記事の要点
・オンライン医療相談サービスを提供する株式会社アナムネが、子宮頸がん予防の啓発プロジェクトを開始。
・子宮頸がんなどを引き起こすHPVワクチンの接種をめぐって、国内では2013年にワクチン接種後の副作用に関する懸念があがり、厚生労働省による積極的勧奨が中止され、一時8割近くあったワクチン接種率が1%未満に留まっている現状がある。
・その後国内外において慎重に解析された結果、ワクチンと副作用の因果関係は否定的に考えられており、国内外でワクチン接種の重要性に関して研究結果が相次ぎ発表されている。
LoveTechポイント
子宮頸がんなどを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンの有効性などを示す研究結果が国内外で発表されています。
子宮頸がんに関する正しい知識を継続的に伝える取り組みはLoveTechであり、予防のためのワクチン接種や検診を推進する機運が高まるか、注目したいと思います。
編集部コメント
女性のための女性医師によるオンライン医療相談サービスを提供する株式会社アナムネが、子宮頸がん予防の啓発プロジェクトを開始した。
同社が運営する医療情報特化型検索メディア「clila(クリラ)」において、子宮頸がんの疾患情報ページを追加し、子宮頸がんの説明、原因、日本と海外の動向、リスク因子、症状、診断、治療、予防といった情報を掲載。また、子宮頸がんなどを引き起こすHPVのワクチンへの理解・啓発のため、専門医へのインタビューも併せて掲載している。
子宮頸がんは女性特有のがんで、特に若い女性に多く発症する。毎年約9,000人が新たに子宮頸がんと診断され、約2,000~3,000人が子宮頸がんで亡くなっている。この子宮頸がんの主な発症要因としてはHPVへの感染が挙げられ、感染を防ぐためには、HPV(※)ワクチンが有効であることがわかっている。
※HPV:ヒトパピローマウィルス。皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100以上の種類がある。粘膜に感染するHPVのうち少なくとも15種類が子宮頸がんの患者から検出され、「高リスク型HPV」と呼ばれている。これら高リスク型HPVは性行為によって感染するが、子宮頸がん以外に、中咽頭がん、肛門がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんなどにも関わっていると考えられている。(厚生労働省「HPVワクチンQ&A」より)
HPVワクチンについて、日本では、2010年度から13~16歳を対象とした公費助成が開始され、2013年4月からは12~16歳を対象とした定期接種となった。しかしワクチン接種後に疼痛や運動障害などの副反応が疑われる症状があるとの報告があり、同年6月以降、厚生労働省による積極的勧奨が中止された。当時の報道の様子が記憶に残っている方も多いのではないだろうか。その後、国内外において慎重に解析された結果、それらの症状とワクチンとの因果関係は否定的に考えられているが、ワクチンの接種率は依然として低く、その影響によるがん発症率リスクが懸念されている。
2020年9月、大阪大学大学院医学系研究科の八木麻未特任助教らの研究グループは、2000年度以降生まれの日本女性の将来の子宮頸がん罹患者・死亡者数増加の可能性を、自然科学のオンラインジャーナル「Scientific Reports」にて公開。2000~2003年度生まれの女性では、避けられたはずの患者が計1万7千人、死者が計4千人発生するとの予測を発表した。研究グループによると、勧奨中止の影響が小さい1994~1999年度生まれはワクチン接種率が55.5~78.8%だが、影響が大きい2000年度生まれは14.3%、2001年度生まれが1.6%、以降は1%未満に留まるという。
さらに、世界の研究機関でもワクチンの重要性に関する研究結果が出ている。2020年10月、スウェーデンのカロリンスカ研究所が、10~30歳の女性が子宮頸がんを予防するワクチンの接種を受けるとがん発症のリスクが63%減少するとの研究結果を米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンにて発表。ワクチンを接種した年齢別でみると、10歳~16歳で88%、17歳~30歳で53%発症リスクが減っていた。
The New England Journal of Medicine “HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer”
同研究所は、2006年~2017年の間に10歳~30歳だった約167万人の女性を対象に調査を実施。ワクチンを一度でも接種した約53万人と、接種しなかった約115万人について、がんの発症リスクを比べていた。ワクチンを接種しなかった人は10万人あたり94人が子宮頸がんを発症したのに対し、接種を受けた人の発症は47人だった。
スウェーデンでは、子宮頸がんなどを引き起こすHPVのワクチンを承認し、2007年から13歳~17歳を対象に接種の女性を始めている。2012年からは13歳~18歳が無料で接種を受けられるようになり、10歳~12歳は学校での接種も開始されている。
国内においても、子宮頸がんに関する正しい知識が広まり、予防のためのワクチン接種や検診を推進する機運が高まるか、注目したい。
以下、リリース内容となります。