「個別商用化支援」と「共同技術開発」。インテグリカルチャーが2つの細胞培養事業を発表

食/地域/環境

記事の要点

汎用大規模細胞培養技術の開発および社会実装を目指すインテグリカルチャー株式会社が、個別商用化ソリューション「CulNetパイプライン」およびCulNet System共同技術開発ソリューション「CulNetコンソーシアム」を整備し、5月7日より提供開始したことを発表。

 

・同社は、保有する独自汎用大規模細胞培養システム(CulNet System)を細胞培養の基本インフラとして提供し、細胞培養が国内外に広く普及することを目指す「細胞農業統一基盤「Uni-CulNet(ユニ カルネット)」構想を掲げている。

 

・CulNetコンソーシアムでは2020年10月までを目処に、5領域「標準培養液」「実機」「培養槽」「細胞製品加工」「種細胞」で共同開発する国内外企業を募集中。

LoveTechポイント

現状の動物由来製品は、環境負荷が大きく倫理的にも問題が多いからこそ、細胞培養技術の社会実装と文化レベルでの浸透が、大きな課題解決に繋がると期待しています。

動物を殺さなくとも多様性ある生活を持続的に楽しめる未来に向けたLoveTechな取り組みとして、インテグリカルチャー発の各プロジェクト進捗を、引き続き注視して参りたいと思います。

編集部コメント

私たちは今、多くの動物達の犠牲のもとで成立する社会生活を送っている。

 

日々口にする食肉や魚介類などの動物由来タンパク源、それらを育てるための飼料等、皮革などの生物由来素材でできた鞄やコート、プラセンタやスクアレンといった機能性物質など、パッと思い浮かぶだけでも多岐にわたるだろう。

 

だがこれらは、その環境負荷の大きさや持続可能性、アニマルウェルフェアなどの観点よりグローバルレベルで課題となっている。例えば現在、世界の作物が生産するカロリーの36%は動物用飼料として消費されており、また世界の農地の8割以上は何らかの形で畜産業に使用されている。

 

農林水産省の資料によると、牛肉1㎏を生産する場合「約11㎏の飼料」が必要とされており、またそれとは別に数万リットルの水も消費されるのだ(世界規模で見た場合、飼料の必要量は約24kg/牛肉1kgという論文データもある)。

画像出典:農林水産省「知ってる?⽇本の⾷料事情」p.2

 

このように食肉一つとっても、地球環境への負荷は膨大であり、中長期的な代替手段の模索が続けられている。

 

そのような背景のもと、“汎用”大規模細胞培養技術の開発および社会実装を目指しているのがインテグリカルチャー株式会社だ。

 

この度、同社は「細胞農業統一基盤「Uni-CulNet」」構想の下、独自汎用大規模細胞培養システム「CulNet System」を用いた、個別商用化ソリューション「CulNetパイプライン」およびCulNet System共同技術開発ソリューション「CulNetコンソーシアム」を整備し、5月7日より提供開始することを発表した。

 

まず「細胞農業(Cellular Agriculture)」とは何かということだが、これは、本来は動物や植物から収穫される産物を、特定の細胞を培養することにより生産する方法として同社が定義する用語。以下、2018年11月に開催されたイベントでも解説されている

 

例えば細胞培養による食肉生成自体は、実は数年前より実現している。今から7年前、2013年にはオランダで200gの培養肉パテが作られた。

 

だが、この時にかかった費用はなんと約3,000万円。たった200gの食肉を作るのに、圧倒的な高コストだったのだ。

 

主な要因は以下2点。

  • 細胞の培養に必須な培養液(細胞の栄養や有用因子が入っている液体)の単価が高い
  • 一度に多くの細胞を培養する技術、細胞を筋肉様に組織化する技術など、効率的な培養をするための技術が未熟

 

そこでインテグリカルチャーでは、動物の体内に似た環境を人工的に構築することで、この細胞培養コストを大きくダウンさせる技術を開発している。

 

