コミュニケーションロボットが介護施設スタッフの業務を軽減。こころみが会話シナリオを制作

医療/福祉

記事の要点

・「孤独をなくし、こころがつながる」をビジョンに掲げる株式会社こころみが、コミュニケーションロボット「PaPeRo i」向けに、介護施設スタッフの業務負荷軽減に特化した会話シナリオを制作したことを発表。

 

・5~10分という比較的長時間の会話シナリオとなっているので、PaPeRo iと高齢者の会話中、スタッフは離席してほかの作業に従事できるよう設計。また、PaPeRo iと高齢者、スタッフによる三者会話用のシナリオも搭載。意外な一面を引き出す会話が生じるようにも工夫されている。

 

・あらかじめ決まったシナリオだけでなく、高齢者の名前や思い出など、より個人に寄り添った会話シナリオも、パソコンやスマートフォンで簡単に作成できる。スタッフが作ったオリジナルシナリオをPaPeRo iが話すことにより、高齢者の心に驚きと喜びが生まれ、施設への信頼が大きくなる

LoveTechポイント

人と物理的に会えなくとも、電話やビデオ会議システム等によって社会的関係を維持することはできますが、介護施設だと、設備面や人的フォローの関係でなかなか実現しないのが実情でしょう。

だからこそ、今回発表された「人との会話に近しい」仕様で設計された会話シナリオを組み込んだコミュニケーションロボットは、人の尊厳に関わる孤独や孤立感を防ぎ、介護施設入居者の生活に彩りを与えてくれるでしょう。まさにLoveTechな仕様です。

編集部コメント

新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染拡大防止に伴う外出自粛要請等により、多くの方々の社会生活に影響が出ている。

 

働いている若い人々はもちろん、例えば介護施設にいる高齢者の方々にとっても、その影響は甚大である。

 

例えば、多くの介護施設で「面会制限」が行われているので、入居する高齢者は家族に会えない状況が続いている。これに伴い、スタッフの業務負荷が増大し、施設内における会話の減少が懸念されているというのだ。

 

そんな状況の中、「孤独をなくし、こころがつながる」をビジョンに掲げる株式会社こころみが、コミュニケーションロボット「PaPeRo i」向けに、介護施設スタッフの業務負荷軽減に特化した会話シナリオを制作したと発表した。

 

こころみと言えば、一人暮らし高齢者向け会話サービス「つながりプラス」をはじめ、親のための自分史作成サービス「親の雑誌™」、高齢者会話メソッドによるロボット・スマートスピーカー・チャットボット向け会話シナリオ開発など、相手とのコミュニケーションを軸に事業展開するITベンチャー。

 

当メディアでも、昨年2月に取材させていただいたLoveTech企業だ。

 

一方「PaPeRo i」とは、NECプラットフォームズ株式会社が提供するロボット型のユーザインターフェースを備えた商品。パートナー企業の得意領域に応じて用途が変わってくる、BtoB向けロボット筐体プラットフォームだ。

 

今回、介護施設での利用を前提に、高性能なマイクと音声認識エンジンを搭載した「おしゃべり機能オプション付きPaPeRo i 」が用意され、そこに介護施設向け会話シナリオが搭載されている。

 

こころみには、これまでつながりプラスや親の雑誌等のコンシューマ向け事業を通じて、膨大な高齢者との会話データがある。その量は、昨年2月時点で2,000時間だったので、現在はさらに増えている状況だ。

 

培われた「世間話」は文字データとして、独自開発エンジンに学習され、そこで高齢者向けのオリジナル会話シナリオがルールベースで出来上がっているという。

画像出典:こころみホームページより

 

そのエンジンを元に、脚本家・舞台演出家の舘そらみ氏が全面監修して制作されていったのが、今回発表された「PaPeRo i」向け会話シナリオだという。同氏はTVドラマの脚本や舞台作りに携わっており、その際に得た「人間と人間のコミュニケーション」の知見を元に2012年よりコミュニケーションロボットの作成を開始。現代に至るまで複数のロボット作成を担当し、技術者とは異なる目線からの「利用者に愛されるロボット」つくりを進めている人物である。

 

今回制作された介護施設向け会話シナリオの特徴は、発話内容・発話時間・発声スピードをコントロールすることで、認知症の方の注意を長時間引き付け、楽しみを生み出す会話体験を実現している点。

 

5~10分という比較的長時間の会話シナリオとなっているので、PaPeRo iと高齢者の会話中、スタッフは離席してほかの作業に従事できるよう設計されている。

 

また、PaPeRo iと高齢者、スタッフによる三者会話用のシナリオも搭載することで、通常の高齢者とスタッフでは生まれることのない、意外な一面を引き出す会話が生じるようにも工夫されている。

 

さらに、あらかじめ決まったシナリオだけでなく、高齢者の名前や思い出など、より個人に寄り添った会話シナリオをパソコンやスマートフォンで簡単に作成できるようにもなっている。スタッフが作ったオリジナルシナリオをPaPeRo iが話すことにより、高齢者の心に驚きと喜びが生まれ、施設への信頼が大きくなるというわけだ。

 

監修者の舘氏によると、これらの仕様によって「噛み合いすぎない会話」、つまり、我々人間が日頃行ってる会話に近しいものが完成したという。

 

この介護施設向け会話シナリオを搭載したPaPeRo i は、同ロボットのビジネスパートナーを通じてレンタルすることが可能(ビジネスパートナーソリューション例はこちら)。

 

COVID-19の影響で会話量の低下とスタッフの業務過多に悩んでいる介護施設担当者は、今回発表されたPaPeRo iの導入を検討してみても良いかもしれない。

 

またこのようなロボットにかかわらず、チャットボットなど、高齢者向けソリューションにおけるユーザーコミュニケーションを「人間らしく自動化」させたい方は、こころみに相談してみると良いだろう。

 

「演劇的シナリオ作成方法論」と「ロボット開発経験」に基づいた、信頼構築と情緒の満足に最適化された会話シナリオ作成ソリューションを提供してくれるはずだ。

 

以下、リリース内容となります。

LoveTechMedia編集部

「”愛”に寄りテクノロジー」という切り口で、社会課題を中心に、人々をエンパワメントするようなサービスやプロダクトを発信しています。

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