リリース概要
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆、研究所所長:松原 洋一)再生医療センター梅澤 明弘部長、横溝 陵研究員らのグループと、女性の健康情報サービス『ルナルナ』を運営する株式会社エムティーアイ(東京都新宿区、代表取締役社長:前多 俊宏、以下「エムティーアイ」)は、本年6月に開始したAIを用いた不妊治療支援用スマートフォンアプリの開発を目指す共同研究の第二弾として、この度不妊治療患者一人一人に合った治療方法を提案する独自のアルゴリズム開発を目指し、5,000人を目標として不妊治療経験者のデータ収集を開始します。
不妊治療は患者の状況によって治療方法が異なるため、一人一人に適切な治療方法を提案するアルゴリズムを開発するには、治療経験者のデータが重要となります。そのため、10月22日(木)より『ルナルナ』の各アプリを通して治療経験者へアンケートを実施し、年齢や既往歴、不妊治療中の検査結果の数値などのデータ収集を行います。アンケートによって得られる不妊治療に関するビッグデータを基に不妊治療に関する新たな知見を創出し、さらに個々の状況に合った効果的・効率的な治療提案が可能な独自のアルゴリズム開発を目指します。
研究の背景
不妊治療は、年齢・既往歴や検査結果・治療成績などによって治療方法が細かく異なるため、患者にとってはどのような治療が自分に最適かわかりづらいという面があります。また、先が見えづらい治療と向き合うには様々な苦労があり、患者の主な悩み事としては「妊娠できなかった時の気分の落ち込み」、「自身の年齢による妊娠率低下」、「治療費がいくらかかるかわからない」、「治療費が高い」、「仕事と通院日のスケジュール調整」などが上位にあげられます(出典:2020年 『ルナルナ』にて実施の調査、調査対象:不妊治療の経験がある女性1,044名 調査実施期間:2020年5月8日~19日)。このような問題を解決すべく、ビッグデータの活用により妊娠・出産に関する知見を生み出してきた実績を持つ『ルナルナ』と、国レベルで高度な医療を築いていく成育医療の中心的な存在である国立成育医療研究センター研究所の再生医療センター梅澤 明弘部長、横溝 陵研究員らのグループがチームを組み、不妊治療経験者から得られたデータより、治療成績に影響する要素を分析することで、個々の患者の状況に合わせた情報配信や、治療方針の検討をサポートする提案ができる独自のアルゴリズム開発を目指した共同研究を開始します。
研究のポイント・目的
・『ルナルナ』を事業展開するエムティーアイのデータサイエンティスト、国立成育医療研究センターの不妊治療医、医学研究者からなるチームが分析・開発を行います。
・これまで十分なデータがなかった「この患者さんにはどのような治療法がいいか?」「この患者さんにこの治療法を行った場合の妊娠率はどれくらいになりそうか?」といった不妊治療の抱えるアンメットニーズの解決を目指します。また、ビッグデータに基づくAIモデルを搭載したツールを診療現場でも用いることで、より個々の患者さんに適した不妊治療の実現を目指し、本研究開発を推進していきます。
・患者が保有している不妊治療のビッグデータを収集することで、日本の不妊治療の現状を知ることができます。
・AIモデルを搭載したアプリで患者さん一人一人に合わせた情報提供を可能にし、患者さんがより治療への理解を深め、より納得して治療に臨むことができる仕組みを目指します。
本研究の実現により、これから不妊治療を行う患者に治療の初期から確度の高い治療を提案し、より効果的・効率的な治療を受けられるよう支援できることが期待されます。また、研究で確立を目指すアルゴリズムは、今後エムティーアイが提供する「ルナルナ 体温ノート」の中の、不妊治療の記録・管理を支援する「治療サポートコース」へ組み込み、患者のサポートに役立てていく予定です。なお、研究で取得されるデータについては、研究倫理について適切な審査を経た上で、量や質に関して一定基準を満たした匿名化処理済みのデータを用い、国立成育医療研究センターとエムティーアイで統計解析、結果解釈、成果公開などを行います。
第二弾研究の参加方法
研究の名称:スマートフォンアプリを用いた不妊治療データの解析
参加対象者:『ルナルナ』「ルナルナ ベビー」「ルナルナ 体温ノート」いずれかのアプリを使用しており、現在不妊治療中、または過去に不妊治療を経験したことのある方参加方法:各『ルナルナ』アプリを開く > メニュー > お知らせ より参加
国立成育医療研究センター 再生医療センター 横溝 陵研究員からのコメント
日本は世界有数の不妊治療大国で、子どもの約16人に1人が体外受精で生まれています(出典:日本産科婦人科学会、2018年データ)。それだけ多くの患者さんが、「赤ちゃんが欲しい」という希望を叶えるために不妊治療に臨んでいるという現状があります。そのような患者さんに、研究の力が少しでもお役に立てればという思いで、本研究に取り組んでいます。不妊治療が多く行われているということは、日本にはそれだけ多くの知見が蓄積されているということです。技術の進歩により、その知見を統合し、個々の患者さんにより良い医療を届けることが可能な時代となりました。不妊治療件数が世界有数である日本から生まれる研究成果が、現在の、そして未来の患者さんの幸せにつながることを願っています。
国立成育医療研究センターについて
病院と研究所が一体となり、健全な次世代を育成するための医療と研究を推進することを理念としています。国立成育医療研究センター病院は、日本で最大規模の小児・周産期・産科・母性医療を専門とする病院です(病床数:490床、外来(一日平均)約1000名)。胎児にはじまり、新生児、乳児、幼児、学童、思春期、大人へと成長・発達し、次に世代を育む過程を、総合的かつ継続的に診る医療=「成育医療」を行っています。また、病因・病態の解明や克服のための研究を行うとともに、健全な次世代を育むための社会の在り方について提言しています。
ルナルナについて
ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス。蓄積されている利用者のデータを用いることで、独自の予測アルゴリズムを確立し、より精度の高い排卵日予測を行っています。ダウンロード数約1500万(2020年3月時点)で、利用者の妊娠をサポートし、年間約28万人から妊娠報告※があるサービスです。
※2019年1月1日から12月31日までに、『ルナルナ』各サービス内で「妊娠中ステージ」に切り替わり、一定期間以上の継続が認められた回数