「不妊の原因の約半分は男性にある」
日本で不妊に悩む夫婦は約5.5組に1組の割合で存在するといわれている中、この事実自体は少しずつ認知が広がっていると感じる。しかし、認知が広がることとアクションに繋がることは別。
2018年7月にリクルートライフスタイルが発表した「不妊に関する意識調査」の結果によると、不妊の原因の約半分は男性側にあることを知っている男性は46.4%、女性は56.7%とそれぞれ半分程度いらっしゃるものの、実際に医療機関での精液検査を受けたことがある男性は13.0%にとどまっている。男性は課題を認識しつつ、動きに繋がっていない、ということだ。
そのような背景の中本記事では、同社が展開するスマホで精子の濃度と運動率を測定できるサービス「Seem(シーム)」について、それぞれ前編・後編に渡ってお伝えする。
まず前編では、サービス開発責任者の入澤諒氏に、サービス開発の経緯や思い、これからの展開についてお話を伺った。
スマホで精子をチェックするという作業のイメージが湧かない方も多いと思うので、まずは以下「Seemの使い方」動画をご覧いただきたい。
リクルートの中でも新しいチャレンジでした
--スマホで精子をチェックするという発想は非常に斬新と感じます。Seem開発は何がきっかけだったのでしょうか?
入澤諒(以下、入澤氏): もともとはリクルート入社前に、女性の生理日を管理するアプリの企画や、プロモーション及びマーケティングを担当していました。そこで不妊症のことを知り、世の中の「妊娠」に対する男女の意識の差に疑問を持っていました。
女性は基礎体温を測ったり生理日管理アプリを使ったり、それこそ色々な方法を調べて妊娠に向けて努力をしているのですが、男性は特に何もしない。せいぜい早く家に帰るくらい。そんな話をよく耳にしていました。
また、世の中のサービスでも、女性向けの妊娠に向けたサービスや商品はたくさんありますが、男性に向けたものがあまりない。
WHO(世界保健機関)の調査で、不妊の原因の半分は男性なのに、この意識の差はおかしいな、効率悪いよなと思いまして、男性にもっと積極的に妊娠に向き合ってもらうようなサービス開発をしたいと考えました。
--それがSeemにつながったということですね。初めからこのように、スマホのカメラに専用レンズを設置するような構想だったのでしょうか。
入澤氏:そうですね、リクルートに入社して最初に企画した構想からほぼ変わっていないですね。
こちらが企画当初のイメージ図です。
--すごい、ほとんど現在の形ですね!
入澤氏:最初から作りたい形が決まっていたので、だからこそ、ここまでほぼブレずに進めてこれたと思います。
2014年11月に弊社に中途入社し、そこで全くゼロの状態から新規事業としてSeemの企画を立案し、試作品の開発から社内でのモニター実験、それを受けてのフィードバックと機能改善を繰り返し、2016年4月にリリースしました。
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