TransTechがやってくる
「TransTechがやってくる~Well-Beingを実現する最先端テクノロジーとは~」というイベントが、2019年3月13日にWASEDA NEOで行われた。
Well-Beingという単語は、人々の社会生活を計る新たなる幸福価値尺度として我が国でも最近よく耳にする言葉だが、一方でTransTechは初めて聞く単語だ。
Transformative Technologyが正式名称だという。おそらくほとんどの日本人は、このクロステックワードをご存知ではないのではないだろうか。
TransTechとは、エモーショナル(感情)、メンタル(心理面)において人間の進化を支援する技術を指すという。『マズローの欲求5段階説』を唱えたマズローが、死の直前に「自己実現欲求」の上にもう一つ「自己超越欲求」があることを主張し、そこからシリコンバレーのテクノロジーカルチャーと融合し、利他的で社会全体がよりよく生きられる社会を目指すためのテクノロジーとして注目されたものだ。
モデレーターの宍戸幹央(ししどみきお)氏。イベント会場となったWASEDA NEOコーディネーターであり、AMBITIONERS LAB共同代表や一般社団法人 Zen2.0 代表理事も務める
知らずしらずのうちに人を財に変えて生活を支配するという、昨今のテックジャイアント各社のビジネス姿勢に向けられた数々の批判の反動から生まれたようなムーブメントにも感じる。
具体的には、米シリコンバレー・パロアルトで「Transformative Technology Conference」というイベントが2015年より開催されており、昨年の11月で4回目を迎えた。科学者、スタートアップ、VC、組織開発コンサルタントやコーチ、メディテーターなど1,000名ほどが集まり、盛り上がりを見せたという。
Transformative Technology Conference2018会場内の様子
Transformative Technology Conference2018会場外の様子
今回のWASEDA NEOイベントにも、この新たな潮流を学ぶべく、アンテナの高いビジネスパーソンが100名以上も集結した。
働き方、幸せ、マインドフルネス、SDGsなどWell-Beingに関する論調が高まる中で、新たに登場したTransTech。Love Tech Mediaでは、この新たなムーブメントの根底に流れる愛を感じ取った。愛に寄り添うテクノロジーの最先端事例を探るべく、本イベントのレポートをお届けする。
誰もが簡単に劇的な生産性と幸福を得ることができるTransTech
改めてTransTechとは何なのか。この疑問に対して、まず株式会社ヒューマンポテンシャルラボ 代表取締役/Cultivatorの山下悠一(やましたゆういち)氏が解説された。昨年開催されたTransformative Technology Conference 2018に参加した数少ない日本人のお一人である。
「TransTechとは、人類としての”内的成長と発展”という新たなユースケースとデザイン意図を持った”最先端テクノロジーにおけるピヴォット”である、と定義されています。昨今Well-Beingという言葉が世界中でさけばれていますが、このTransTechも間違いなく、この潮流に含まれています。」
そもそもこの「Well-Being(ウェル・ビーイング)」とは何なのか。
山下氏によると、近代が目指してきたWell-Doing(劇的な出力・生産性)とは別軸のヒトのあり方の概念であるという。
Transformative Technology Special Brief [2019]より
うつ病やストレスに対するソリューションなどといったメンタルヘルスの文脈におけるWell-Being(上図左サイド)はもちろん、ビジネスマンにとって必要なスキルとしてのWell-Being(上図中央サイド)、さらには ”Exponentioal Human Development” と表現されるように強化されたメンタルおよび感情能力を司るものとしてのWell-Being(上図右サイド)という、大きく3レベルで考えることができる。
「近代ではとにかく頑張って成果を出すというDoingの軸が重要視されてきました。このWell-Doingをひたすら目指すことで劇的な生産性を実現してきましたが、それに伴い個々の精神や家庭・コミュニティの崩壊という副作用が表出し続けた時代でもあります。これがモダンテクノロジー(ModernTech)の限界だったと言えるでしょう(上図右下象限)。
一方で、古代チベットを始めとする悟りの世界もありました。ここがAncientTechと言えるでしょう。ずっと洞窟などにこもって、何万時間も修行が必要な、宗教に閉じた世界です。(上図左上象限)
