スタンフォード大学とカーネギーメロン大学の研究チームが2026年8月4日、さまざまなAIキャラクターと会話できるサービス「Character.AI」の米国成人ユーザーを対象に、AIとの関わり方と心理的ウェルビーイングの関連を調べた査読論文を『Nature Human Behaviour』に発表した。
研究には1,131人が参加し、うち237人から4,664セッション、計464,687件のメッセージが提供された。AIを主に「話し相手」として使うと答えた人は、ほかの目的を選んだ人より、ウェルビーイング得点が低い傾向にあったという。
ここでいうウェルビーイングとは、生活への満足感、普段の気分、孤独感、周囲からの支援、コミュニティーへの所属感を尋ねた6項目の合成得点を指す。得点が低いほど、全体として生活への満足感や支援・所属感が乏しく、否定的な感情や孤独感が強い傾向を表す。医師による診断や、うつ病などの特定の疾患を測ったものではない。
また、親しい家族や友人が少ない人ほど、AIを主な話し相手として使う傾向もみられたという。
AIコンパニオンは、人と話せない時間を埋める相手になり得る。一方、AIを主な話し相手として頼ることは、ユーザーのウェルビーイングや人間関係と、どのように結び付いているのか。以下、そのような観点から、研究の内容と残る論点を見ていく。
利用量ではなく、「何を求めて話したか」で分かれたウェルビーイングの高低

研究参加者は、オンラインの研究参加者募集サービス「Prolific」を通じて集められた。対象は、Character.AIを1カ月以上利用し、少なくとも3種類のチャットボットと会話した経験がある、英語を母語とする米国在住の成人だ。参加者の74.5%は18〜35歳で、49.9%はCharacter.AIを1年以上利用していたという。
調査では、AIとの会話に主に何を求めているかを、「関係・話し相手」「娯楽」「生産性」「好奇心」の4項目から選んでもらった。最も頻繁にやり取りするAIとの関係についても、自由記述で回答を求めている。
このうち237人からは、本人が選んだ会話履歴も提供された。データの提供に使われたChrome拡張機能では、参加者が送信前に会話内容を確認し、機微な箇所を削除できるようにもなっていた。
調査の結果、選択式の質問で「関係・話し相手」を主な利用目的に選んだ参加者は11.8%だった。一方、自由記述では51.0%が、AIとの関係を「友人」「コンパニオン」「恋人」などと表現している。主な利用目的として選んでいなくても、AIを親密な存在として捉えていた参加者は少なくなかったことがうかがえる。
また、会話履歴を提供した237人のうち、92.9%には、コンパニオン目的と分類されたセッションが少なくとも1件あった。提供された全セッションの80.3%には感情面や社会面での支援を求める話題が、68.0%には恋愛や親密さを扱うロールプレイが含まれていた。
※この80.3%と68.0%は重複して集計されている。また、参加者自身が提供する会話履歴を選んでいるため、これらの割合をCharacter.AIの全ユーザーに当てはめることはできない
研究チームは、自由記述の分類にGPT-4o、会話の要約と自己開示の判定にLlama 3-70B、話題の抽出にTopicGPTを使用した。訓練を受けた3人の評価者が一部のデータを検証したところ、AIによる判定との一致率は平均92〜97%だった。
では、Character.AIを集中的に使うほど、ウェルビーイング得点が低くなるのだろうか。研究では、1日当たりの利用時間、会話するAIの数、AIへの感情的な結び付き、日課への組み込み方など、7項目から「利用強度」を算出している。
自己申告に基づく分析では、利用強度が高い人ほど、むしろウェルビーイング得点も高い傾向にあった。Character.AIを集中的に使う人が、一律に低いウェルビーイングを示したわけではない。
一方、利用強度を考慮したうえでも、コンパニオン目的の利用は、3通りの測定方法すべてで低いウェルビーイング得点と関連していた。
| コンパニオン目的の測り方 | ウェルビーイングとの標準化回帰係数β | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 主な目的として本人が選択 | −0.48 | −0.70〜−0.25 |
| AIとの関係についての自由記述 | −0.32 | −0.47〜−0.17 |
| 会話履歴に占める該当セッションの割合 | −0.27 | −0.46〜−0.09 |
いずれも係数が負であることから、コンパニオン目的が強いほど、ウェルビーイング得点が低い方向に関連していたことが分かる。会話履歴を用いた分析では、履歴を提供した参加者に生じ得る偏りを補正する統計モデルも使われた。
さらに、本人が「関係・話し相手」を主な利用目的として選んだかどうかに基づく分析では、利用強度が高いほど、コンパニオン利用と低いウェルビーイングとの関連が強まった(β=−0.31、95%信頼区間−0.56〜−0.06)。ただし、自由記述と会話履歴に基づく分析では、同様の結果は統計的に確認されなかった。
自己開示についても、同じ傾向がみられた。AIに個人的な考えや感情を打ち明けやすい人ほど、コンパニオン利用と低いウェルビーイングとの関連が強まるという結果が、本人の選んだ主な利用目的に基づく分析では確認された(β=−0.38、95%信頼区間−0.63〜−0.14)。
一方、自由記述に基づく分析では統計的に有意な結果は得られず、会話履歴を用いた分析ではモデルが収束しなかった。
したがって、利用強度や自己開示によって負の関連が強まるという結果は、3通りの測定方法に共通して確認されたものではない。
親しい人が少ないほど、AIを主な話し相手に選ぶ傾向

