インディア・スタック事例から考えるSociety5.0時代のガバナンス《前編》 〜AI/SUM Report 10

イベントレポート

はじめに

 日本経済新聞社が主催する、人工知能(AI)の活用をテーマにした初のグローバルイベント「AI/SUM(アイサム)」。「AIと人・産業の共進化」をメインテーマに掲げ、4月22日〜24日の3日間かけて東京・丸の内で開催された、大規模ビジネス&テクノロジーカンファレンスである。6月に大阪で開催されるG20に先駆けた取り組みとも言える。

 レポート第10弾の本記事では、「Society5.0時代の新しいガバナンス ー 政府の役割はいかに変革されるか」というテーマで設置されたセッションについて、前後編に渡ってお伝えする。

 AI・IoTなどの新たなデジタル技術がビジネス構造を破壊・再構築する中、世界では国家によるガバナンスも破壊的イノベーションの岐路に立たされている。

 Society5.0時代における新たな政府役割や官民の関係性について、公共サービスや規制の新しいあり方、プラットフォーマーへの対応といった多様な側面から議論するとともに、こうしたイノベーション実現に必要な新しい公共財について、インドでガバナンス改革をもたらしているデジタル基盤 “India Stack” の例も参考に、グローバルな観点から議論された。

 前編では、まずSociety5.0が目指すにあたってのポイントを確認したのちに、このIndia Stackプロジェクトを推進する2名による、インドにおける公共サービスや規制の新しいあり方についての解説内容をレポートする。

写真左から順番に
<登壇者>
・西山圭太(にしやま けいた)氏
 経済産業省 商務情報政策局長

・サンジェイ・アナンダラム(Sanjay Anandaram)氏
 iSpirt Global Ambassador

・白坂成功(しらさか せいこう)氏
 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科・教授

<ビデオ登壇>
・ナンダン・ニレカニ(Nandan Nilekani)氏
 Infosys Technologies Limited Co-Founder and Chairman

》AI/SUM 2019記事一覧はこちら

Society5.0で目指す社会とは

 始めに、なぜこの「Society5.0時代の新しいガバナンス」というテーマでのセッションが企画されたのか、経済産業省 商務情報政策局長である西山圭太氏より説明された。

 そもそもSociety5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを示す。

内閣府ホームページ「Society 5.0」より抜粋

 これまで人類が経験してきた4つの社会、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されたものだ。

 これまでの社会では、経済や組織といったシステムが優先され、個々の能力などに応じて個人が受けるモノやサービスに格差が生じている面があったが、このSociety 5.0時代では、ビッグデータを踏まえたAIやロボットが人間の手を煩わせていた日々の煩雑で不得手な作業を代行・支援するので、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができるようになるという構想である。

 そしてこれにより、ガバナンスのあり方、政府のやり方も変えざるを得ないというわけだ。

 このSociety 5.0を実現する上で、政府が発表した概念が「DFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)」、訳して「信頼ある自由なデータ流通」である。

 どのような規制を作成し形成するべきか。その構築には、アーキテクチャ思考が求められる。

 例えば典型的な例として、自律走行車を考える際には、全く新しい規制の枠組みが必要であり、そのためには、政府自身がデジタル・トランスフォーメーション(DX)を公共分野で実現すべきである。

 それに対する非常に良い例として、インドによるガバナンス・イノベーションが挙げられる。そう、同国が進める公共デジタルインフラ「India Stack(以下、インディア・スタック)」である。

 そのような背景から、本セッションではまず、このインディア・スタックの取り組みのキーパーソンである、インフォシス社共同創設者兼会長、ナンダン・ニレカニ氏からビデオメッセージが寄せられた。

 なお、インディア・スタックの概要については、同じくAI/SUMの別セッションレポートで記載しているので、以下を併せてご確認いただきたい。

https://lovetech-media.com/eventreport/aisum05_20190501/#India_Stack

次ページ:インドモデルは多くの発展途上国に適用できる

長岡武司

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LoveTech Media編集長。映像制作会社・国産ERPパッケージのコンサルタント・婚活コンサルタント/澤口珠子のマネジメント責任者を経て、2018年1...

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