記事の要点
・コード・フォー・ジャパンが、各地のシビックテック団体や民間サービスと連携して、飲食店情報をオープン化して広く社会で共有するためのプロジェクト「OPEN EATS JAPAN」を開始。
・本記事執筆時点で、標準データとしてあるべき店舗情報およびメニュー情報がまとまっており、かつデータベースのリレーション情報構造も公開。
・今後は各協力団体において、今回作成された標準フォーマットに準拠する形での飲食店オープンデータの公開を進め、また飲食店情報をより検索しやすくするために、分類のための標準タグ(キーワード)の整備も進める予定。
LoveTechポイント
様々な切り口で飲食店支援情報が流通している中、せっかくの熱量が継続性の問題で持続しないのが非常に勿体無く、サンクコストになってしまうのが非常に歯がゆいと感じていました。
今回発表されたプロジェクトが、飲食店の持続的な支援につながるだけでなく、身近なテーマでデータの標準化を意識させてくれる点が、非常にLoveTechだと感じます。
編集部コメント
インターネットが世界中あらゆる情報発信のプラットフォームへと台頭して約30年。世界の情報量は指数関数的な増加の一途をたどっている。今年5月に米IDCが発表した調査結果によると、2020年に全世界で流通するデジタルデータの総量が59ゼタバイトを超えるとしており、1ZBは1021バイト、世界中の砂浜の砂の数とも比喩されるほどに莫大な数字なので、その59倍がいかに膨大な数かがお分りいただけるだろう。
すでに無作為な情報発信が、人々の適切な情報取得の妨げになっていることは明らかであり、増え続ける膨大なデジタルデータの波に、Googleといった検索エンジン等の最適化も追いついていない状況といえるだろう。
そんな中で必要となるリテラシーが「情報の標準化」だ。標準化という言葉には様々な側面があるが、ここでは「汎用性と拡張性のための標準ルール」との意図で使用する。
例えば共通テーマにおいて1,000人の情報発信者がいた場合、特になんの標準ルールもない場合は自由な発信が可能な一方で、後から情報を収集・分析するのが困難となる。そもそも、分析の際に前提となる統一の横軸を探すのだけで一苦労だ。一方で標準ルールを設けると、フォーマットに即した形での情報発信となるので自由加減が制限されるが、一方で後続の収集・分析作業が圧倒的に楽になる。
当メディアで以前実施した、コロナ禍における企業・団体等による支援一覧を作成した際、統一のルールがない情報の整理が困難を極めた。
[clink url=”https://lovetech-media.com/lovetechlifelab/2020covid19solution/”]
日々大量の情報が焼畑的に流通する昨今のデジタル社会において、特に支援や救済を目的とする情報発信、さらにはオープンデータとしての活用を前提にするのであれば、この「標準化」への設計がキモになることは明らかである。
そんな中、情報技術を活用して全国の自治体やコミュニティと地域課題解決に取り組む一般社団法人「コード・フォー・ジャパン」が、各地のシビックテック団体や民間サービスと連携して、飲食店情報をオープン化して広く社会で共有するためのプロジェクト「OPEN EATS JAPAN」を開始した。
https://www.code4japan.org/activity/open_eats_japan
コロナ禍においては、多くの飲食店が休業等を余儀なくされた状況の中、各地で支援のためのテイクアウト・デリバリー情報のキュレーションプロジェクトが立ち上がった。それらの取り組みを一過性のものに終わらせず、継続的に様々なアプリ等のサービスで利用できるオープンデータへと昇華させるべく立ち上がったのが、今回の「OPEN EATS JAPAN」だという。
飲食店情報をオープンデータとして公開する際の標準的なフォーマットを定めた仕様書は以下の通り。本記事執筆時点で、標準データとしてあるべき店舗情報およびメニュー情報がまとまっており、かつデータベースのリレーション情報構造も公開されている。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1fneMd1HGSnWZAaRyK_r2MWKxwujRqC7A/edit#gid=1513166793
こちらは、すでに飲食店情報やテイクアウト・デリバリー情報の検索サービスを運営している民間企業や、各地のシビックテック団体と協力し、互いの所有するデータやサービスデザインを共有しながら進められた。
<協力団体(五十音順)>
- うちたべ
- オープン川崎/Code for Kawasaki
- KATTE
- Code for YOKOHAMA
- Save the tables
- 株式会社トレタ
今後は各協力団体において、今回作成された標準フォーマットに準拠する形での飲食店オープンデータの公開を進め、また飲食店情報をより検索しやすくするために、分類のための標準タグ(キーワード)の整備も進める予定だという。
飲食店は重要な社会インフラの一つ。生きる上での“食事処”であり、同時に食のエンタメを提供してくれる“遊園地”でもある。データの標準化プロジェクトは、そのようなインフラの保全につながる重要な役割を担うことだろう。
本プロジェクトはオープンにディスカッションが進められており、誰でも参加できる。
すでに飲食店検索サービスを運用している人はもとより、飲食店情報の収集や公開を計画している人や社会データの標準化、シビックテックに興味のある人は、ぜひCode for JapanのSlackから参画してみてはいかがでしょう。
以下、リリース内容となります。