近代を経てきた我々は、きっと図の右のほうに行ってWell-Doingを続けたいはずですが、同時にWell-Beingとして幸福も伴いたい。
TransTechは、この両方の要素を掛け合わせ、誰もが簡単に劇的な生産性と幸福を得ることができるという考え方に基づいています。(上図右上象限)」
市場規模は3兆ドル以上と推定
TransTech誕生には大きく3つの背景があるという。
まずはトランスパーソナル心理学。1960年代に展開しはじめた心理学の新しい潮流である。『マズローの欲求5段階説』で有名なアブラハム・マズローだが、実は彼は晩年に、自己実現理論の最上位に6段階目の「自己超越」を置いており、それがベースとなった学問である。
次に、このトランスパーソナル心理学の基盤になったとも言われるヒューマン・ポテンシャル運動(人間性回帰運動)である。「幸福」「創造性」「自己実現」の主体である人間の人間性や潜在能力を回復・発展させることを目的としたもので、ニューエイジの基盤ともなっていった。
そして最後三つ目が、シリコンバレーで育まれたハッカー文化だ。脳をハックできるのだとしたら面白い、という文脈で多くのエンジニアがマインドフルネスの流れに乗っていったと言われている。
このTransTech、市場規模としては何と3兆ドルにものぼると、パロアルトのカンファレンス主催者たちは試算している。
具体的には12分野20市場セグメントに分化されて定義・試算されており、今日時点でもスリープテックや感情認識、ストレスマネジメントなどの領域でプロダクトが数多く提供されている。
「近代における資本主義競争社会の下では、世界は国家や金融・企業といったそれぞれの領域に部分最適化されており、個人はその大きな権力に依存するという構図で、各々が引き裂かれた存在でした。
これからのシェアリングエコノミーやブロックチェーンおよび限界費用がゼロになるような、いわゆる協同主義共生社会においては、個人同士が繋がっていき、一人ひとりが拡張化して、全体性を取り戻す存在になると考えています。」
「その中においてTransTechは、なにも全てをデジタルデータに置き換えようという考えではありません。ベースに人間性という思想があります。自分の身体感覚とデータを通じて思考をアップデートしていき、それにより圧倒的なパフォーマンスだけでなく健康で幸せなWell-Beingを成し遂げるべく進化を与えるものとして、TransTechは期待されていると言えます。」
欠乏の心と満たされた心
次にお話されたのは、山下氏と同じく昨年のTransformative Technology Conference 2018に参加されたITジャーナリストの湯川鶴章(ゆかわつるあき)氏。
TrashTech解説の前に、まず前提として、湯川氏がここ何年か問題意識として感じている「社会の二極化」についてお話しされた。
二極化の要因は「ココロ」。現代人には「欠乏の心」の持ち主と、「満たされた心」の持ち主がいるという。
<湯川氏が考える欠乏の心・事例>
「やられたら、やり返す」「やられる前に、ビビらせる」「自分だけ」「自分たちだけ」「日本だけ」「先進国だけ」
・明日のために今日を生きる
・他人との比較
・いじめ、炎上
・ハングリー精神
・不平、不満、人の悪口。自己肯定感が低く、他人に嫌いな人が多い
etc…
<湯川氏が考える満たされた心・事例>
・今日を生きてこそ明日が来る
・一人ひとりがユニークで、無限の可能性
・人に期待しない、人を変えようとしない
・ハングリー精神よりパフォーマンスは上
・異なる意見に寛容。「どちらが正しい」より「どちらが楽しいか」
etc…
欠乏の心を持ったもの同士でいがみ合い、憎しみあっていく。一方、満たされた心を持った人同士が、拡大する富の恩恵を受けて好きなことをして、互いに幸福を与え続ける。そんな二極化が進んでいるという。
「フランス人僧侶のマチュー・リシャールさんが『幸せの習慣』をテーマに語ったスピーチでは、満たされた心とは、海底に流れる静かで平和な感覚だと仏教で説かれている、とおっしゃっています。
海の表面は波や水しぶきなどで常に上下に動いているが、海の底は常に静かな気持ちの良い時間が流れている。その静かで気持ちの良い時間に意識を向けるのが幸福なんだ、と説いています。
ハングリー精神や欠乏感をもって自己実現を目指しても、結局幸福になんてなれないということを、マズローさんは晩年になって発見しました。僕の友人で会社経営している人たちも、同じようなことを言っています。
ちなみに一番厄介なのは、欠乏の心を持った頭のいい人です。この人が権力を持つと、そういう人同士で対立が深まり、地球は今世紀中に破滅に向かうでしょう。」
