記事の要点
・国土交通省が9月18日、「令和2年度 スマートアイランド推進実証調査」を全国の離島10地域で実施することを発表。
・令和2年度予算では、離島地域が抱える課題である「ニーズ」と、民間企業などが有する技術やソリューション等の「シーズ」をマッチングさせ、現地実装に必要な実証調査を行っていく。
・例えば長崎県五島市では、二次離島と本島を結ぶ遠隔医療×ドローン物流、スマート水道メーター、エネルギーマネージメントシステムの調査、計3つの事業を実施する予定。
LoveTechポイント
⼈⼝減少と⾼齢化が著しい⼀⽅で、本⼟から隔絶し明確にエリアが限定され、顔の⾒える関係が維持されている離島だからこそ、テクノロジーを活かした課題解決の必要性が高まっていると言えます。
離島のペインポイントを解決するだけでなく、ライフライン等が先進的技術で整備されていくことで、結果として中長期的な関係人口の創出にも繋がることが想定される点で、LoveTechだと感じます。
編集部コメント
国土交通省は9月18日、「令和2年度 スマートアイランド推進実証調査」を全国の離島10地域で実施することを発表した。
スマートアイランドとは、離島地域が抱える課題解決に向けてICTやドローンなどの新技術の実装を図るべく、国交省が進めている取り組みだ。島内における公共交通の不⾜・不便や、電気・水道といったライフラインの不安定、災害への脆弱性、観光ニーズの把握不⾜、複式学級の弊害、そして医療サービスの不足と偏在など、離島地域には様々な課題が山積しているからこそ、それらを官民連携して解決していく取り組みとなっている。
令和2年度予算では「スマートアイランド推進実証調査」ということで、離島地域が抱える課題である「ニーズ」と、民間企業などが有する技術やソリューション等の「シーズ」をマッチングさせ、現地実装に必要な実証調査を行っていく。
具体的には、今年1月〜3月の間で上述のニーズとシーズが募集され、18団体から24件のニーズが、また31団体から38件のシーズがそれぞれ提案された。その上で、具体的な企画提案の公募がなされ、最終的に以下の10地域での実施が決定した。
- 東京都八丈町(八丈島)
- 愛知県南知多町(日間賀島など)
- 三重県鳥羽市(神島など)
- 島根県海士町(中ノ島)
- 広島県大崎上島町(大崎上島)
- 香川県三豊市(粟島)
- 長崎県新上五島町(中通島など)
- 長崎県五島市(福江島など)
- 熊本県上天草市(湯島)
- 大分県佐伯市(大島)
例えば長崎県五島市では、以下3つの事業を実施する予定だ。
- 遠隔医療×ドローン物流による離島医療の利便性と不安定さの解消
- LPWAを活用したスマート水道メーターによる検針作業の工数削減
- 効率的な再生可能エネルギーの地産地消を目指す電力マネージメントシステムの導入調査
「遠隔医療×ドローン物流」では、二次離島である嵯峨ノ島(66世帯107人)が実証の舞台となり、アバターロボットとタブレット端末を使って同島の住民が福江島の医療機関を受診できるようにする。また、ドローン等で検体および処方薬を島間輸送できる仕組みも、実証的に構築をする予定である。
協働する民間企業は以下の4社。
- 長崎大学離島医療研究所:地域診療所と連携し遠隔医療の実施、域内医療従事者の合意形成などを担当。五島市に事務所を設置し、日頃から離島・へき地医療の課題解決に取り組む。
- ANAホールディングス株式会社:医薬品等の配送受付からドローン物流の運航管理全般と配送依頼システムの構築を担う。
- 株式会社NTTドコモ九州支社:空のLTE強度を見える化し、空のインフラであるエアウェイ策定をサポート。また、遠隔医療およびドローン飛行における通信環境を提供。
- avatarin株式会社(協力事業者):医師-患者間のコミュニケーションを円滑にするサポートツールとしてアバターロボット「newme(ニューミー)」を提供。
嵯峨ノ島では週に1回の頻度で福江島在住の医師が出張診療に訪れるが、悪天候時には医療が提供できないため、医療提供頻度やその確実性は高くない。だからこそ、二次離島に住んでいても安定的な医療を受けることができるよう、非接触型の離島医療モデルを実証的に実現し、社会実装のための課題を検証していくというわけだ。
⼈⼝減少と⾼齢化が著しい⼀⽅で、本⼟から隔絶し明確にエリアが限定され、顔の⾒える関係が維持されている離島だからこそ、課題解決に向けたSociety5.0の実装が待った無しの状況である。
今回の各実証内容がモデルケースとなって、課題先進エリアである離島社会のアップデートが推進されることが期待される。
以下、国土交通省「スマートアイランド」関連ページとなります。