただき、また説明会終了後の高桑氏へのインタビュー内容をお伝えする。

》前編記事はこちら

ケンカ後のごめんねを伝える「ごめんねギフト(仮)」

 メンヘラテクノロジーが新たに取り組む事業案の1つ目は「ごめんねギフト(仮)」。仮となっているのは、名称が未定だからだ。

 一体、どういう内容なのだろうか。

高桑氏名前の通り、ケンカしたカップルや夫婦の『ごめんね』の気持ちを、デートギフトで伝えるためのアプリです。

MMの終了にあたって、ガイアックスさんからは、お金を払ってでも解決したい課題であるかを考えよ、というお題をいただきまして。

それで色々と考えた中で、自分と喧嘩中の彼氏の言葉を思い出しました。

私、機嫌が悪くなると、何をしても機嫌が直らないんです。

この前も、彼氏が夜に遊びに行っちゃうのがすごく辛くて、泣きわめいたり叫んだりするので、彼氏が『お金を払ってでも機嫌を直してもらいたい』と言ったんですよね。

その経験から、このサービスを思いつきました。

こちらの機嫌が悪くなった時に、相手がギフトという形でデートの約束をしてくれ、こちらはそれを受け取る代わりに機嫌を直すことを約束するアプリです。

相手がトンチンカンなデート内容を提案しないように、こちらはあらかじめ気になるデート内容を登録しておき、こちらが不機嫌な時に相手がその情報を参考にデートギフトを提案できる。

そんな仕様を考えています。

 現段階ではまだアイデアベースということで、これから市場のフィット感含め、何名かにインタビューを実施して事業内容をブラッシュアップさせていくという。リリース時期は未定とのことだ。

 この「ごめんねギフト(仮)」は、MMの事業検証を一緒に進めたガイアックスが、再度出資という形で支援をする。

愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く

 メンヘラテクノロジーが新たに取り組む事業案の2つ目は、「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く」。非常に長い事業名だ。

 これも、どういう内容なのだろうか。

高桑氏こちらもスマホアプリです。『愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く』という名前のアプリです。

相手に対しての『好き』を、言葉やギフトだけでなく別の手段で表現させたい、という、これも私自身の思いを形にしました。

具体的には、”歩いた距離”で好きを表す仕様です。

こちらの図の左側が歩いている時の起動画面で、右側が一定の距離を達成した時の画面です。

左側の画面では、ピンクの枠内に自分の写真が、青い枠内に相手の顔写真がそれぞれ入り、それを見ながら歩いた距離をカウントしていきます。

そしてこの例だと、1,000メートル歩いたことで、アプリに『◯◯さんのコトを想って1000メートル歩きました』というメッセージが表示され、その画面をそのまま相手に送ることができます。

私自身、メンヘラモードになると家に引きこもりがちになるので、少しでも歩いたら健康になれるかな、と思っての歩いた距離で想いを伝える仕様にしました。

こちらはスマホアプリの企画・開発会社であるラグナロク株式会社と共同で開発しており、2019年2月にはリリースできる予定とのことだ。

デートギフトで、時間をしっかりと割く約束をしてほしい

 イベント終了後、今回の発表事業の内容含め、高桑氏に個別の質問時間をいただいた。

--まずは今回発表された事業内容案について質問させてください。「ごめんねギフト(仮)」と聞くと、物理的なプレゼントを思い浮かべたのですが、そうではなくデートギフトにされているのは何故なのでしょうか?

高桑氏:モノのプレゼントはお金で解決できてしまいますが、そうではなく「時間をしっかりと割く」ことを約束することで許してもらうことに重きを置きたいという思いで、デートギフトにしています。

安易にモノに逃げて欲しくないんです。

 

--なるほど。現時点で何か、具体的に考えていらっしゃるギフトなどはありますか?

