記事の要点
・女性医療 × AIのフェムテックベンチャー・vivolaが、不妊治療データ検索アプリ「cocoromi(ココロミ)」の提供開始と、シードラウンドにて3,000万円の資金調達を実施したことを発表。
・cocoromiでは、自分に合った治療情報を得られるデータ検索サービスに加え、通院スケジュール管理や治療ログの機能なども実装。ユーザーが自分の治療ログを記録していく事で、より自分に合った治療データが表示されるようになる。
・今後は薬の服用アラーム機能など、ユーザーからリクエストのあった機能を順次追加していく予定。またそれに付随して、有料の個別分析レポートサービスやオンラインでの医師のセカンドオピニオン等のサポート機能も提供を予定。
LoveTechポイント
不妊治療を始めると、妊娠する以外の“終わり”の定義が非常に難しく、また正解もないため、検査結果や一部の情報に一喜一憂したり、意識せずに検索に没頭してしまうなど、精神的にも負担が大きいものです。
このような情報の洪水に溺れることなく、適切に取捨選択をしながら不妊治療を行えるアプリとして、cocoromiが果たす役割は大きいと感じます。
編集部コメント
生理や不妊、更年期の症状など、女性特有の課題をテクノロジーで解決することを目指す「FemTech(フェムテック)」領域。その市場は急成長をしており、様々なサービスが生まれている。
今回新たに発表されたのは、女性医療 × AIのフェムテックベンチャー・vivola株式会社が開発した、不妊治療データ検索アプリ「cocoromi(ココロミ)」だ。
同社は、付加価値のある情報を提供することで妊娠を望む人々の不安を減らし、納得のいく生き方をサポートしていく事を使命として、「cocoromi」を開発。2020年6月よりWebサイトサービスとして提供してきた。
そもそもなぜこのようなサービスが必要かというと、不妊治療には様々なレイヤーの情報があって当事者だけでは必要なものの取捨選択が困難だからだ。
治療のフェーズごとに、様々な治療方法や検査があり、専門用語も多く、内容が難しいことも相まって、どれが必要で自分に合った治療方法であるかを調べるのは、多大な時間と労力が必要となる。
厚生労働省が2021年3月に公表した「不妊治療の実態に関する調査研究 」によると、体外受精については1回あたり平均約50万円と、不妊治療を行う当事者の経済負担は大きく、それに加え「自分に合った情報が得られない」「通院頻度が多く仕事との両立が難しい」「治療の長期化により、経済的・身体的・心理的負担が大きい」などといったペインが挙げられた。
一度の治療が高額であり、治療方法によって通院回数や妊娠成功率も変わるとなると、当事者にとって、治療方法や病院選びは非常に重要な課題である。
このような背景のなかで開発されたcocoromiは、今回、通院スケジュール管理や治療ログといった新機能追加やUIUXの改善が行なわれ、スマホアプリとして正式にリリースされた。
通院スケジュールの管理は、仕事と両立するうえでは特に必要なタスクである。
cocoromiでは、アプリのカレンダーでの通院スケジュール管理はもちろん、Googleカレンダーとの連携ができる。
毎回の診療内容も、採卵、移植、検査等のカテゴリーごとに記録していくことで、周期ごとの治療サマリを確認することができ、治療内容と治療によるホルモン値の変化を一覧で振り返る事も可能だ。転院をする際には、このサマリをコピーして医師へ提出する事で、転院先での医師とのコミュニケーションもスムーズにできる。
また、cocoromiにはデータから不妊治療を分析する機能も備わっている。
一般的には、個別性が高い不妊治療において統計データというものはあまり意味をなさない。だがcocoromiでは、過去に不妊治療を経て妊娠した人の統計データだけではなく、女性の年齢やAMH(抗ミュラー管ホルモン)、妊孕性に影響のある疾患等から同質性を定義し、データべースから自分と似た人のデータを見ることができるのだ。
つまり、治療ログを記録すればするほど、自分と似た人の参考になる同質データを表示していけるということになる。
さらに、アプリ内には治療や病院の情報収集の場として、患者同士での交流が可能なトークルームも実装。不妊治療での専門用語や、病院による治療方針の違いなど、カテゴリーごとの悩みや疑問を患者同士で共有することができる。病院検索機能で、土日診療や夜間診療などの条件を指定して全国の病院を探すことも可能だ。
以上の通り、cocoromiを使うことで、各所に散在していた治療データや病院情報を、自分に合った形で管理をできることになる。
今回のリリースに合わせて同社はシードラウンドにて3,000万円の資金調達を実施したことも発表しており、今後は薬の服用アラーム機能など、ユーザーからリクエストのあった機能を順次追加していく予定だ。また、それに付随して、有料の個別分析レポートサービスやオンラインでの医師のセカンドオピニオン等のサポート機能も、提供を予定しているという。
さらに、アプリの利用により、2年間で3万人の体外受精のデータを取得する事を目標とし、収集したデータの分析により、個別最適化された治療プロトコールの提供の一助となる、医療機関向けの同質症例データベースの開発にも取り組んでいくとのこと。
国内における少子化は加速しており、2020年の出生数は87万人で過去最少。深刻度を増す一方で、子供を産みたくても産めず不妊治療をしている女性が50万人以上いることは、早急に解決すべき社会課題だと言える。
ただ、いったん不妊治療を始めると、妊娠する以外の“終わり”の定義が非常に難しく、また正解もないため、検査結果や一部の情報に一喜一憂したり、検索魔になったりと、精神的にも負担が大きい。
このような情報の洪水に溺れることなく、戦略的に不妊治療を行えるアプリとして、cocoromiが果たす役割は大きいだろう。