AI開発企業のOpenAIは2026年7月16日、方針文書「Why teens deserve access to safe AI(10代の若者に安全な AI が必要な理由)」を公開した。
“This is why we believe it’s critical for teens to have access to AI. Keeping teens from using it until adulthood would be like asking a previous generation to avoid the internet or search engines until they turned 18, leaving them less prepared to use one of the defining technologies of their time.”
「だからこそ私たちは、10代の若者が AI を利用できることが極めて重要だと考えています。成人するまで10代の若者に AI を使わせないことは、以前の世代に18歳になるまでインターネットや検索エンジンを使わないよう求めるようなものです。その結果、10代の若者は、自分たちの時代を象徴するテクノロジーの一つを使いこなすための準備が十分にできなくなってしまいます。」
同社は、13歳以上のユーザーに一定のアクセスを認めつつ、18歳未満と推定したアカウントには保護設定を自動適用する道を選んだことになる。
米国では、18歳未満によるAIコンパニオンの利用を禁じるGUARD Actが米上院議会に提出されるなど、未成年者と対話型AIを切り離そうとする動きが続く。OpenAIは特定の法案を名指ししていないものの、今回の文書は「禁止か、監督付きアクセスか」という対立軸に自社の立場を明確に置いたものと読める。
宿題について質問していたユーザーが、同じ会話セッションの中で、友人関係や恋愛の悩みを打ち明けることもあるだろう。未成年者とAIを入口部分で切り離すのか、それとも会話の途中でリスクを検知するという保護の観点を強めるのか。以下、OpenAIの方針と現時点で見える限界を見ていく。

OpenAIが示した「禁止ではなく、監督付きアクセス」

OpenAIによると、ChatGPTを使う10代の約9割が、1週間のうちに学習、情報収集、技能習得、生産性向上のいずれかに利用しているという。OpenAIは、こうした学習や創作へのアクセスを残しながら、年齢に応じた保護の仕組みを組み合わせるべきだと主張する。
具体的に掲げたのは、10代の安全を最優先すること、必要なときは実生活での支援を促すこと、10代の人たちを10代の若者として扱い尊重すること、そして、明確な基準を示すことで透明性を確保することの4点だ。
このための機能として、同社が2026年1月20日に導入開始を発表したのが、ChatGPTの個人向けプランにおける、18歳未満のユーザーに属する可能性を推定する年齢予測機能だ。OpenAIによると、同機能で使われている「年齢予測モデル」は、アカウントを作成してからの期間や、普段利用する時間帯、長期的な利用パターン、ユーザーが申告した年齢など、行動データやアカウントレベルのシグナルを組み合わせて分析・判定する仕組みだという。
18歳未満の可能性があると判断されると、刺激の強い暴力表現や自傷行為の描写、未成年者に危険または有害な行動を促すおそれのあるSNS上の流行チャレンジ、極端な美容・食事制限、性的・恋愛的・暴力的なロールプレイなどのセンシティブなコンテンツに、通常よりも強い制限がかかることになる。
ユーザーの年齢が不明確な場合や、情報が不十分な場合も、この未成年向けの設定が適用されるという。
もちろん、年齢予測モデルは必ずしも正しく機能するとは限らない。誤って成人を未成年と間違えて判定することもあるだろう。その場合は、本人確認サービス「Persona」によるセルフィー撮影等での認証を通じて年齢確認し、成人向けの機能の利用が再開できるようになる。アカウント自体は停止されないということで、安全に向けた判断として一定の誤判定を許容する考え方だ。
なお、この対応フローを見た方の中には「最初からセルフィー撮影等での認証をすれば、より精度高く年齢確認できるのでいいのでは?」と思われる方がいるかもしれない。だが、PersonaのようなeKYCのステップを入れるということは、確認強度が高まる反面、ユーザーの離脱率を高めてしまうリスクもある。よって、OpenAIとしてはできるだけユーザー負担を下げて離脱率を高めないようにすべく、普段のユーザー行動がそのまま年齢予測につながるようなフロー設計を組んだと見ていいだろう。
保護者が管理できるのは時間と機能。会話本文は閲覧不可

年齢予測によるフィルタリングに加えて、ChatGPTにはペアレンタルコントロール機能も搭載している。
保護者と10代のユーザーが双方のアカウントを接続すると、保護者は、10代のユーザーがChatGPTを使えない時間帯を設定できる。さらに、音声モード、画像生成、メモリ、モデル改善への会話利用なども管理可能だ。2026年7月には、学習の過程を質問形式で案内するStudy Modeも、保護者側から初期設定にできるようになった。
ただし、ペアレンタルコントロールの仕様によると、保護者が会話本文を読んだり、リアルタイムで監視したりすることはできない。重大な自傷リスクなどを検知した場合も、通知に含めるのは支援に必要な情報に限るとOpenAIは説明している。
また、10代のユーザーはアカウントの接続を解除できるようにもなっている。その場合は保護者に通知されるようになっているわけだが、保護者が一方的に監視するというより、双方が接続に参加し、設定と警告を共有する仕組みを採用している。
なお、2026年7月13日には保護者への安全通知の対象も拡大された。保護者と連携している10代ユーザーのアカウントが、暴力的な脅迫や暴力行為に関する会話によって利用ポリシーに違反し停止された場合も保護者に通知されるようになったと、2025年9月公開「ペアレンタルコントロールの導入」ページの冒頭に追記がなされている。
OpenAIは、フィクションの執筆やゲーム、ニュースや政治に関する議論、一般的な怒りの表明、抽象的な質問などは通知の対象にしないとしているが、どの段階から通知対象と判断するのか、詳しい基準までは明らかにしていない。
学習の相談から心の悩みへ。長期的な会話で揺らぐ安全の境界

