記事の要点
・関西電力100%子会社のゲキダンイイノ合同会社が、時速5kmで自動走行モビリティ「iino(イーノ)」をリリース。
・大型商業施設などの敷地内等における通行人全般がターゲットのスタンド型「type-S」と、よりラグジュアリーな体験を提供する横たわり型「type-R」の2種類のモビリティを発表。
・体験コンテンツ第一弾として、栃木県宇都宮市大谷地域で「iino Dining Utsunomiya City」を開始。type-Rに横たわって、採石場跡である大谷資料館と、日本有数の竹林がある若山農場、それぞれでのディナー付モビリティ体験を提供。
LoveTechポイント
昨今「遅いインターネット」なんて言われている通り、効率化や成長至上ではない価値観がポコポコと芽生えており、それがまた多様性として受け入れられ始めている印象です。
今回発表されたiinoもまさに、「あえて遅いモビリティ」として、移動効率ではない存在として誕生したもの。そのような観点で、新たなエンタメのあり方を模索している点がLoveTechだと感じます。
編集部コメント
移動の歴史とは、長らくは効率化の歴史でもあったと言える。
かつての紀元前における乗馬から始まり、そこから馬車、蒸気機関車、自転車、電気自動車、バイク、ガソリン自動車、電車、新幹線、飛行機という進化の流れの中で、速度の向上とともに生活の効率化を志向してきた。そう、そこには常に、速度と機能性の向上が目指されていたと言える。
一方で手段が多様化し、その次に価値観の多様化がもたらされた結果、現代社会においては一種の“成長ポルノ”に違和感を感じる人が多くなってきているのも事実だろう。
そんな流れの一貫だというと、きわめて乱暴な言い方ではあるので控えるが、移動の歴史の中で、あえて「低速UX」を設計するモビリティが誕生した。
その名も「iino(イーノ)」。時速5kmで自動走行モビリティである。
いわゆる自動運転カーなのだが、私たちが一般的に想像するようなフォルムのものではなく、どちらかといえば、遊園地の乗り物のようなイメージに近いと言えるだろう。
こちらを開発するのは、ゲキダンイイノ合同会社。関西電力の100%子会社だ。
関西電力グループでは中期経営計画(2019-21)において、社会課題解決に向けたエネルギー分野での新たなチャレンジの切り口の一つとして「Mobility」を標榜。「eモビリティ」ビジョンを策定し、本店に設置したイノベーションラボとの協働を通じて、新規事業、新商品・サービスの開発および既存事業の改革に着手している。
ゲキダンイイノの設立(2019年7月)およびモビリティサービス「iino」のリリースは、この流れを受けてのものだ。
大きなテーマは「Mobility × 文化・エンタメ」であり、まずは第一弾として、2種類のモビリティタイプが発表されている。
こちらの「type-S」は、大型商業施設などの敷地内や、都市の歩行者エリアにおける通行人全般がターゲットのモビリティ。各自治体の観光エリアやテーマパーク内、大学内キャンパス、工場見学など、様々な用途が想定されている。利用イメージは以下の動画でわかるだろう。
一方でこちらの「type-R」は、よりラグジュアリーな体験コンテンツを想定したもの。
業界としてのターゲットは広いという意味で重複するものの、その対象はよりハイエンドをイメージしており、各地の景観や街並みなど、観光資源等を横たわりながら贅沢に味わうための乗り物として開発されている。
具体的なイメージは、以下の動画がわかりやすいだろう。
こちらのiinoでは、体験コンテンツ第一弾として、栃木県宇都宮市大谷地域での期間限定サービス「iino Dining Utsunomiya City」をスタートしている。
具体的には、採石場跡である大谷資料館と、日本有数の竹林がある若山農場、それぞれでの「ディナー付モビリティ体験」である。2名2時間でのtype-R貸切で、いずれかのロケーションでの贅沢な時間を満喫できるというわけだ。
【大谷資料館】11/3(日)〜11/5(火)
第一部:16:30〜18:30、第二部:19:30〜21:30
【若山農場】11/4(水)〜11/5(木) ※雨天中止の場合あり
第一部:16:30〜18:30、第二部:19:30〜21:30
それぞれの回は、1組2名で20万円(税別)。決して安い価格ではないが、人工的な回遊設計がなされていない場所で、横になりながら眺めを満喫できる体験は、きわめて貴重で希少なものだと言えるだろう。
時速5km以下の特性を活用して、地域・エリアの新たな楽しみ方を提案するiino。
心理的・身体的なリラックスや五感機能の拡張など、これからの時代に欠かせないウェルビーイングな感覚へと誘ってくれるに違いない。
以下、リリース内容となります。