ロジック × 金沢工業大学の共同研究「AI介護計画書」、介護記録ソフトのCare-wingに実装

医療/福祉

記事の要点

・介護事業所向け業務効率支援システムの開発・販売を行うロジック社が、2018年より金沢工業大学と進めてきた共同研究の成果の第一弾として「AI介護計画書」を開発。

 

・AI介護計画書は、介護を受ける利用者や家族の介護に対する意向やニーズを入力すると、その情報を元にAIが分析した長期目標、短期目標、支援方法を提案できる機能。目標や支援方針に即したケア項目の提案や、ケア手順を、テンプレートの組み合わせで簡単に作成できる機能も搭載。

 

・同社が提供する介護記録ソフト「Care-wing」(ケアウイング)の無償オプションとして先行提供され、提供開始後も順次アップデートが行われる予定。

編集部コメント

ここ1年以内の間に、AI技術を活用した介護支援ソリューションの動きが活発化している。

 

当メディアで以前取材した株式会社ウェルモでは、ケアマネジャーのケアプラン(居宅サービス計画書)作成業務を支援するクラウドサービスをリリースしており、また株式会社シーディーアイでもケアプランのクオリティ向上に向けたAIシステムを提供している。さらに市場環境全体で見ると、2020年11月11日(介護の日)には一般社団法人日本ケアテック協会が立ち上がり、介護現場とテクノロジー企業をつなげるような存在も誕生した。

 

介護業界で大きな課題となっている「2025年問題」へと対応すべく、官民連携して介護活動へのテクノロジー活用を後押ししている状況と言えるだろう。

 

そのような状況の中、新たに、利用者一人ひとりに合った介護計画をAIが提案し計画書の作成をサポートするシステム「AI介護計画書」が、株式会社ロジックより発表された。

 

1995年の創業から、建築CADをはじめ様々なシステム開発を行ってきた同社では、「すべての人が年をとることを楽しみに思う社会をつくる」をビジョンに、介護事業所向け業務効率支援システムの開発・販売を行っている。

 

10年前、地元金沢の介護事業者から「ヘルパーさんが使えるシステムを作って欲しい」と依頼を受けて介護システムの開発をスタートし、2009年には、記録に特化した介護ソフト「Care-wing」(ケアウイング)の販売を開始。勤怠管理はもちろん、スマホで入力されたヘルパーさんの介護記録から自動的に実績記録データを作成するなど、まさにケアテック製品として、現場の業務効率化を後押ししてきた。

 

2021年度には2,200事業所、サービス利用者(介護職員、看護師)約66,000人、訪問介護利用者約264,000人に利用されおり、サービスを通して収集されるデータは日々約65,000件、計4,300万件以上という、国内最大規模の介護ビックデータになっている状況だ。

 

そんなロジック社では、2018年より金沢工業大学との共同研究も進めており、同社の介護ビックデータを活用したプロジェクトの第一弾として発表されたのが、今回の「AI介護計画書」というわけだ。

画像:株式会社ロジックWebページより。共同研究では、金沢工業大学がデータを分析し、機能の心臓部となる検索-提案アルゴリズムと例文データベースを開発。そこにロジックが開発したサービスの画面インターフェースを組み合わせることで、機能を実現している

 

 

名前のとおり、AI介護計画書は、訪問介護計画書作成にあたって援助目標や支援方針をAIが提案するというもの。

 

介護業界では慢性的な人手不足が深刻化しているが、その要因の一つとして、多忙で仕事がきついなどの介護職に対するネガティブイメージがあるという。介護職が多忙となるのは、利用者に対するケア意外の業務が多いためであり、介護計画書の作成作業もその中のひとつとされ、高齢者一人ひとりの状態に適した内容とする必要があるため時間や労力がかかる業務となっている。

 

そこで、AI介護計画書では、利用者やその家族の介護に対する意向やニーズを入力すると、AIにより長期目標、短期目標、支援方法が自動で提案されるという。また、介護計画書はサービス提供責任者が作成するものだが、AI介護計画書を使えば、提案されたものから適切な項目を選択していくだけで介護計画書の作成を完了させることができる。

 

さらに、目標や支援方針に即したケア項目の提案やケア手順を、テンプレートの組み合わせで簡単に作成できる機能も搭載。介護計画書作成にかかる時間と工数を大幅に削減できるソリューションというわけだ。

 

こちらのAI介護計画書は、前述のCare-wingの「無償オプション」として先行提供され、10月20日実施予定のアップデートにて、全てのCare-wingユーザーがAI介護計画書を一定期間、無料で利用できるようになる予定だ。

 

また、同社は引き続き金沢工業大学との共同研究においてAIによる介護業界向けソリューションを拡大し、将来的には社会全体で高齢者のデータを安心・安全に共有することで、高齢者のQOL向上を目指していくという。

 

新しいテクノロジーを誰もが使えるサービスとして提供し、介護業界を魅力ある業界へと変えていく同社の動向に、今後も注視していきたい。

 

《AI介護計画書概要》

  • サービス開始日:2021年10月20日(水)
  • 利用方法:介護記録ソフト「Care-wing」の無償オプションとして提供
  • 提供地域:日本国内
  • 提供対象:介護記録ソフト「Care-wing」を利用している訪問介護事業者
  • WebサイトURL:https://care-wing.jp/

 

LoveTechMedia編集部

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