1,200名への聞き取り調査から見えた”満たされた心”
そんな満たされた心の研究を進めている人物が米国にいる。Transformative Technology Conference主催者の一人であり、米ソフィア大学教授でもあるJeffery A. Martin博士(以下、Martin博士)だ。
Martin博士は、満たされた心とはどういう状態なのかを知るべく、まずは宗教家やスピリチュアルな指導者に対し、インタビューという形で聞き取り調査を実施していった。その後口コミを通じて聞き取り調査対象は一般の方々にまで及び、最終的にその数は1,200名以上となった。しかも、満たされた心に達していると思われる対象者50名に対しては、1回のインタビューが6時間から12時間にも及び、聞き取り調査以外にも身体的計測や実験を繰り返したというから驚きだ。
「Martin博士によると、満たされた心というのは、どういう状況であろうとも、心の奥に静かな幸福感がある意識状態であると言っています。
お酒を飲んで楽しかった、みたいなことではなく、先ほどの海底の静けさのような気持ちの良い心地を感じているということです。」
他にも、満たされた心の状態の人の共通の特徴として、雑念が少なかったり、自我の感覚が拡大する意識状態といったものがあったそうだ。
「Martin博士によると、ある調査では満たされた心の状態を体験したことがある人は、社会の約2割。一方、常に満たされた心の状態になっている人は、全体のわずか0.5%だったようです。しかも驚いたことに、常に満たされた心の状態にある人は、宗教家よりも一般人の中に多かったといいます。」
Martin博士は、この満たされた心のことを”Fundamental Well-Being”(心の根底にある幸福感)と表現している。
満たされた心の持ち主の状態を分類
Martin博士は、この満たされた心に達した人々のことをFinder(ファインダー)と表現し、聞き取り調査の結果を元にして、それぞれをLocation(ロケーション)という言葉で5段階に分類した。興味深い考察なので、それぞれのロケーションの特徴を簡単に記載する。
ロケーション1にいる人々は、多くの人が抱える”恐れ”が妄想であることに気づき、恐れを感じにくくなっていることが特徴だ。また、過去や未来に興味がなくなり、人生を物語のように見ていたことに気づき、物語には興味がなくなる。その結果、他人の物語に興味がなくなったり、映画や小説に興味がなくなることがあるという。心の平安が何よりも大事になり、それを守るために生活環境を変えようとするが、ロケーション1では、まだまだ社会の固定観念の影響を受けることがあり、時には傷つくこともある。
ロケーション2にいる人々は、ロケーション1よりもさらに妄想が少なくなり、脊髄反射的な感情が起こらなくなる。社会的承認を必要としなくなり、社会に植え付けられた行動を取らなくても平気になる。自分と自分以外の境界線が曖昧になってきて、宇宙との一体感を感じたり、ワンネス、梵我一如の世界観になることも特徴だ。
ロケーション3になると、感じるのは愛、思いやり、喜びが混ざり合った一つの感情だけだという。ネガティブな感情は形成の兆しを感じるものの、完全に形成されることはない。雑念はさらに少なくなるが、その一方で雑念をはっきりと認識できるようになる。雑念への察知能力が研ぎ澄まされるのだ。ロケーション2にあったワンネスが、神や大いなる何かとの一体感に変化していく。神との一体化ということは、一体化する自分を感じる必要があるので、ロケーション3では、また自我らしきものが復活するわけだ。キリスト教徒的には最高の状態で、ロケーション3でとどまるキリスト教徒が多い。仏教徒は、さらにロケーション4を目指すケースが多いようだ。ここまでくると、全てが今のままで完璧なので、社会を変えようという活動には積極的に参加しなくなる。
ロケーション4は、ロケーション3の神との一体感や自我の存在から、またしてもワンネス、梵我一如の世界観になる。ただしレベルがさらに進化しており、自分の口から出る言葉と相手の口から出る言葉は、同じ存在から出たものだという感覚を持つようになるという。また、自分が世界から独立した存在であるという感覚や、自分は自分の人生のコントロールをしているという感覚がなくなり、人生が勝手に目の前に展開されていく感覚になるという。ここまでくると、承認欲求から完全に解放され、社会の常識から離れ過ぎて、仙人のような生活になる人が多い。日本語で「悟っている人」という言葉のイメージは、ロケーション4だと思われる。またロケーション4の人の中には、そのときどきで、ロケーション2や3に自由自在に戻る人もいるという。
