記事の要点
・周産期の女性の体調・生活管理サービスを手がける京都大学発ベンチャーの株式会社Famileafが、妊娠期のうつ病・緊急疾患の早期発見に向けたサービスの開発にむけ、シードラウンドの資金調達を実施。
・開発中の体調管理アプリ「hug+u(はぐゆー)」では、血圧・体重・睡眠時間など、自宅で簡単に測定できる健康情報を記録することで、合併症やうつ状態の予防や早期発見に繋げることを想定している。
・今回調達した資金により、周産期のうつや緊急を要する状態の早期発見を可能にする研究開発を推進し、本リリースに向け協業企業の探索加速と、更なる事業拡大を目指す。
編集部コメント
周産期の女性の体調・生活管理サービスを手がける京都大学発ベンチャーの株式会社Famileafが、妊娠期のうつ病・緊急疾患の早期発見に向けたサービスの開発にむけ、シードラウンドの資金調達を実施した。
2020年11月に設立された同社は、「誰もが安心して出産できる社会へ」をビジョンに、妊婦特化型PHR(Personal Health Record:個人の健康・介護・医療情報)サービスを開発している。
昨今、出産年齢の高齢化に伴い、ハイリスク妊娠が増加しており、厚生労働省によると、妊婦の3人に1人は35歳以上であるという(厚生労働省「令和元年(2019年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)。
これに伴い妊娠中の健康管理の重要性も増しており、特に妊娠高血圧や妊娠糖尿病といった妊娠期の合併症は、予防・早期発見することが重要とされている。一方で、限られた回数の妊婦健診のみでは母子のリスクを早期から察知することが難しいのが現状だ。
加えて、コロナ禍におけるメンタルへの影響は女性で特に大きく(※1)、妊婦の心理的ストレスが高まっているという報告(※2)もあり、このような生活環境の変化は、近年日本で増加している豪雨や地震などの自然災害の発生時にも生じ得るものだという。
※1. 内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書」
※2. Mahaffey, B. L., Levinson, A., Preis, H., & Lobel, M. (2021). Elevated risk for obsessive-compulsive symptoms in women pregnant during the COVID-19 pandemic. Archives of women’s mental health, 1–10. Advance online publication.
そこで、Famileafでは、血圧・体重・睡眠時間など、自宅で簡単に測定できる健康情報を記録することで、合併症やうつ状態の予防や早期発見に繋げる体調管理アプリ「hug+u (はぐゆー)」を開発している。
hug+uでは、お腹の張りや出血の有無といった妊娠期に特化した体調管理項目を幅広くカバー。入力した体調の履歴は見やすいグラフや表で表示され、そのデータから健康状態やストレスの測定・分析を行い、妊娠期の大切な体の管理を行うことができる。
また、日々のデータはかかりつけ医や行政と共有することで、妊娠中の身体的・精神的不調の早期発見につながるほか、パートナーや家族に母子の様子やサポート方法を共有も可能なため、周りの人も妊婦の支援を行いやすくなる。
ただ記録・管理するだけだとなかなか続かない健康管理だが、企業と連携し、継続率等に応じて進んでいく「出産にむけた準備クエスト」といった、楽しく続けられるインセンティブがあるのも特徴だ。
2021年2月からはSOMPOひまわり生命保険株式会社との実証実験も実施。同社の従業員や京都大学医学部附属病院、京都府内提携病院の妊婦等を対象にhug+uを2週間提供し、利用者体験の検証・市場ニーズを調査中である。
今後は、健康情報の電子化や融合、マイナポータルとの連携、病院とのデータ連携を実現し、妊娠期の身体的・社会的リスクの特定に繋げていくとのこと。また将来的には、母子のパーソナルデータを保管できる電子母子手帳のような形で、妊婦健診が整っていない発展途上国も含めた、世界中での利用を目指し開発を進めていくという。
まずは今回調達した資金により、引き続き、周産期のうつや緊急を要する状態の早期発見を可能にする研究開発を推進し、本リリースに向けて協業企業の探索を行い事業の拡大を目指す。また、次のシリーズA調達に向けての検討も開始するという。
ただでさえ不安が多い妊娠期間。昨今のコロナ禍によりさらに不安要素が増えるなか、本サービスがその不安解消の一助となることを期待したい。