高桑氏:伝統工芸ツアー、トレッキング、ボルダリング、スイーツバイキングなどを、今のところは検討しています。

これから予定しているユーザーインタビューで、ギフト候補が決まっていくと思います。

 

--ユーザーインタビューですが、具体的にどんな方にヒアリングされていく予定でしょうか?

高桑氏:今、弊社の事業を手伝ってくれる「お手伝い係コミュニティ」を募集していまして、このコミュニティメンバーにメインでヒアリングしていく予定です。

ちなみにコミュニティでは、新サービスのリリースに向けて意見を聞いたり、月1〜2回のミーティングに参加してもらったり、事業開発に必要な情報収集をお手伝いしてもらう予定です。

あと、弊社からの活動報告も随時、コミュニティ内で行うつもりです。

https://note.mu/menhera_osewa/n/nfbb9cf724d8f

--非常に濃いコミュニティになりそうですね!ちなみに高桑さんは、普段はどんな生活スタイルなのでしょうか?

高桑氏:ほとんど彼氏とべったりって感じです!

 

--べったりといっても、彼氏さんも、お仕事されていますよね?

高桑氏:イベント会社の社長なのですが、現場に出るというよりかは案件を取りまとめる役割なので、基本的には自宅で仕事をしています。そして私も大学院を休学中で自宅にいるので、自然と一緒にいる時間がほとんどなんです。

--それは超幸せですね!

防御的な意味合いでメンヘラと発信している

--高桑さんはメンヘラを公言されていらっしゃいますが、メンヘラの自覚症状が出てこられたのは、いつからなのでしょうか?

高桑氏:高校生の時から精神的にしんどくなっちゃいまして、そこから狭義のメンヘラでした。

昔から人にかまって欲しかったりと、愛情に飢えていたところはあって、人よりも病みやすい体質なのかなとは思います。

 

--今、「狭義のメンヘラ」とおっしゃいましたが、どういう意味でしょうか?

高桑氏:メンヘラって定義の仕方が色々あると思っていまして、私の場合は3つに分けています。

まず狭義のメンヘラとは、もともとのメンヘラの語源でもあるメンタルヘルスが必要な人のことを示しています。

次に広義のメンヘラとは、愛情に飢えていて精神的に不安定な人を示しています。

そして更に超広義になると、メンヘラは「精神的に病んでいる状態」のことを示す言葉となり、そうであるが故に誰でもなり得るものだと考えています。

ちなみに、今の私は広義のメンヘラです。

 

--超広義的には、ニッポン一億総メンヘラということですね。ご自身でメンヘラを公言されるのに、精神的な抵抗はないのでしょうか?

高桑氏:私の場合は、大学2年生の頃からライターをやっていまして、彼氏束縛アプリのことを書くとなった時に、メディア編集担当の方から、そういうスタンスでいるのもありだよね、って言われたのが始まりですね。

あと、防御的な意味で言ってるところもあります。

最初に「私はメンヘラです」って伝えていた方が、後出しで伝えるよりも、末長く良い人間関係を作れる傾向があります。隠していると、後からメッキが剥がれるのが怖くなってしまいますし。

あと、一般的な広義のメンヘラの観点でお話ししますと、アーティストでメンヘラな発信をされている方が何名もいらっしゃるじゃないですか。

そういう方を見て若い人が「メンヘラって言ってもいいんじゃないか」って思える風潮も、あるんじゃないかと感じています。

ちなみに私が「こういうことしていいかもな」と思えているのは、尊敬するスプツニ子!さんの存在が大きいですね。中でも「生理マシーン」は衝撃受けました。

喧嘩するための独自の言語があっても良いかも

--今度はテクノロジーの部分について、現在高桑さんが興味を持たれているテック分野を教えてください。

高桑氏:昔から”言葉”について考えるのが好きで、自然言語処理の分野にずっと興味を持って取り組んでいます。

 

--何か具体的に目標とされていることなどありますか?

