記事の要点
・精神科向け電子カルテメーカーのレスコが、ひきこもり支援などを行う相談支援機関向けのクラウド型相談記録システム「Waroku (ワロク)パブリックヘルス」を提供開始。
・支援団体がそれぞれ作成・保管していた相談記録や成育環境情報を連携・支援窓口間で共有が可能となり、どの相談窓口でも「寛解」に向けて個別最適化した対応の支援をすることができる。
・相談記録の記載を補助する記事テンプレート機能や、各自治体の報告様式に沿った報告書作成機能を搭載。紙ベース運用からクラウドベースへシフトさせることでペーパーワークを削減し、業務負担軽減を図り、関係者間の情報連携も支援する。
LoveTechポイント
近年、精神疾患を持つ患者数は増加しており、傷病別の患者数をみると脳血管疾患や糖尿病を上回っています。
不安定なVUCA時代だからこそ、Warokuパブリックヘルスの活用によって、相談する人も受ける人も、またそれを管理する団体、それぞれの負担が減り、悩める人が減ることをことを期待したいと思います。
編集部コメント
株式会社レスコが、“ひきこもり”支援のためのクラウド型相談業務支援システム「Warokuパブリックヘルス」を提供開始した。
レスコとは、精神科に特化した電子カルテメーカー。日本で初めて精神科専用の電子カルテ「Alpha」を開発し、精神科病院での導入数はトップシェアを誇る。
その他、精神科診療所向けの電子カルテ「Warokuクリニックカルテ」、クラウド型訪問看護支援システム「Waroku訪問看護」の3つのシステム群を提供しており、変化し続ける精神科医療の現場をサポートしている企業だ。
同社によると、精神科医療の質の向上においては、価値観を形成する生まれてから現在までの生活環境や家庭環境等のバックグラウンドである「成育環境情報」を紐解くことが重要であるという。
これについては、例えば厚生労働省でも「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みが重要であると提示している。
つまり、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保されたシステムにするべきということだ。
このためにも、医療機関・行政・NPOなどの各機関が一体となって連携する必要があり、「成育環境情報」を各所でバラつきなく確実かつスムーズに共有することが欠かせないということになる。
2019年の内閣府の統計によると、「ひきこもり」は15歳~39歳までが約54万人、40歳~64歳までが約61万人と、全世代で100万人を超えると推計されており、行政・医療機関・支援団体や地域での包括的なケア体制へのニーズが高まっている。
このような背景から、ひきこもり支援や生活困窮者自立支援など、困りごとを持つ人を支えるNPO法人や支援団体、医療機関のためのシステム「Warokuパブリックヘルス」は開発されたということだ。
Warokuパブリックヘルスを使うと、いつでも・どこからでも情報の入力と閲覧が可能なため、自治体内でのシームレスな情報共有が可能となる。
これまで困りごとを相談する際は、悩み別に「それぞれの窓口へ相談しなければならなかったのが、Warokuパブリックヘルスによって成育環境情報も共有されるため、総合窓口相談で一括して相談を請け負い、適切な支援へと繋げられるようになり、相談する側の負担も軽減される。
また、行政報告書作成などの事務作業に多くの時間がかかっているが、自動集計機能や記事テンプレート機能を含んだ「報告書作成支援機能」によって、職員の作業効率を上げ、本来の支援業務に注力することもできるようになる。
テスト運用では、記録記載・管理において、紙運用と比較して月21時間程度、訪問先でのシステム活用において、職員1人あたり月6時間程度、相談者情報の確認・照合について、1件あたり5分程度(月100件の新規相談がある場合、8時間程度)削減できたという。
さらに、データ管理については、電子カルテレベルのセキュリティを確保。同社の電子カルテは、厚生労働省の定めるガイドラインに則り「電子カルテの三原則」である真正性・見読性・保存性を担保し、加えて3省2ガイドライン(※)に準じた高いセキュリティレベルをクリアしたものなので、実績のあるプラットフォームを使うことで相談記録や成育環境情報を医療情報レベルで取り扱うことも可能になったという。
※厚生労働省、経済産業省および総務省の3省が出している2つのガイドラインの総称
今後レスコは、手掛けている電子カルテで得られる診療データに加えて、新システムから収集する相談記録などを集積した、メンタルヘルスに関わる『医療ビッグデータ』の構築を目指す予定だ。
そして、それらのデータを学術研究機関がAI分析することで、こころの問題の早期発見・予防・治療につなげる仕組みを構想中とのこと。
近年、精神疾患を持つ患者数は増加しており、傷病別の患者数をみると脳血管疾患や糖尿病を上回っているという。
不安定なVUCA時代だからこそ、Warokuパブリックヘルスの活用によって、相談する人も受ける人も、またそれを管理するそれぞれの団体の負担が減り、悩める人が減ることをことを期待したい。