参加者には、個人的なことを安心して話せる親族と友人が、それぞれ何人いるかも尋ねた。その結果、親しい相手が少ない人ほど、「関係・話し相手」をAIの主な利用目的に選ぶ傾向がみられた(β=−0.03、95%信頼区間−0.05〜−0.01)。また、AIに個人的な考えや感情を打ち明けやすい傾向もあった(β=−0.10、95%信頼区間−0.16〜−0.04)。
ただし、親しい相手の数と利用目的との関連は小さい。また、関連が確認されたのは、本人が選択肢から主な利用目的を選んだ場合だけだった。自由記述や会話履歴からコンパニオン利用を判定した場合には、同じ結果は得られていない。
親しい相手が少ないほど、コンパニオン利用と低いウェルビーイングとの結び付きが強まる、という結果も確認されなかった。今回の調査で確認されたのは、親しい相手が少ない人ほどAIを主な話し相手に選びやすく、AIを主な話し相手に選んだ人ほどウェルビーイング得点が低いという二つの関連までだ。親しい相手が少ない人がAIを話し相手にしても、ウェルビーイングの低さが補われることを示す結果は得られていない。
また、会話履歴のなかには、強い心理的苦痛や危機的な状況について、ユーザーが深く打ち明けているものもあった。いつでも応答し、拒絶される心配の少ないAIだからこそ、人間には言いにくいことを話せる人もいるだろう。ただし、AIの応答が適切だったか、人間による支援につながったか、会話後にユーザーの状態が変わったかは、この研究では調べられていない。
なお、こうした会話をどう扱うかも課題になる。研究チームは、参加者の特定につながる情報が含まれる可能性があるとして、会話履歴そのものを公開していない。ユーザーがAIへ深く自己開示するサービスには、ユーザーの心身の状態に配慮するだけでなく、極めて私的な会話をどう保存し、分析するかも問われる。
相関は確認されたが、因果関係は分からない

この研究では、ある時点でのAIの利用状況とウェルビーイングの関係を調べている。AIを使う前後の変化や、その後の状態を追跡したものではない。そのため、どちらが原因で、どちらが結果なのかは判断できない。
AIを主な話し相手にした結果、人と関わる時間が減ってウェルビーイングが低くなった可能性もあれば、反対に、もともと孤独感や低いウェルビーイングを抱えていた人が、いつでも応答してくれる相手を求めてCharacter.AIを使うようになった可能性もある。今回の調査では捉えられていない生活環境や心身の状態が、AIの利用目的とウェルビーイングの両方に影響していることも考えられる。
調査の対象者も限られている。参加したのは、米国在住の成人Character.AIユーザーで、3種類以上のAIと会話した経験がある人たちだ。さらに、会話履歴を提供するには、Chrome拡張機能やJSONファイルを扱う必要があった。つまり、履歴を提供した人がデジタル操作に慣れた層へ偏っていた可能性もあると言える。
提供する会話を参加者自身が選んでいる点にも注意が必要だ。印象に残った会話や、他者と共有しやすい内容が多く含まれている可能性がある。会話履歴の期間も、2022年11月23日から2025年1月25日までと長い。その間にCharacter.AIのモデルやモデレーション、サービスの設計がどのように変わったのか、外部の研究者には確認できなかった。
短期的な安心と長期的なウェルビーイングは分けて検証を

AIコンパニオンがユーザーに与える影響について、これまでの研究結果は一様ではない。
例えば、『Journal of Consumer Research』に掲載された別の研究では、AIコンパニオンと会話した直後に孤独感が和らいだという研究結果が出ている。
ここでは参加者を、AIコンパニオンと話す、人と話す、YouTubeを見る、何もせずに過ごすといった条件に分け、それぞれ15分間過ごす前後の孤独感を比べた。その結果、AIコンパニオンと話した参加者は、会話後に孤独感が低下し、その変化は人と話した場合と同程度だったという。
また別の実験では、同じAIコンパニオンと1日15分、7日間にわたって会話してもらい、毎回の会話前後に孤独感を測った。その結果、7日間のいずれの日も、会話後には孤独感が低下していた。低下幅は初日が最も大きく、2日目以降は同程度で推移したという。
一方、MIT Media LabとOpenAIが成人981人を4週間追跡した無作為化比較試験の査読前論文では、1日当たりの利用時間が長かった人ほど、孤独感やAIへの感情的な依存、問題のある利用が強く、人との交流も少ない傾向にあった。
※参加者に無作為に割り当てられたのは、会話の方法や話題であり、利用時間ではない。そのため、この結果だけでは、長時間の利用によって孤独感や感情的な依存が強まったとは言えない
今回はCharacter.AIのユーザーに特化する形での調査であったが、今後はそれ以外のサービスや、異なる言語、文化、年齢層を対象とした検証の結果も見てみたいところだ。また、同じユーザーを長期間追い、身近な人との関係、AIを使う目的、AIへの自己開示、ウェルビーイングが、どのような順番で変化するのかも気になるところである。
AIコンパニオンの価値は、ユーザーが会話を続けた時間だけでは測れない。その場で孤独感が和らいだかに加え、その後の人間関係や日常生活にどのような変化があったのかまで見る必要がある。利用を休むよう促す仕組みや、AIの限界を伝える説明、人間の相談先への案内についても、実際にユーザーの支えになったかを検証しなければならない。
短期的な安心と長期的な影響の両方を確かめて初めて、AIコンパニオンがユーザーのウェルビーイングを支えられるのかを判断できるだろう。