ちなみにロケーション5以降については、「到達した」という人もいるにはいるが、学問的な有効数が不足しているので、論文や著書では取り上げていないという。現在も調査中らしい。
「Martin博士曰く、ロケーション段階にかかわらず、Finderは増加傾向にあるとのことです。」
70%の人は満たされた心の状態に入れる
悟りの境地には、ごく少数の人しか入れないのだろうが、その前段階である満たされた心の状態には意外と簡単に入ることができると、Martin博士は主張している。同博士らが開発したオンライン瞑想プログラムに参加した人々の約7割が、欠乏の心の状態から、ロケーション1や2といった満たされた心の状態に、わずか4ヶ月で到達できたという。
同博士が開発したこのプログラムはFinders Courseと呼ばれ、1,000を超える世界中の瞑想方法から宗教色を排除し、現代でも使えそうな方法を26個選抜。ビデオ受講やグループセッションを通じて、その中から自分に合ったものを探し出すのだという。
Martin博士たちは「多くの修行者たちが悟りはおろか満たされた心の状態にも到達できないのは、自分に合わない瞑想方法に固執するから」と主張しているという。自分に合った瞑想方法を見つけ出せれば、ほとんどの人が恐れや不安の状態から、満たされた心の状態に移行するとしている。
「Martin博士は、Finderになるのは簡単。問題はなったあとだと言います。まだまだ現代社会は、欠乏の心でできている。その現実と折り合いをつけられず、結局、欠乏の心に戻る人が多いようです。博士は今後、Finderになった後のフォローに特化したプログラムの開発も検討しているようです。」
10分で瞑想状態に誘う研究事例も!瞑想関連テクノロジー
ここまでは主に瞑想による満たされた心へのアプローチについてのお話だったが、今回イベントのお題目はTransTech。瞑想を促進・サポートないしは代替するテクノロジーについて、何点か米国の最新事例が紹介された。
技術の流れとして、最初はfMRI (磁気共鳴機能画像法)やsEEG(定位的深部脳波 )といった脳計測に関するものから始まっていったが、最近ではtDCS(経頭蓋直流刺激)といった脳刺激のための技術も盛んになっている。
こちらは電気刺激。脳のどの部分に起因して鬱が発症するかがすでにわかっているので、該当箇所に対して電気刺激を与えることで細胞が活性化され、鬱症状が減るというものだ。
こちらは近赤外線。つまり光である。頭蓋骨は照射した光の数パーセントを通過させるのだ。心的外傷後ストレス障害や認知能力が低下している患者の脳にこの近赤外線を照射したところ、患者の認知能力改善が確認されたという。
「これをさらに瞑想の達人に試してみたところ、40Hz、80Hz、120Hz、160Hz、200Hzといった、40の倍数のところで、集中力向上やポジティブな感情の発生について大きな効果を感じたと言います。なんで40の倍数なのかはわかっていません。」
こちらは迷走神経を刺激するイヤホン型デバイス開発のための実験の様子である。
迷走神経とは、12対ある脳神経の1つで、唯一腹部にまで到達する神経。この迷走神経を刺激する電極を胸部に埋め込む手術は既に実用化されており、てんかんやうつ病患者に効果があるものとして認知されているが、手術費用が高く、デバイス故障や電池切れとなった際に再手術が必要になるという難点がある。
「実は耳の中にも迷走神経が走っており、そこに電気を流すことで、迷走神経を刺激することが可能になることがわかりました。各種セラピーと併用することで、いろいろな精神疾患に有効である可能性が高いと言われています。」
最後に、こちらは超音波を活用したデバイス。
瞑想に最も関与していると思われるのは、脳の中でもより深い部分なのだが、そこにピンポイントでエネルギーを送るのは非常に難しかった。電気や光だと、脳の深部にまで届かなかった。
そこで注目されているのが超音波技術だ。パラボナアンテナ風に発信装置を曲げることで、脳の奥深くの非常に小さな部位にだけにエネルギーを送る技術が確立できたという。
MRIで脳の血流を調べ、どの部位が関係しているかを特定した上で、超音波でピンポイントにエネルギーを送るという。
「今のアメリカ人にとって、一番雑念が浮かびやすい言葉が『トランプ大統領』だそうです(笑)。トランプ大統領と言うと、脳の一部分がメチャクチャ真っ赤になるらしく、そこに超音波を当てると、落ち着いてくるといいます。この技術が研究所内ではすでに確立されているようで、今後は一般市場に出せるように安全性の確立を目指していくようです。」
「ちなみに僕も現地でやってみました。
瞑想って、やってる方はご存知だと思いますが、体はだるくなるけど意識はキーンと冴え渡ります。これがものすごく心地良いんですよね。
僕の場合はこの状態に、ものの10分でなりました!