高桑氏:今作りたいなと思っているのが、「感情を抜いたニュートラルな言語」です。

カップルでも夫婦でも、喧嘩をするとどうしても感情的な言葉が出てしまい、それが相手を傷つけてしまいます。

であれば、感情を抜いた言語で話す、もしくはそんな言語を実装したチャットボットを介することで、余計な傷つけ合いがなくてすむのではないかと思っています。

もしかしたら、喧嘩するための独自の、プログラミング言語のような言葉があっても良いのかもしれません。

これを実現するためにも、人間がどういう風に言葉を使っているか、ということをもっと勉強していきたいです。

 

--人同士の間にロボットがいると、感情が中和されますよね。

高桑氏:私が人間がどういう風に言葉を使っているかに興味を持つ大きな背景として、ボトムアップ型の人工知能の研究の存在があります。

今、世の中で人工知能と呼ばれているもののほとんどはトップダウン型の、大量にデータを学習させて人間に近い知性を目指した人工知能なのですが、そうではなく、人間の脳の仕組みを再現するボトムアップ型の人工知能の研究に影響を受けています。

私の友人にそういった人間の心の仕組みを利用したドラえもんのような人工知能の研究をしている大澤正彦さんという研究者がいて、彼は、現在ペットと子供の間のような存在のミニドラを作っています。

そんなロボットが身近にいてくれるような時代になったら、彼氏がいなくて寂しがっている私の究極の癒しになりますから!

 

--いきなり、またメンヘラモードになりましたね。高桑さんが最終的に目指される事って、何なのでしょうか?

高桑氏:夢は、彼氏を束縛するAIを作る事なのですが、その背景にあるのは、「彼氏にとって、常に私がいないと生きていけない状況」にしたいんです。そうしたら自分は安心するんじゃないかな、メンヘラにならないんじゃないかなと思います

朝ドラってあるじゃないですか。あのドラマの主人公って、その人がいないと物語がまわらないようにできていて、常に主人公がいないとダメな状況なんですよね。つまり、朝ドラの主人公が最強の束縛成功ケースです(笑)

 

--朝ドラの印象が変わってしまいます(笑)最後に、高桑さんにとっての「愛」とは何でしょうか?

高桑氏:(しばらく考えて)

愛されてるって感情を十分に感じれていないので、わからないです。。

そこがメンヘラである所以だと思います。

メンヘラである限りは、愛を追い求めるんだろうなって思います。

だから、私にとって愛とは、「ずっと追い求めるもの」だと思います。

 

編集後記

愛に陰陽があるとすると、これまでLove Tech Mediaでは主に愛の”陽”の部分にフォーカスしたサービスを取材をしてきましたが、今回初めて、愛の”陰”の部分にフォーカスしての取材となりました。

 

そして今回の取材、楽しみにしていたと同時に、実はちょっとだけ不安な気持ちもありました。メンバーが全員メンヘラだと公言されている会社のイベントには、メンヘラの方しかおらずコミュニケーションが大変になるかもしれないと、少々警戒もしていました。

 

でも実際に代表の高桑さんをはじめ関係者の方々とお話ししてみると、皆様とても素敵で、ある意味で”フツー”の方々でした。

 

メンヘラという、一般的にはネガティブに受け止められるワードを、ポジティブに先出しし、エネルギーに変えて事業展開されている姿は、尊敬に値します。

 

メンヘラな方々にとって、少しでも過ごしやすい世の中になるよう、メンヘラテクノロジーさんの活動はこれからも注視して参りたいと思います!

 

株式会社メンヘラテクノロジー詳細についてはこちらをご覧ください

本記事のインタビュイー

高桑蘭佳(たかくわらんか)

株式会社メンヘラテクノロジー 代表取締役 CEO

東京工業大学大学院修士課程1年。彼氏を束縛する人工知能を研究しながらフリーライターとして執筆活動を行う。ココイチ王(TVチャンピオン極)。

LoveTechMedia編集部

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