キュレートポイント
ITジャーナリスト・湯川鶴章氏が編集長を務めるWebメディア『AI新聞』より。
本記事は、昨年11月に米シリコンバレー・パロアルトで開催されたテクノロジーカンファレンス「TransTech Conference」のレポートシリーズです。(TransTechについて、当メディアで取材した記事はこちら)
今回のテーマは「デジタル療法」。薬を使わず、ゲームなどのデジタルコンテンツを使って脳の特定の回路を刺激し精神疾患などを治療する方法として、ここ最近注目されているものです。
米国では「医薬品と同等の効果がある」としてFDAが承認したアプリが既にいくつもあり、また日本でも2014年11月施行の薬事法改正(現医薬品医療機器等法、薬機法)で、療法医療機器としての承認対象になりました。
このデジタル療法にとって大事なのは「クローズド・ループ」だと強調する、カリフォルニア大学のAdam Gazzaley博士。VRにはゲームのみならず、医療や教育といった用途も大いに可能性がありそうです。
本記事は「AI新聞」のキュレーション記事で、元記事の一部転載版となります。
カリフォルニア大学のAdam Gazzaley博士はシリコンバレーで開催されたTransTech Conferenceに登壇、ゲームやVRを使って精神疾患を治療したり、高齢者の認知能力を向上させる「デジタル療法(digital medison)」の現状と今後の見通しについて講演した。同博士によると、デジタル療法は、AIが実現する最大の価値の一つ。治療だけではなく学習にも効果を発揮し、この仕組みを通じて「今後AIがHI(人間の知性)を進化させることになる」と言う。「ゲームしていないで勉強しなさい!」と怒られていた子供たちが「勉強より先にゲームしなさい!」と怒られるようになる!?
デジタル療法とは、薬を使わずにゲームなどのデジタルコンテンツを使って脳の特定の回路を刺激し精神疾患などを治療する方法で、最近注目を集める研究分野の1つ。同博士は、高齢者がプレイすることで注意力と記憶力を高めることのできるゲーム「Neuroracer」を開発。3年間の実験結果を基に、2013年9月に学術誌Natureに論文を発表し、高く評価されるている。
「もちろんそれはうれしいことだが、本当のゴールはこの技術を人々の生活の中に浸透させること」。そう考えた同博士は、その後、ゲームクリエイターたちと新会社Akili Interactive社を設立し、より楽しく、より没頭できるような洗練されたゲームを複数開発。「来年以降、これらのゲームが社会に大きな影響を与えるのではないかと期待している」と語っている。日本ではシオノギ製薬がAkili社のライセンスを取得し、ADHDを対象としたゲームアプリや、自閉スペクトラム症を対象としたゲームアプリを導入していくと発表している。
▼スマホゲームで脳トレ。大事なのはclosed loop
デジタル療法にとって大事なのはクローズド・ループだ、と同博士は強調する。クローズド・ループとは、環境に介入すると同時にその影響を計測し、それを基に介入を微調整する仕組みのこと。簡単な例で言うと、エアコンが、クローズド・ループ・システムの1つだ。希望する室温を例えば23度に設定しておけば、室温が22度のときは暖房の温風を出し、23度になればスイッチがオフになる。逆に室温が25度に上がれば、冷房に切り替わり冷風を出す。介入と同時に計測し、介入を微調整し続けているわけだ。
ゲームでは、プレイ中のスマホやタブレットの傾き具合や、タップの頻度などを計測し、プレイヤーの習熟度や熱中度を推測。習熟度に従って、ゲームの難易度を微調整し続けることで、難し過ぎず、簡単過ぎないゲーム展開を実現できる。熱中度に従って、ゲーム内で提供する報酬(ゲットできるポイントや、ステージ)を微調整し続けることで、プレイヤーのゲームへの没入度合いを深めるという。
つづきは以下よりご覧ください。
また、元記事執筆者である湯川鶴章氏が主宰する、2歩先の未来を読む少人数制勉強会「TheWave湯川塾」の詳細は以下となります。