普通は、1時間くらい瞑想したら1週間に1回くらいはそういう状態に入る程度なのですが、10分でポンって入れたのは、ほんまにすごいなーと思います。」
日本人は銭湯での「マインド風呂ネス」が一番合っている
最後に、登壇者およびモデレーターによるトークセッションが行われた。
様々な質問・回答が飛び交った中、特に面白いと感じたのが、湯川氏が提唱する「マインド風呂ネス」と言う単語であった。
「Martin博士が言う”Fundamental Well-Being”(心の根底にある幸福感)や悟りの境地って、何もジッと瞑想をすることだけが、なれる方法ではないんですよね。
ジョギングやサーフィンといったスポーツを通じても瞑想状態に入れるし、プログラミングなどに熱中している状態も、一種の瞑想状態だと思います。
最近のオススメはサウナや銭湯です。
サウナで10分温まって、その後水風呂で20秒冷やし、1分休憩してからまたサウナに入る。これを3セット繰り返した後に、最後に20分間横になったり座ったりして休憩する。この20分がメチャクチャ大事なんです。
身体中を血液が行き渡る感じに意識が集中することで、思考が止まり、心が穏やかになる。うまくいけば多幸感に包まれます。
この方法なら、ほぼだれでもが瞑想状態に入れると思いますよ。」
確かに筆者も、これに近い入り方を銭湯のサウナで経験したことがあるが、お風呂の後のぼーっとする時間は、体がぐったりとだるくなるものの、意識は妙に冴え渡っており、なんとも言えない心地よさを感じたものだ。
「日本にあってシリコンバレーにないもの、それは銭湯です。日本にはまだ町中に銭湯が残っていて、これを使わない手はないです。半年も銭湯に通ったら、簡単に瞑想の効果を実感できますよ。
日本人はマインドフルネスよりも、マインド風呂ネスです!
ほんと、日本ってとっても恵まれてると思います。」
編集後記
FintechやEdtechといったクロステックワードは多くなってきていますが、TransTechは既存産業の枠組みにはまらず、個のTransformationという根本的な切り口で人の内面を進化させるという観点に、非常に興奮しました。
日本ではどうしても、瞑想といった精神世界に繋がるものは「怪しいもの」として、一般的には敬遠されてしまいます。
だからこそ、今回紹介されたような技術を使っての、具体的なデータによるエビデンスの明示は、この分野に対する意識そのものをアップデートするチャンスだと感じます。
2019年のTransformative Technology Conferenceは、11月15日〜16日にて昨年と同じくパロアルトでの開催を予定しているようです。興味のある方は、ぜひ行かれてみてはいかがでしょう。
最後に、記事中でご紹介したMartin博士による最新の書籍”THE FINDERS”が、今年3月31日に発売されます。難しそうな本ですが、興味のある方は、カンファレンスの前に、まずはこちらをご覧になってみてはいかがでしょう。
新たな世界が広がるかもしれませんよ。
『Transformative Technology Conference』詳細についてはこちらをご覧ください
本記事の登壇者
山下悠一(やましたゆういち)
株式会社ヒューマンポテンシャルラボ 代表取締役/Cultivator
早稲田大学理工学部建築学科出身。外資系コンサルティングファームアクセンチュアに12年勤務し、大手製造流通業の企業戦略、人事戦略・組織開発、チェンジマネジメント等を手がける。
近代西洋パラダイムに基づく画一的な経営手法の限界を痛感し2015年にドロップアウト。ブログ「僕がアクセンチュアを辞めた理由」が大きな反響を呼ぶ。その後、農業やパーマカルチャー、禅、ヨーガ、ネイティブアメリカンなどの古代叡智と米国カウンターカルチャーを体験し、現象学、心理学、システム理論などを統合した社会変革理論を構築。能力開発、企業変革コンサルティングを行っている。
湯川鶴章(ゆかわつるあき)
ITジャーナリスト/学習コミュニティTheWave代表/TheWave湯川塾・塾長
1958年和歌山県生まれ。大阪の高校を卒業後、渡米。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。
シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立、ブログメディアTechWaveを創業。2013年から編集長を降り、新しい領域に挑戦中。
宍戸幹央(ししどみきお)
AMBITIONERS LAB共同代表、一般社団法人 Zen2.0 代表理事、鎌倉マインドフルネス・ラボ代表、WASEDA NEOコーディネーター
愛媛県生まれ。東京大学工学部物理学科卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系修了。
日本IBMを経て、クローバル人材育成を中心とした社会人のビジネススキル全般の教育研修を手がけるアルー社の創業時に参画。講師部門の責任者として企業における人材育成の最先端の知見と経験を得る。現在は、これからの時代の企業組織づくりの支援をするとともに、個人と組織の可能性を広げる学びの場を数多く企画する。