日本経済新聞社が主催する、人工知能(AI)の活用をテーマにした初のグローバルイベント「AI/SUM(アイサム)」。「AIと人・産業の共進化」をメインテーマに掲げ、4月22日〜24日の3日間かけて東京・丸の内で開催された、大規模ビジネス&テクノロジーカンファレンスである。6月に大阪で開催されるG20に先駆けた取り組みとも言える。
レポート第9弾の本記事では、「貧困、健康、教育、そしてさらに…… 社会課題解決に向かうAIは ”限界知らず”」というテーマで設置されたセッションについてお伝えする。
AIのソーシャル・グッドな使い方は、これからの人類にとって必要不可欠な叡智となる。貧困、難民危機、食料と水の安全保障、腐敗、教育へのアクセス、雇用機会創出等は、AIが与えてくれる様々なユースケースのほんの一部だろう。
本セッションでは、米インテルのAI for Social Good部門責任者と、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のディレクターを招き、それぞれにおけるソーシャル・グッドのためのAI活用事例について、ご紹介いただいた。
※写真左から順番に
<モデレーター>
・ウナ・ソフティッチ(Una Softic)氏
日本経済新聞社
<登壇者>
・アンナ・ベスケ(Anna Bethke)氏
Intel Head of AI for Social Good
・オサムイメン・スチュワート(Dr. Osamuyimen (Uyi) Stewart)氏
Bill & Melinda Gates Foundation Director, Global Development, Strategy, Data & Analytics
米インテルとビル&メリンダ・ゲイツ財団より
まずは両登壇者について簡単にご紹介する。
アンナ・ベスケ(Anna Bethke)氏は、米インテル社の人工知能製品グループ ” AI for Social Good”(社会的利益のためのAI)部門の責任者を務めている。ソーシャル・グッドな活動をする団体・組織に対してインテルのもつ技術を提供するなどして、パートナーシップ構築を進める仕事だ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)で航空学の理学修士取得後、一貫してデータサイエンティストとしてのキャリアを進める。MIT Lincoln Laboratory、Argonne National Labs、Lab41を経て、2017年より、現在の米インテルに入社した。入社後もディープラーニングデータサイエンティストとしてインテルAIラボにて自然言語処理のアルゴリズム解析に携わっていたが、よりソーシャル・グッドな領域における体系づくりに携わりたいと考え、2018年より現在の立場となる。
オサムイメン・スチュワート氏は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の戦略、データ分析(グローバル開発)担当ディレクターを務めている。同氏のチームでは、ビッグデータ解析を用いてクロス・ドメイン領域における意思決定を支援したり、財団データ投資を通じてグローバルな公共財を生み出す、といったことを担当している。
スチュワート氏はこれまで20年以上にわたり、AIベースの技術開発に携わっている。ゲイツ財団に入社する前は、AT&T Labs、Call Sciences、およびNuance Communicationsで技術リーダーとして務め、その後13年間はIBM Researchで同じく技術職として勤務、2011年にアフリカで最初のリサーチセンター設立を任され、2012年から2016年までIBM Research – Africaの共同創設者兼チーフサイエンティストとしても活躍する。
その中で、リサーチアナリストはもっと多くのことができると確信し、アルゴリズムの”オタク”ではなく、より社会の発展に使えるような環境に身を置くべく、ゲイツ財団にジョインされたと言う。
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