体内では臓器間相互作用、要するに臓器が出す有用因子が血管を通って他の臓器に届き影響を与え合う機能が構築されているため、“効率よく”そして”安価に”細胞の成長などを促すことができる。この効率的かつ自然発生的な体内システムに学び、似たシステムを人工的に構築する事で、一般的な培養法では突破し得なかった大幅なコストダウンを可能にするというわけだ。

 

同社ではこの仕組み全体を「CulNet System」(独自汎用大規模細胞培養システム)と命名しており、これを細胞培養の基本インフラとして提供し、細胞培養が国内外に広く普及することを目指す構想が「細胞農業統一基盤「Uni-CulNet(ユニ カルネット)」となる。

 

食肉をはじめとする食品はもちろん、コスメやサプリなど、ライフスタイルを豊かに変化させる様々なプロダクトが実現する考えだ。

インテグリカルチャーSlideShare資料より

 

Uni-CulNet構想におけるソリューションは、現時点で2つある。

 

まずは「CulNetパイプライン」。これは、個別企業との個別商用化目標に向け、受託研究~商用化ソリューションまでを提供するものだ。

 

国内外の食品メーカー、化粧品メーカー、製薬企業、同社以外の細胞農業スタートアップ等を対象に、細胞培養製品の商用化生産をゴールに受託研究を進める。

 

具体的には、まずインテグリカルチャーにて半年~1年程度の小規模な事前試験を行い可能性を判断してもらった上で、本格研究を開始。最終的にはCulNet Systemを用いた細胞培養製品の生産を目指す。

Step 0  :半年~1年程度の小規模な事前試験を通じ、事業化の可能性を判断頂く
Step 1  :弊社内で CulNet SystemのPoCを実施
Step 2以降:CulNet System実機を貴社に設置し、試験生産・商用生産にスケールアップ

※事前試験にあたり、商品化を検討している細胞種の調達ルートを既にお持ちの場合、受託研究期間を短縮可能です。

 

CulNet Systemによる「商用生産」の際は、企業が希望する細胞を大量培養して中間材として提供したり、企業が保有する細胞をCulNet Systemに適合させるための事前加工、 企業の製品生産ラインをインテグリカルチャーサイトに設置するなどのサポートを予定しているという。

 

当メディアでも報じた日本ハム株式会社との共同研究など、すでに複数社の受託研究を開始している状況だ。

 

もう一つのソリューションは「CulNetコンソーシアム」。オープンイノベーションによるコンソーシアム形式で、CulNetの細胞培養共通インフラ化実現を目指すプロジェクトである。

 

ここでは、CulNet Systemの開発要素を体系化し、培養液、培養機器、生産技術、品質管理、製品加工の分野で試験的な共同技術開発を順次開始する。今回の発表を機に、以下5領域で共同開発する国内外の企業を募集している。

  • 標準培養液:既存の培養液(基礎培地)とは根本的に異なる発想でのレシピ開発・規格化
  • 実機:CulNet Systemの実機を構成する部品群および運用方法の開発・規格化
  • 培養槽:可食部などの製品を製造する培養槽を構成する要素の開発・規格化
  • 細胞製品加工:生成物(細胞構成物/培養上清)の加工と安全性を満たすためのプロセス管理要素の開発・規格化
  • 種細胞:畜産資源、漁業資源などから細胞を抽出し、培養を行うための加工プロセス開発・規格化

 

登録・維持費は400万円〜/年(実施状況により、金額改定の可能性あり)。2020年10月末を目処に各領域のパートナー選定を行い、2021年1月から運用開始を予定しているとのことだ。

 

CulNet Systemが一般インフラとして普及することで、中長期的には人工的に細胞培養できる簡易キットが各家庭に普及し、人々はベランダでの家庭菜園のごとく、牛肉や鶏肉、鴨肉、ワニ肉といった好みの細胞を栽培して自宅でそのまま調理する。

 

そんな、動物を殺さなくとも食のエンタメを楽しめるLoveTechな未来に向けた第一歩として、当メディアでも引き続き、同社の各プロジェクト進捗を注視して参りたい

 

以下、リリース内容となります。

長岡武司

LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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