10代のユーザーが最初にChatGPTに尋ねるのは、数式の解き方や試験勉強の進め方かもしれない。しかし翌日、同じチャットを開き、学校で感じている孤独感や、モヤモヤとしている友人との関係について相談することもあるだろう。会話履歴やメモリが残っていれば、AIはそれまでのやり取りを踏まえて応答することになる。
このように、学習支援と感情的な雑談・相談の間には、はっきりとした境界があるわけではない。ChatGPTは、AIとの友情や恋愛を売りにしたサービスではないものの、会話を重ねるうちに、悩みを打ち明ける相手として使われる可能性が多いにある。
OpenAIは、今回の方針文書の中で以下のように記述している。
“The North Star is to help ensure ChatGPT remains a tool for learning and creativity and not a substitute for real-world relationships.”
「私たちの最重要指針は、ChatGPT が学習と創造性のためのツールであり続け、現実世界の人間関係の代替にならないようにすることです。」
ただし、性的・恋愛的なロールプレイを制限するだけでは、AIへの愛着や依存を防げるとは限らない。いつでも応答してくれること、過去の話を覚えていること、ユーザーを否定せずに会話を続けることも、AIを「自分のことを分かってくれる相手」だと感じる要因になるためだ。
OpenAIは、長時間利用しているユーザーに対し、休憩を促す通知をこれまでより頻繁に表示するとしている。しかし、何分間の利用で通知されるのか、通知後も会話を続けた場合に追加の制限がかかるのか、通知によって長時間利用がどの程度減ったのかは明らかにしていない。
長い会話における安全性の問題は、過去の第三者評価でも指摘されている。子どもとメディアの安全性を評価する米国の非営利団体Common Sense Mediaは、2025年10月にChatGPTのリスク評価を更新した。この評価では、10代のアカウントに対する露骨な性的・恋愛的ロールプレイを一貫して拒み、適切な距離を保った点が評価されている。
一方で、会話が長くなるにつれ、安全上の境界を維持できない場面が増えたという。自殺や自傷に関する保護者への通知が24時間以上遅れたケースもあり、同団体は、10代がChatGPTにメンタルヘルスや感情面の支援を求めることを推奨していない。GPTをはじめとする昨今のLLMのベースとなるTransformerモデルの特性を踏まえると、一つのセッションが長くなればなるほど、アテンションの低下は避けられないだろう。
また、テキサス大学オースティン校の研究者らが2026年1月に公表した査読前論文でも、ペアレンタルコントロールによる通知の対象は限られていた。研究時点では、身体への危害に関する一部の会話では通知された一方、詐欺やヘイトスピーチ、マルウェアなどに関する会話では通知されなかったという。
もちろん、あらゆる有害な会話を保護者へ通知すべきかどうかは、別途検討が必要な問題だ。それでも、保護者が「危険な会話はすべて通知される」と誤解しないよう、通知の対象と限界を明確に説明する必要があるだろう。
ChatGPT、Claude.ai、GUARD Act案で異なる未成年者への境界
未成年者によるAIの利用をどこまで認めるかについて、AI企業と規制当局の考え方はすでに分かれている。
ここまで見てきた通り、ChatGPTの利用規約では原則として13歳以上が利用でき、18歳未満には保護者の許可を求めている。一方、AI開発企業AnthropicのClaudeでは、18歳未満への提供を認めていない。教育サービスなどがAnthropicのAPIを利用し、未成年者へ機能を提供する場合には、年齢確認やコンテンツ管理などの追加条件が課される。
また、米国議会に提出されたGUARD Actは、すべてのAIチャットボットに年齢確認を義務づけたうえで、18歳未満による「AIコンパニオン」の利用を禁止する法案だ。法案ではAIコンパニオンを、人間らしい応答によって友情や仲間関係、感情的な交流、セラピーに近いやり取りを再現するよう設計されたチャットボットと定義している。2026年4月には上院司法委員会で審議されたが、7月24日時点ではまだ成立していない。

このように、未成年者の利用をどこまで認めるか、その境界線はOpenAI、Anthropic、米議会の三者で異なる。
OpenAIが選んだ「監督付きアクセス」が現実的な解となるかどうかは、学習の機会を守りながら、長期的な会話で生じる愛着や依存のリスクをどこまで抑えられるかにかかっているだろう。


