記事の要点
・「SDGsをAIで見える化」する非財務データバンクのサステナブル・ラボが、総額1億4,198万円の第三者割当増資による資金調達を発表。
・今回の増資により、国内メガバンクグループや国内外の大手エネルギーインフラ企業との強固なパートナーシップを保有するEEI(環境エネルギー投資)らとの連携を進め、サステナブル・ラボが保有・解析する非財務データの金融業界やエネルギー業界へのスピーディーな提供を図っていく。
・サステナブル・ラボは、企業活動に伴う環境や社会への影響を様々な方法で解析し具体的数値を分野別にスコア化する「ESGテラスト」や、環境に優しい製品を購入したり環境に配慮した場所を利用したりすると溜まる「SDGsマイル」と、そのための流通プラットフォーム「GIRIGO」を開発・提供している。
LoveTechポイント
SDGsと聞いて、どこかぼんやりとした印象を受けるのは、実行した際の効果や影響を測るモノサシがないからでしょう。
スコア化エンジンやマイル循環プラットフォームを提供することで、機運醸成だけでなく、企業や個人がより具体的にSDGs活動に参画しやすくする社会を目指している点が、LoveTechだと感じます。
編集部コメント
「SDGsをAIで見える化」する非財務データバンクのサステナブル・ラボ株式会社が、総額1億4,198万円の第三者割当増資による資金調達を発表した。
引受先となるのは、株式会社環境エネルギー投資(以下、EEI)、サステナブルテクノロジーズ株式会社及び個人投資家の砂川大氏と金當一臣氏である。
そもそも、「SDGsをAIで見える化する」とはどういうことか。
これからの時代になくてはならない共通言語として、国際的に注目を集めている持続可能な開発目標「SDGs」であるが、一方でサステナビリティ推進にかけたリソースやコストへの費用対効果は極めて不透明だという側面がある。
例えば、一般的に企業が資金を金融機関や株式市場から調達する際に、決算資料など財務状態を可視化した様々な資料を提出しなければならないのは常識であるが、「環境や社会への貢献度」といった“非財務”の部分はなかなか説明しにくいのが現状である。
ゆえに、「世の中にとって良さそうで、ブランディング的にも良さそうだから」という理由だけでは、構造的な持続性を実現しつつ、且つビジネスとしても成立させるための投資を実行するには、説得力も確証性もないのが現状であった。
そこでサステナブル・ラボが開発したのが、SDGs推進のモノサシとして誰もが目でみてわかるようにスコア化するシステム「ESGテラスト」。企業活動に伴う環境や社会への影響を様々な方法で解析し、具体的数値を分野別にスコア化するシステムである。
スコア化のプロセスはざっくりと以下の通り。
①企業のCO2排出量やリスク管理の仕組みなど1,400以上のデータをシステムで抽出
②AI(機械学習)がそれらのデータを企業の従業員規模や経済規模などを勘案した上で比較処理をし、リアルタイムに分析
③それらのデータを元に有識者・専門家と協議の上、具体的に強みなどをスコア化する
(今後はインタビューやアンケートなども踏まえ、更に踏み込んだスコア化を予定)
このスコアが良ければ、有利な条件で融資を受けられたり、また株式市場で投資家から好感を得たり、消費者や求職者から選ばれやすくなるといったことが期待されるというわけだ。
また同社はもう一つ、「SDGsマイレージ」制度という取り組みも行なっている。
これは、環境に優しい製品を購入したり環境に配慮した場所を利用したりするとマイルがたまり、そのマイル数に応じてサービスが受けられるというプラットフォーム構想だ。
マイルは、まずはカフェや旅館、お土産屋等とコラボレーションし、それぞれの施設がどれだけSDGsに貢献しているかをGIRIGO(ギリゴ)プラットフォームのAIを用いて数値化する。
その数値に合わせて、その店舗などで買い物などをした顧客にマイルを付与し、貯まった累積マイルにより決まるランクに合わせて、値引きや特典を受けられるというシステムとなっている。環境や社会に優しい消費行動をした人ほどサービスを受けられるという、好循環のコミュニティー構築が期待される取り組みだ。
ちなみに「GIRIGO」という名称は、 実業家渋沢栄一の「義利合一(ぎりごういつ)」が由来で、「利」の経済的利益を追求するだけでなく「義」の社会や環境への貢献も実現する社会を構築したいという願いを込めて名付けられたという。
サステナブル・ラボは今回の増資により、国内メガバンクグループや国内外の大手エネルギーインフラ企業との強固なパートナーシップを保有するEEIらとの連携を進め、サステナブル・ラボが保有・解析する非財務データの金融業界やエネルギー業界へのスピーディーな提供を図っていく。
また、今回の資金調達と並行して、同社は新たに加藤康之氏、中村匡氏、宇田直樹氏を取締役として迎えており、より一層の専門性を高めていくとしている。
当メディアとしては、今回の出資者の中でも以下、砂川氏のコメントが特に印象的であった。
「人類の長い歴史に照らせば、まだ実験段階でしかない金融資本主義は、いま大きな転機を迎えている。利益だけが評価される時代から、社会の構成員として責任ある行動「も」評価される時代へ。とはいえ、その評価軸はお金ほど単純ではない。サステナブル・ラボは、SDGsを単なる標語からアクショナブルな指針に変える重要なツールを提供している。パラダイムシフトの一旦を担うサステナブル・ラボの今後の活躍が楽しみでしょうがない。」
環境や社会への貢献が、売上や利益、株価また求職人気にどれだけ繋がっているか。これらが紐解かれることで、究極的には人間の活動と地球環境の保全が両立するのではないだろうか。
以下、リリース内容となります。