LoveTech Media編集部コメント
Doctor to Doctor の診療サポートを遠隔から行う集中治療専門医チーム「T-ICU」が、遠隔集中治療に関する基本特許を取得したことを発表した。
T-ICUとは、地域・施設・時間に関係なく、質の高い集中治療の提供環境作りを進めるMedTechサービス。
サービス開発の背景にあるのが、日本における集中治療専門医の偏在である。
我が国には、救急搬送後応急処置が行われ容体が一旦安定した患者や、大きな手術を受けた後の患者様など重症患者の予後を管理する「集中治療室」が全国に約1,100あるのだが、この内、800室において集中治療専門医が在籍していないという現状がある。
そもそも、日本には約32万人の医師がいるのだが、その中で集中治療専門医は0.5%、約1,700人と数が少ない。
重症患者管理は集中治療専門医の関与が大きいほど診療成績が良いと報告されているが、日本では専門医の絶対的・相対的不足から、集中治療専門医が全く勤務していない施設も多数存在し、そのため専門医ではない医師が集中治療の診療に関わらざるを得ない状況となっている。
そんな背景から立ち上がったのがT-ICUというわけだ。
遠隔から24時間体制で生体情報(心電図、X線、採血データ等)を監視し、早期に的確な治療方針を提案することにより、重症患者を急変させることなく予後の改善をサポート出来ることが期待される。
出典元:T-ICUホームページ「遠隔集中治療支援システム(T-ICU)導入イメージ」
集中治療格差の是正という、大きなミッションに取り組んでいる新進気鋭のMedTechスタートアップである。
今回、同社が取得した特許は、遠隔集中治療における基本的な記述に関するもので、「サポート対象病院集中治療室に設置されたセンサーの測定値が予め設定された数値に達したときに、支援側施設にアラートを発して、遠隔での支援を効率的に行う」もの。
「システム全体図」(特許公報より)
「基本ロジック」(特許公報より)
上の基本ロジック図にも記載の通り、集中治療室に設置されたセンサーで測定された生体測定データの値が、予め設定された数値に達したときに、医療的な対応が必要と自動判定され、支援側施設にアラートを発して遠隔支援のための各種データを送信するという流れとなる。
また、遠隔集中治療の隣接領域への適用を目指して、今回取得済み特許について分割出願を実施し、遠隔「集中」治療にとどまらない、広く遠隔診療への本特許拡張が期待される。
さらに併せて、今後の海外展開を視野に入れてのPCT(※)出願手続きも完了しており、海外での支援提供の協議も進めているという。
※PCT:Patent Cooperation Treaty。複数の国において発明の保護(特許)が求められている場合に各国での発明の保護の取得を簡易かつ一層経済的なものにするための条約
医療機器などのハード面で充実していても、医師などのソフト面が足りないという病院は多い。
そんな課題に対し、集中治療への遠隔サポートという形で国をまたいだ支援を進めるT-ICUの動向を、引き続き注視して参りたい。
以下、リリース内容となります。